第三十三話「綺麗なお姉さん」
壁際での人間観察にも飽きてきた頃、私は移動を開始した。
とりあえず、この街の出入り口を確認しておくとしようかしら。
何か緊急事態が起きた時に、重要になるだろう。
私の場合、逃げるときにはスキルを使って地面に潜りこむから、あまり関係ないかもしれんけどねっ。
どうしよっかなー、テキトーに歩いて面白そうな場所があったら侵入してみようかな。
幸い、髪の毛の私が地面を這いながら移動していても誰一人、気付くものはいない。
魔力なんかを「っ!?」てな感じで察知する系の人がいるかも!なんて警戒もしたけれど、【称号:愚者】を設定しているから、問題ナッシングですた。
仮に怪しまれたら全力で髪の毛のふりをする所存でございます。
クネクネと移動していると、街の出入り口に辿り着く前に、堅牢な雰囲気の漂う大きな建物に人々が流れ込んでいくのに気が付いた。
あれは、なんじゃろー?なんて軽い気持ちで行先を変更して床の隅を這いながら、その建物の中に私も流れ込むことにした。
人々は受付と思われるところで、綺麗なお姉さんにお金らしき物を渡した後に何かを書いているような仕草を見せている。
うーん、言葉が分からないから行動から察するしかないでござるなっ。
ここは何かの会場で、イベントに参加するために入場料を支払い、名前でも記入しているのかな?
よくわからないけれどっ。
ま、私はイベントよりも受付のお姉さんに興味があるんですけどねっ。
街の中でも比較的よく見かける灰色の髪の毛に、白い肌、そして皆さん共通の赤い瞳。
お客に対して酷評な笑みは、どうかと思いますけれど、とてもお似合いですよん!
ち、近寄って、クンカクンカしてみたいなぁ……ハァハァ。
私はしたいと思ったことはしてしまう主義なんだよ?
てことでお姉さんの元へと一直線に向かう。
カウンターを回りこみ、お姉さんの足元にたどり着くと上体を起こす。
そして私は、世界が違えども変わらずに、人々に夢を与え続ける至宝を見つけた。
それは、純白の布地だ。
あぁ、神よ。この光景に出会わせてくれたことを心より感謝致します。
あの酷評な笑みを浮かべる、お姉さんが純白だとは意外だけれど、これも中々に素晴らしい。
さあて、ではこの素晴らしい空間の空気を味あわせてもらいましょうかっ。
……。
スーハー!!スーハー!!クンカクンカクンカ!!
……馬鹿なっ!?匂いが感じられない……だと……。
思い返してみれば、私は今までに鼻で匂いを感じていなかった。
だって鼻、ないもんね。
目のようなものは出現させられるし音も聞こえるのに何故だ……。
Gちゃんやミミズちゃんには鼻はなくても、一応匂いを判別する器官はあった。
でもそれは人間の感じ方とは違ってたからなぁ。
髪の毛の私には、視覚で楽しむことしかできないのか……っ。
いや、それだけではなかったはずだ。
嗅覚は失われても、私は新たな感覚を手に入れちゃってたよね?
そう、我が主戦力である、【スキル:寄生】によって生まれしイロイロ吸っちゃう感覚!
そもそも、美少女の毛穴に入り込みたくて洞窟から抜けだしたのだ。
美少女というよりは美女って感じだけれど、大人のお姉さんも大好きですっ。
ふふふっ、ここが私のゴール地点。
今日ここに、私と綺麗なお姉さんは肉体的な意味で結ばれますっ!




