邂逅
ーーカチュワ王国 郊外の森
乾いた空気に暖かい風が吹き抜け、若い草木が蕾をつける。
冬の終わりを知らせるように季節は変わり、森は少しずつ賑やかになり始めた。
『天気は快晴! 風向きは南! 絶好の旅日和だ! 』
郊外の森で一番高い大木の上に乗った青年は晴れやかな笑顔で叫んだ。
青年の名前はアレン・ローン、このハイルの森に住む19歳の男で身長は170㎝後半で手足が長く良いスタイルをしている。
黒を基調としたシンプルな服装と背中には赤い布飾りを付けた大剣は黒い鞘に収まり光差し込む森の景色の中では存在感を放っている。
また灰色でやや強い癖をもつ髪は風になびき、黒く大きな瞳は森の向こうにある街を映し出している。
綺麗で整った顔立ちだが意地の悪さが表情に現れるため眉目秀麗の王子様と言われると全然違う。
アレンは自分に関する一切の記憶を失っていて、その空白の記憶を探しだす旅の途中である。
ただ途中といっても自宅を出てまだ数百歩しか歩いていない。
しばらく続く森林の景色に飽きたのか、アレンは見晴らしのいい大木の上で気分転換していたのだ。
『よし、遠くに見えるあの街までひとっ走りしますか!! 』
そう意気込んで青年は木の枝を揺らしながら大木を滑らかに降りていき地面に足をつける。
『よっと、、、』
アレンは木から降りた同時にあるものを目にした。
『ー? 』
言葉が思わず溢れ出しそうになったが声にならなかった。
『人が......寝てる?』
安らかに眠るその人物は無防備に四肢を広げて大胆に野道の真ん中を陣取っている。
その容姿は金色の長い髪に白い肌、白地の上着に紺のスカートを履いている。
華奢で柔らかそうな体つきは恐らく女である。
アレンはゆっくりとその女性に近づく。
しっかりと見ると鼻筋が通っていてしっかりとした眉に美しい二重瞼を持つ美しい顔立ちであることがよくわかる。
また肌のキメの細やかさや幼さの残る顔つきから恐らく少し年下の女であると予測できる。
『おーい、あのー起きてください』
アレンはその女を揺すった後に胸に耳を傾け鼓動を確認する。
『生きてる!! けど意識がねーのか? 』
アレンは女の生存確認をした後なんとか起こそうと粘って見る。
『おい!起きろ!!朝だぞ!!』
『お兄さんが襲っちゃうぞ!』
全く反応のない女を仕方なく背負い担ぎ、家の方向を目指して歩いていく。
アレンの中に残る奇妙な違和感は木に登る前にそこの野道ちは誰もいなかったという事実。
この短時間で何が起きたのか見当もつかなかった。
『謎多き女め!てか今起きたら、完全に誤解されるな......』
彼女起こさないようにゆっくりとした足取りで緩やな斜面を登り丘の上の自宅に向かっていった。