第三十四話「絶対領域」
私は、綺麗なお姉さんの足元で精神を統一する。
綺麗なお姉さんは、未だに接客中だけれど人の喧騒が少なくなってきていることから、受付の仕事が終われば移動してしまうかもしれない。
故に、私に残された時間は限られているっ。
───全力を出し尽くす……!
私は、【スキル:死力】を発動する。
これによって私の筋力値は、272.25まで跳ね上がる。
今までに遭遇した中で、最高の筋力値を誇った魔族ミミズちゃんの数値を優に上回る。
一瞬ではあるけれど、この力を発揮すれば、私の身体を飛ばすことなど容易いことだっ!
【スキル;跳躍 LV.1を獲得しました】
なにやら聞こえたけれど、今は構っている暇はないっ!
私は異世界式ニーソックスの上に存在する絶対領域へと跳んで行く。
くっ、空中で姿勢を変えるのは難しい……だが、諦める訳にはいかないっ。
最後の力を振り絞らんとばかりに、【スキル:死力】を再び発動して姿勢を制御し、毛根を目標目掛けて突き伸ばす!
まるで、某仮面のヒーローのような勢いで飛んで行く私は、神聖なる絶対領域を犯し……。
遂に、美女との合体を果たした。
毛根が付着したのを確認し、綺麗な肌の毛穴にその毛根を捩じ込むっ。
すると、今までにない安定感……いや、安心感を得ることができた。
【スキル:空中制御 LV.1を獲得しました】
【称号:ヘンタイを獲得しました】
もはや聞く耳持たない私は、何事もなかったかのように【スキル:寄生】を発動する。
綺麗なお姉さんの毛穴からエネルギーが送られてくるのを実感し、心の中で感涙する。
その綺麗なお御足に、一本のチョロ毛を生やしてしまったことは申し訳ないけれど、どうか許して欲しい。
裏腿だし、すぐ下には黒い異世界式ニーソックスが存在しているから、垂れている毛は目立たないよんっ。
ぐへへ、お風呂の時間が楽しみですなー。
などと、ゲスな笑みを心の中で浮かべていると、接客が終了したのかお姉さんは何処かへと歩き始めた。
どこに行くんだろー?
一歩進む度に感じる腿の揺れ具合に、興奮しつつも周囲の状況を窺う。
この通路の壁には豪華な額縁の絵画が飾られていたり、金ピカのツボが、これまた凝った作りの飾り台に乗せられている。
成金御用達って感じがプンプンしているねー。
どうやら先程のお客さん方が向かった通路とは違い、専用通路のような所を通っているようで、他の人とはすれ違うこともなく、通路の突き当たりにある大きな扉の前に辿り着いた。
扉の先からは、なにやら歓声のような音が聞こえる。
時折、怒号のような声も聞こえてくるあたり、ただ事ではないようだ。
お姉さんは懐からカギを取り出すと、扉を解錠し、開け放つ。
扉の先の空間には中央に円形の広場が存在していた。
そして、それを覆うように高く堅牢そうな柵が囲い、その周囲を観客席が一段一段と高くなるように広がっている。
中央の広場で行われている、観客たちを熱狂させている催し物。
それは、この世界で初めて見る、人と魔物の殺し合いだった。




