第九話「対家庭用兵器」
俺はウルシウィードちゃんに寄生し収奪し終え、感慨にふけっていた。
あ、ウルシウィードちゃんに寄生できたなら母なる大地様に寄生したら、とてつもない力を得られたりするのではないか?
なんたって相手はこの世界……というか星そのものと言ってもいい。
収奪し尽くした場合は、俺は星そのものになると言っても過言ではないよねっ!
などと、俺は供述していたのだが、母なる大地様からは以前のように吸収しかすることはできなかった。
残念でっした!
まっ、そこまで期待はしてなかったからね!(嘘)
それにしても、ウルシウィードちゃんは枯れちゃったし、やることがなくなってしまったなっ。
うーむ、こうなると視界から得られる情報としては、光る苔くらいしかない訳だけど相変わらず、今の俺には高すぎて登れないような場所に生えているでござる。
このまま、ポツンと地面に生えているだけなら死ぬことはないだろうが、人間としての……しかも、あらゆるエンターテイメントに溢れていた現代日本を知っている身としては、そんな生活はある意味拷問にも等しいですわ。
ここは、ダメ元で移動を開始するしかないだろう。
それによって敏捷値も上がるだろうし、移動速度も早くなるしね!
できれば、ウルシウィードちゃん以外の植物に遭遇できるといいなぁ。
魔物はゴメンでござるが。
そんなこんなで、定番の壁を右手に(髪の毛だからないけど)して突き進むこと一日くらい。
俺の耳もないのにどうやって感じ取っているのか不明な聴覚はカサカサカサッという音を遠くから聞き取っていた。
なかなかに耳が良いのね、この毛髪。
それにしても、いやーな予感で毛がビンビンである。
音のする方へ視線を向けながらも、なるべく目立たないように、ただの落ちている髪の毛を演出する。(ただ転がるだけだが)
頼むよ……変なのが出てきたりしないでk〈カサカサカサカサカサッ〉キター!
黒光する頭部。
そこから生える二本の長い触覚。
無駄にすばしっこい、鳥肌の立つような動き。
そう、やつは「G」だ。
なぜ、やつがこんな所に……ってどうしようヤバイなんかタゲ取っちゃってる気がしてならないんだけど、一直線にこっちに向かって来ているんだけどなんでだーっ!
俺とは比較にならない敏捷性で、あっという間に迫ってきた通称Gと呼ばれる対家庭用兵器は、俺の目の前で停止した。
はやく、はヤクどっかに行ってくださイーー!!
しかも、俺が小さいせいで無駄に大きく感じるから気持ち悪い事この上ない。
あなた様のご尊顔を、こんなに細かく観察なんてしたくなかったよっ!!
心を混乱で満たしながら、テンパっているとGちゃんは俺をヒョイパクした。
アーッ!
そんなバナナ!痛い!気持ち悪い!齧られている毛先に感じる仄かな温もりがオゾマシイ!
ステータス画面を開くと、今の状況がよく分かる。
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種族:アンノウン・ブラックヘアー
称号:【愚者】【天性の勝負師】【寄生虫】
LV.1
HP:1.37/2.25
MP:0/0
筋力:0.90
耐久:1.24
敏捷:0.81
魔力:0
スキル
【死力】【根性】【天運】【吸収 LV.3】【勤勉 LV.4】【マゾヒズム LV.2】【匍匐前進 LV.1】【寄生 LV.1】【光合成 LV.1】【ウルシオール】
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俺は慌てて、【スキル:ウルシオール】を発動させると、毛根を得意技となった腹筋により持ち上げてGちゃんの頭部、2つの触覚の間あたりに付着させようとする。
だがしかし、このGちゃんにウルシオールは効かないようで相変わらず俺の身体を、毛先からムシャムシャと齧り続けている。
オウ!マイッガーッ!
髪の毛の神様、この状況に慣れてきたのか少し快感を感じてきた罪深いワタクシめをどうか、お救いください。