プロローグ 終焉
少年はたった一人で闘った。
愛する人の笑顔を守るために国を裏切り、肉親を殺した。
少年の誓いは果たされず、二度とあの太陽のような笑顔に照らされることは叶わなくなってしまった。
ーー西大陸 ディルフィーノ王国
炎に包まれた城は白く美しい姿を保ちながら燃え続けている。
城の庭園の中心に彩り美しい花畑に囲まれた広場がある。
『君は花が好きだったね、だからこの場所を選んだんだ』
少年は地面に突き刺さる剣にそっと花冠を掛け、その場で崩れ落ちるように膝をついた。
地面は乾いた音を立てる。
『もうここには僕と君以外誰もいない、だからゆっくり休んでほしい......』
少年の瞳には涙が浮かんでいた、背後の城は少しずつだが崩れ始めている。
涙がこぼれ落ち地面を湿らせる。
城の崩落には目を向けず、自らの喉元に紅く染まった長剣を突き立てる。
『君はきっと怒るだろうな、そっちでもし会えたら......謝るから許してくれよ』
そう言い残した少年は自分の喉を引き裂こうと震える手に力を入れた。
やわらかい風が花々を揺らし優しい香りを運んでいく、あたたかな青空に抱かれるように少年は眠っていく。