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第二話「ツンデレ?」

 ふん!アアッんぬうぅぅぅ!!

 ぬんぐ!ふっはっふっはっアーッ!!!

 

 やるべきことを定めた俺は、目を毛先のほうへと移動し必死に毛根の部分を動かそうとしていた。

 毛先を動かすよりも難しく、毛根の部分は死ぬ気でやってもピクリと動かすのがやっとである。

 しかし、このままでは餓死してしまう。

 諦めるわけにはいかない!


 んんぬぅぅ!ぐぅぅぬあぁぁ!!

 アアアア!ぬグれエえっ!【スキル:死力を獲得しました】ッあっはぁん。


 突然頭の中に鳴り響いた、某犯罪係数を測定する銃の様な音声にビックリして、いやらしい声を心の中で上げてしまった。


 スキル!?スキルと言いましたか今!

 俺は慌てて作業を中断し、ステータス画面を開く。



──────────


種族:アンノウン・ブラックヘアー


LV.1


HP:0.05/0.1

MP:0/0

筋力:0.12

耐久:0

敏捷:0

魔力:0


スキル

【死力】


──────────



 …………っ。

 いよっしゃーー!!!スキルだよスキル!

 あまりの嬉しさに古臭い雄たけびとガッツポーズを心の中で決めてしまったぜい!

 しかもなんか知らないうちに筋力も上がってるし!HPも相変わらず減っているけどね!!


 はぁはぁはぁ……、とりあえず落ち着こう。

 HPを減らしながら文字通り死ぬ気で努力したら、スキルを獲得できた。

 つまりはそういうことなんだろう、努力は報われる。


 生前、努力は報われるという言葉は嫌いだった。

 だって、確かに努力である程度の結果は残せるが、最終的には才能の限界というものが存在する。

 天才とまではいかなくても俺よりも頭や運動神経の良いやつらは周りにたくさんいた。

 彼らも陰では努力をしていたのだろう。


 しかし、俺だって努力をしていたのだ。

 それでも下の中、もしくは下の上といった結果が限界だった。

 生前ではステータス画面なんてものは出せない。

 だから形として努力の成果が明確に表れるのは嬉しかったのだ。

 生前では努力をしていたとしても結果を残さなければ成績表には記されないことが多かったのだから。


 さて、過去を振り返るのはこれくらいにしよう。

 暗い話なんかよりも今は獲得したスキルの方が重要だ。

 【スキル:死力】とはどのような効果のスキルなのだろうか?


 ステータス画面に表示されている、【スキル:死力】の部分に意識を集中し説明文が表示されないか試してみることにする。

 するとステータス画面の横に説明文が表れた。



──────────


【スキル:死力】(アクティブスキル)


使用中、HPを消費し続ける代わりに筋力値と敏捷値が二乗した数値になる。


──────────



 なっ、筋力値と敏捷値を二乗だと……!?

 HPを消費するとはいえ、これはチートすぎるのではないでしょうか?

 このスキルがあれば、我が毛根を母なる大地に挿入することはいとも容易くなるだろう。

 HP残量からして一瞬しか使えないだろうけど、それでも十分だろう二乗だし。

 先ほどの頑張りが筋トレ代わりになったのか分からないが、筋力の数値も上がっている。

 これはもう、余裕のよっちゃんだろう。

 システム様大好き!


 さっそくスキルを使おうっと!

 意識を集中し、【スキル:死力】の発動に神経の全てを尖らせる。

 それと同時に、意識の奥深くでナニカのスイッチが入ったような感じがした。


 これは間違いなくスキルが発動した感覚だろう!

 遂に俺の時代が……大地に雄々しくそそり立つ時が来たのだ!


 次の瞬間、俺の意識は、とてつもない脱力感とともにブラックアウトしたのだった。



【称号:愚者を獲得しました】



 俺は底冷えするかのような寒さに目を覚ました。

 身体……というか髪の毛全体が凍り付いたかのように感じる。

 いったい何が起こったというのだろうか。

 まさか氷結魔法でも直撃したのか!?

 目を髪の毛の彼方此方に移動させて、周囲を警戒するが何かが居る様子はない。


 まったく!

 やっと俺の時代が来たかと思った瞬間に、ごらんの有様だよ!!!

 落ち着いてから俺は真顔(心の中で某AAの様な)でステータス画面を開く。



──────────


種族:アンノウン・ブラックヘアー


称号:愚者


LV.1


HP:0.0015/0.15

MP:0/0

筋力:0.12

耐久:0

敏捷:0

魔力:0


スキル

【死力】【根性】


──────────



 これはこれは……って、マジで死んじゃう0.0015前!?

 それになんか最大HPとスキルが増えてるし!あと称号の愚者って人をバカにしてるのか!髪の毛ですけど!!

 ……どうしてこうなった。

 とりあえず情報を確認しなければ……、

 まずは称号の愚者に意識を集中する。



──────────


【称号:愚者】


『軽率で物事を深く考えない愚かなる者(あほう、まぬけ、おたんこなす)に与えられる』


設定中、最大MPおよび魔力値が0になる代わりに最大HPおよび耐久値が1.5倍になる。

また、設定中のみ【スキル:根性】が発動する。


──────────



 これはひどい。

 何故かよく分からないけど、システム様に凄く罵られてるよママ。

 システム様なんか大嫌い!

 くぅ……泣きそうだが説明文はともかく称号によって得られる恩恵は今の俺にとってはメリットしかないんじゃないか?

 次は【スキル:根性】に意識を集中する。



──────────


【スキル:根性】(パッシブスキル)


死ぬようなダメージを受けた際、一度だけ最大HPの1%を残し生還する。

再発動までに二十四時間が必要。


──────────



 キタコレ!

 罵られたのは未だアタマに来るけど神スキルのオマケ付き!

てか、これがなかったら謎の脱力感とスキルのダメージで死んでたんだねワタクシ。


 システム様大好き!

 もう……システム様ったらツンデレにも程がありますよ。


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