第四十二話「地下牢」
外が少しずつ明るくなってきたなー、ってことでそろそろベッドに戻ろうかと思う。
粗探しした痕跡は残さないように気をつけたし、たぶん大丈夫だろう。
コンロとお風呂場の魔法石は動かなくなっちゃったけれどねっ!
いそいそとお姉さんの匂いがするベッドに横になる。
あーこのままずっとゴロゴロしてたいなー。
でもここらで、主導権をお返しするとしましょうかね。
万が一にでも私の存在がバレたりしたら面倒なことになるもんね。
主導権掌握を解除するとお姉さんの身体は、本来の精神を取り戻して、あどけない表情で寝息をたてはじめた。
あららー、これまた幸せそうな寝顔なことで……また涎垂らしとるし。
今日は闘技場の地下牢でも調べるとしますかねー。
お姉さんは朝に起床した後、身支度を済ませると昨日も着ていた制服らしきものを着用して家を出発した。
コンロもお風呂場も使わなかったから魔法石のことはバレなかったよん。
でも、一緒にお風呂に入れなかったのは、非常に!……残念だった。
結構早い時間帯なのかな?帰宅時よりも人通りが少なく感じる。
さてさて、しばらくすると例の闘技場の建物が見えてきた。
昨日とは違ってお客さんがいないからか、閑散とした雰囲気が漂っている。
お姉さんは正面扉のカギを開けて、持ち場と思われる受付へと向かう。
ここらへんで、お姉さんとはオサラバしましょうか!
私はお姉さんの毛穴からヌポっと毛根を引き抜くと、お姉さんの後頭部の方へと流れ落ちた。
ヒラヒラと床へと舞い降りた私は、昨日お姉さんが向かった道順を思い出しながら、地下牢への通路を移動したった。
時間をかけて移動し、漸く目的の地下牢へと到達した。
途中、地下へと続く階段前に鍵のかかってそうな扉が設置されていたけれど、下に少しだけ隙間があったから潜り抜けるここができたよん。
地下牢を探索していると途中で、懐かしき黒光りする昆虫が『朝食発見!』とばかりに襲いかかってきた。
飛んで火に入る夏の虫ってね。
その敏捷性の高い身体をありがたく頂戴すると、私は地下牢を一通り見て回ることにした。
思っていた以上に、この地下牢は広く、魔物だけでも100匹以上は檻の中にいるのを確認した。
その他に、英雄おじさんはもちろんのこと、老若男女問わず、人と思われる者が檻の中に囚われていた。
その中には赤い目の者はおらず、街で見た人々よりも髪の色も瞳の色も気持ち明るい色をしている気がする。
また、地球でも見るような人間だけではなく異世界ファンタジー系のアニメやゲームでよく見かけるような獣耳を持つ者やエルフ耳を持つ者までもが存在していた。
地上で彼らのような特徴を持つ者を見かけていたなら興奮して毛根を付着させようと跳びかかったのであろうが、今の彼らの絶望とも言える表情を見てしまうとそんな気持ちは湧いてこなかった。
これは想像していた以上の規模ですわ……。
だが、私は諦めないっ!
せっかくの異世界生活、面白おかしく生きていきたいっ。
現代日本みたいに多くの人々がストレスを抱え込むような生活はゴメンですしねー。
なにより、ここには見たこともない多種多様な魔物がろくに身動きができない状態で捕らえられている。
現状、檻の中にいる人々からは収奪をするつもりはない。
これは元人間としての意識を強く残している、私の完全なるエゴだ。
魔物たちの生命を糧とし、私はこの闘技場を……破壊すると決めた。




