第五十五話「初会話っ!」
この狭い地中の空間ではスキルの実験すらもできる訳はなく、私はミオレちゃんの寝顔を眺めることで転生して以来、殺伐とした生活で疲れてきていた心を癒やしていた。
むふふっ、ミオレちゃん可愛いなーっ……はぁ……はぁ……。
おっと、危ない危ない。
気を抜くと、オークの保有している【称号:獣欲】による効果で発情してしまいそうになる。
この称号は、獣の如き性欲を持つものに与えられるらしい。
効果は、性欲増大と設定中のみ【スキル:絶倫】が発動するというもの。
ミオレちゃんと二人きりである今、このスキルは危険だと設定を外そうと試みてはみたけれど、どうやら同化中の宿主の称号やステータスに関しては弄ることができないらしい。
同化中でも自分のステータスなら設定を変えることは可能なんだけれどねー。
それにしても、じっくり見てみるとオレンジ色の髪の毛って凄いなー。
いやまぁ、闘技場では私自身もその内の1本と化していた訳だけども。
不思議だなー、なんて顔を近づけながら観察していた、その時。
ミオレちゃん瞼がゆっくりと開き、私の視線とミオレちゃんの視線が絡みあったっ!
「イヤアアアアアアッ!!」
「チョ、ソンナニ ヒメイヲ アゲナクテモッ!?」
って思ったけれど、そりゃ怖いよね。
彼女の記憶では、股間を弄りながら迫ってきたあげく押し倒してきた凶悪な魔物が、現在の私なのだから。
しかも、暗い洞窟で発火能力によって手に灯した火で照らされた今の私の顔は、ひどく恐ろしく映ったことだろう。
ハハッ、人間の顔だって暗い中で下から懐中電灯で照らすと怖いのにオークの顔だもんねっ。
「ハナシヲ キイテクダサイ。ワタシハ アナタノ テキデハ アリマセン!」
「エッ? オークガ……シャベッテル?」
うむん?オークって普通は喋ることができないのかな?
関係ないけれど、私の言葉も片言だけれどオークの言語能力が低いせいかミオレちゃんの言葉も片言で認識してしまう。
「オークガ ハナセルノハ フツウデハ ナイノデスカ?」
私は少しだけ身を乗り出して尋ねる。
「ヒッ、チカヨラナイデ……!」
おおう、これだけでも怖がらせてしまったようだ。
「ゴメンナサイ、デモ アナタニ キガイヲ クワエルツモリハ ナイノデ ゴアンシン クダサイ」
「アッ……コチラコソ、ソノ、ゴメンナサイ」
「アナタガ アヤマル ヒツヨウハ アリマセン。ワタシガ ワルカッタ ノデスカラ」
「イ、イエ」
「ソレデ、ハナシガ モドリマスケレド、オークガ カイワヲ スルノハ フツウデハ ナイノデスカ?」
うーむ、自分でも片言過ぎて訳が分からなくなってきたぞいっ。
【分かりにくいため以下の文章では、かな文字と漢字を使用しますが、両者ともに片言で認識しあっています】
「そ、その……オークは話すことは一応できますが、単語のみでのやりとりが普通だと聞いたことがあります……」
ほうほう、単語のみねー。
おれ、おまえ、たべる。
だとか、そんな感じのやつなのかな?
「そうだったのですか、通りで驚かれたわけですね。それも含めまして、私があなたに危害を与えない理由をご説明しましょう」
私のその言葉に、ミオレちゃんは疑いに満ちた視線を向けてくる。
そりゃそうですよねー。
こうして、少しでも会話できているのが奇跡みたいなもんだ。
「今の私はオークの身体を借り受けていますが、中身は別の存在です」
「え? 身体を借り受ける? 別の存在?」
やっぱり、そう言われても意味不ですよねー。
どう説明したらいいのやら……。
「はい、闘技場であなたが、このオークに襲われているのを見ましてね。この者の肉体を支配することであなたを連れて闘技場から逃走してここに辿り着いたというわけです」
「支配? そ、そんなことができるなんて魔王……? で、でも人族である私を助けてくれたってことは……ま、まさか、神様……ソアレ様なのですか!?」
えっ?どうしてそうなった!
「い、いや……神様ではありませんが、髪ではありますけれどねっ!」
髪の毛だけに!
なんちゃってっ。
「神様ではない、神……なのですか?」
「はい、神様ではありません。髪です」
「ソアレ様のお子様が天界より、ご降臨なされたと、噂でお聞きしました。その時に眷属の方も一緒に来られたと……もしや貴方様が……?」
「え、い、いや私はただ寒気の走ることをつい言ってしまっただけで……」
「お、お寒いのですか!? それでしたら、私の体でお暖まりくださいっ」
ちょ、ミオレちゃんが抱きついて来た!
どう考えても私をソアレ様とやらの眷属様と勘違いしてるよねん、この子。
それにしても、ここまでの反応を見るとソアレ様とやらを崇める宗教でも存在してるのかしらん?
そして、ミオレちゃんはその宗教を信仰しているのかねー。
じゃないと、この醜悪な肉体に抱きついたりなんてできないだろうし。
少なくとも私には絶対に無理でござるっ、まぁ頭には引っ付いているわけでありますが!
もう少し、ミオレちゃんとお話したいところだけれどねー。
地下牢に残っている人達もいることだし、あれだけ色々と荒らした後だと彼らの扱いがどうなるかちょっと心配だ。
そろそろ行動再開しないと不味いよねんっ。
活動報告にも書きますが、仕事が忙しくなったので更新速度が落ちると思います。
なんとか、2日に1話は投稿していきたいです…。




