第五十一話「醜悪なる者」
出てきたのは案の定、オーク様だったよん。
うん、大丈夫だと思ったのは私の勘違いかもしれない。
コイツ、たぶん私が巡回した時に毒を仕込んだオークとは別人……、というか別オークだ。
現在、彼は私に向けて熱い視線を送ってきている。
彼の体は巡回時のオークよりも一回りほど大きいし、肌の色は黒く目は赤く輝いている。
更に、頭には角が二本生えている。
前のオークは目も肌も、そんな色はしていなかったよん。
どう見ても進化個体ですよねーっ。
それにしてもモンスター界隈では進化で角を生やすのが流行っているのかしらん?
お姉さんのギョロ目ちゃんも角を生やしていたしねー。
私も進化したら角が生えちゃたりするのかな?
まぁ、あり得ないだろうけど!
さて、どうやらオーク様はミオレちゃんのあられもない姿に心を奪われているようだ。
鼻息荒く、腰巻きの上から脚の付け根付近を擦ってやがります。
これぞ誰得って感じだな……。
でも流石に、これ以上はミオレちゃんが可哀想だ。
不意打ちをかけるならば、今しかないだろう。
できることなら【スキル:死力】を使いたいけれど、今のHPで使用した場合、耐え切れない可能性も充分に考えられる。
仮に使用後に生き残ったとしても、魔人族たちの予想を上回り活躍してしまった私は、英雄おじさんと同じく彼らから目の敵にされるはず。
その場合、英雄おじさんのように地下エリアで暴行された場合、そのダメージで死ぬなんてこともあり得るからね。
やっぱり、まずは正攻法でいくしかないよね。
私は慣れてきた動作で左手をオーク様へと向けて、魔力を集中させる。
「ファイアボール!」
その言葉を口にした瞬間、私の左手からは火球が勢い良く飛んでいきオークへと着弾したと同時に爆発を引き起こした。
私はファイアボールを放つと同時に駆け出し、途中から【スキル:跳躍 LV.3】を発動し、一足飛びでオークへと右手に持つ片手剣で斬りかかる。
「っ!?」
剣の刃がオークの黒い肌に直撃したその瞬間、剣は甲高い音を響かせながら接触した箇所から折れてしまった。
即座に再び【スキル:跳躍 LV.3】を発動して後退しようとしするが、左手をオークに掴まれてしまい、その反動で私は地面へと倒れこんでしまう。
オークは私の左手をガッシリと掴んだまま、右手も掴みとり私を地面に押し倒すような形となった。
「くっ、離れなさいっ!」
私は脚でオークの腹部を何度も蹴りあげるけれどビクともしない。
オークの腹部はまるで鋼鉄のように硬く、私の方が足を痛めてしまうほどだ。
この状況は不味い。
闘技場の観客たちは、大満足のようで皆さん大変大喜びのご様子。
【スキル:悪臭】やお馴染みの【スキル:ウルシオール】を使用してみるか?
それもとスライムから獲得した【スキル:溶解】でオークの手を溶かしにかかるか?
……いずれにしてもファイアボールに全力で叩きつけた剣にダメージを受けないこのオークには通用しない気がしてくる。
むしろそれによって怒りを買ってしまえば情欲に溺れているオークの頭を冷ましてしまい、こちらの頭をトマトのように潰されてしまう可能性もある。
出し惜しみして勝てる相手ではないか。
「ごめんよ、ミオレちゃん」
私の言葉に首を傾げるオーク様。
こいつ、言葉を理解することができるのか?
まぁ、今はそれは置いておこう。
どうせ、すぐに『解る』ことだ。
私は覚悟を決めると、ミオレちゃんの主導権掌握を解除する。
解除と同時にミオレちゃんは意識を取り戻したようで、目覚めてすぐに醜くも恐ろしいオークの顔貌を目の当たりにして悲鳴を上げている。
私はその様子に申し訳なく思いながらも、ミオレちゃんの頭部からオークの頭部へと跳び移った。




