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第四十九話「難敵」

 

 スライムに飲み込まれていた時に聞こえてきた歓声は、今や怒声と罵声に変わっている。

 あぁ、君らの歓声よりも余程気持ちが良いよっ。


 これで八匹……残るは二匹っ。

 スライム達が燃えている間に、最初の投擲によって地面に散らばっていた両手剣と斧を回収する。

 

 左右の手に1本ずつ持っている、それらを試しに振るってみる。

 片手で両手用の武器を振るうことはできても、流石に自由自在にとまではいかない。

 もう剣筋がブレブレだからねー。


 あと二匹、どっちが出てくるのかな?

 残るモンスターは、触手の塊のような気持ちの悪い謎の魔物と、人型の豚の巨体……オークである。

 

 オークはともかく、あの触手だけは無理だよん。

 赤い札の檻を巡回していた時は、地獄としか言いようがない経験をした。

 ヤツは全身をピンク色の触手で隙間なく覆われており、その触手の一つ一つがヌルヌルとした液体で覆われている。

 しかも、触手の表面もツルツルとしたものもあれば、舌のようにザラザラとした表面のものもあった。


 仕方なく、【スキル:侵蝕 LV.1】を発動して触手の1つから体内へと侵入したわけだけれど、体内まで小さな触手がビッシリと生えていて気が狂いそうになったのは記憶に新しい。

 さて、ヤツが出てきたらどう対応しようか。


 例のモンスターが出てくる柵がガシャンと開き、私の期待に応えるかのように、ヤツは出てきた。

 

「天運スキルさんは、どこに行っちゃったのーっ!?」

 

 涙目になりながら叫び声を上げていると、ヤツはノロノロと地面に接地している無数の触手を蠢かせながら、階段を登りきろうとしていた。

 これをノンビリ眺めているほど私はお人好しじゃないよんっ!


 私は【スキル:投擲 LV.1】を発動し、まずは斧をヤツに向かって放り投げる。

 投げた斧はスキルの効果もあって、初戦の時とは段違いの速度でヤツへと直撃した。


 いよしっ!

 様子を確認してみると、投擲した斧はヤツの中心辺りをグッサリと引き裂きながら深く突き刺さっており、その周辺は赤い血に塗れている。

 ヤツは特に声を上げるようなこともなく、相変わらず全身の触手をウネウネさせながら階段を登り切った。


「致命傷ではなかったか……っ」


 私は残りの両手剣も投擲しようと構えた所で異変に気が付く。

 

「斧が、押し出されている?」


 そう、先ほどの投擲によって深く刺さっていたはずの斧が、全身に蠢いている触手によって外へと押し出され、外されてしまった。

 唖然としながら、その様子を見ていると、もう一つの異変に気が付いた。

 ヤツの傷口が少しずつではあるけれど塞がろうとしている。


「なっ、まさか再生しているというの!?」


 あの置き土産をした巡回の時には時間がなかったというのと、あまりの気持ち悪さに逸早く抜け出したかったために、ヤツのステータスを確認するのを怠っていた。

 他にも何か危険なスキルを保有している可能性を考えると迂闊には近寄れない。


「それでも、やるしかないっ」


 私は再び【スキル:投擲 LV.1】を発動すると、ヤツに向かって両手剣を投げつける。

 それと同時に、左手をヤツへ翳して【スキル:火魔法 LV.2】を発動。


 スキルレベルが上昇したためか、左手の先にはスライムを相手に使った時よりも、一回り大きな火の玉が創り出されている。

 これなら、いけそうだっ!


「ファイアボール!!」


 大きさだけではなく放たれる速度も以前より速い。

 猛スピードで放たれた火球は、投擲により命中した両手剣に重なるように着弾し、爆発を起こした。


 爆発により生じた煙によって結果を把握できない。

 私は左手を下ろすと、腰に装備した短剣を手に取り、もしもの時に備える。


「やったか?」


 敢えてお決まりのセリフを言いながら煙が晴れるのを待つ。

 その間にカランと、まるで金属が地面に落ちた時のような音が鳴り響き……。

 

 

 煙が晴れた先には、焼けただれた跡が残っているものの、既に再生を開始しているヤツの姿があった。

 

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