元凶
私は、この公園という場所が好きだ。
人が多く集まり賑やかで平和そのもの。おまけに見晴らしの良い立派な木のベンチだってある――今では私の特等席だ――こんな安らぎ空間は他にない。
いつもの様に、お気に入りのベンチに腰かけ、辺りを見渡した。
…………しかし、最近は少し様子がおかしい。理由は分からないが、今のこの公園には以前ほどの活気は無く、訪れる人も少なくなってきている気がする……。
だが、まばらに人はいる。例えば……ほら、あそこ。数十メートルほど先の木陰に初老の男性が立っている。
――その見知らぬ男は、私の事をジッと見ていた。気のせいじゃない、確かに“私を”見ている……まるで観察しているかのように。
……男は私を見ながら何か考え事でもしているのだろうか? 動くことなくこちらを静観するその立ち姿は、さすがに少し怖い。
こんな事は初めてだ、目が合って逃げるように去る訳でもなく、こうしてずっと見られているというのは。
――まさか不審者、なのだろうか? だとすれば、この公園の平和によろしくない。
私は好奇心で――気になって落ち着かなかったというのももちろんある――話かけてみようとその男のもとへと歩みを進めた。
近付く程に確信する……やはり男は間違いなく私を見ていた。
私はそのまま男のもとまで近寄り、気さくに話しかけてみる。
「こんにちは……少し前までここも賑やかだったんですけどねぇ、今は寂しいものですよ」
すると男は、どこか憂いたような顔で私に微笑んだ。
「しょうがねぇよ、もうだいぶ噂になってる。みんな怖がっちまってるんだ……だから“専門”の俺の所に依頼が来たって訳さ……まぁ、安心しなよ」
……噂? 色々と何を言っているのかよく理解できない。妙なことを言い出す人だなと内心思いながらも、私はいよいよ本題を切り出す。
「ふむ……ところで私を見ていましたよね? 何かご用でも?」
男は、少しだけ間をおいて一言。
「“徐霊依頼”だよ……お前さん、もう死んでるんだ」
様々な人の集まる公園。
老若男女、鳥や虫達……そして。
【佇む者】ってタイトルにでもしようかと悩んでたのはナイショ。
……ちょっと無駄に長すぎたかな。。
推敲がんばらねばねば。