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最初の一歩

連続投稿してみました。

書くことに少しずつ慣れてきました。1話辺りの長さを調節していきたいです。

何とも呆気ないものだった。

折れてしまったゴルフクラブを持つ手を眺めながらボーっと少しだけ物思いにふける。


(遂にやっちゃったなぁ)


今まで耳や目から入ってくる様々な理不尽な出来事に思う所もあったし、胸糞悪くなって一日ブルーになったりしていた。

別に自分がその被害にあった事はなかった。至って普通の生活を送っていた。でも、心の中に育った感情は確実に育っていた。

俺にもっと力があれば世の中のゴミを俺が潰してやるのに。


いつも思考の最後には、悪に対して、より強い理不尽な暴力と恐怖で潰せば簡単なのにと結論付けるも、それと同時に自分にはそれをする勇気もなければ、普通の生活から抜け出る事への勢いが足りない事で自分には出来る事は無いと終了する。


(さて、ここからどうしたものかなぁ)


目の前には、血で汚れて何とも汚く見えてしまう少女が部屋の隅からこちらを見ている。制服を着ているあたり学生なんだろう。


「えっーと、大丈夫?君の名前は?」


どう接していいのかわからず、戸惑い混じりに尋ねる自分を見つめる少女。

沈黙だけが空間を支配している。


(まぁそうだよな、そもそもこんな事が起きた後だし、ゴミとは言っても人を簡単に殺すような人間なんかに話しかけられても何も返せないよね。)


「・・・沙耶。」

「っ!」


返ってきた返事に少し驚きながら、とりあえず会話のキャッチボールが成功した事に安堵し、続けなければと思案する。

しかし、出ない。


「・・・父さん。」


沙耶は視線を自分から外すと、台所の床で倒れている父の方をそのままの体勢で見つめる。


「やっぱりお父さんだったんだね。」

「・・・うん。」

「そっか。お母さんは?」

「いない。」

「そっか。」


もっと気が利くような台詞を吐けよ自分・・・。


「やっとお父さんが笑ってくれたのに。明日からは変われるって思ってたのに。」


父親の方を見つめながら、少しずつ言葉を紡いでいく沙耶に何も返す事が出来ない。だから嫌なんだこんな理不尽。

この子が今までどんな生活を送って、生きてきたのかは知らない。ただ、わかる事はそこで死んでいるゴミのせいで、この子の人生は大きく変えられてしまった事だけだ。

沙耶を見ながら考える。今までは自分とは関係無い場所で起こっていた為、怒りを覚えながらも結局は自分も他人事だったのだろう。

でも、今は違う。もう違う。


・・・


俺は全ての事柄に対して、憎悪する。否定する。こんな理不尽は絶対に許さない。

弱い人間が餌食になるだけの世界なんか、壊れてしまえばいいんだ。

目には目を。歯には歯を。もう俺は無関係ではない。

一度ゴミの処理を行ったのだ。一度してしまえば、次からは同じ事を繰り返せばいいだけなのだ。

ここは俺の転換期だ。既に分水嶺は越えてしまった。なら、もう悩む事も思い悩む事もない。


口角が上がりそうになってしまうのに気が付き、表情筋に意識的に力を入れる。沙耶に視線をやると、目が合う。少し落ち着いたのか?俺の顔を見ていたようだ。さて、どうしたものか。


「とりあえず、汚れた体のままでいるのも気持ち悪いんじゃないか?俺の家は直ぐこの裏手だから一旦そっちに行こう。」

「・・・」


何も話さない沙耶。


やっぱり大人の男に襲われそうになったんだから、俺くらいの年齢の男は怖いか。だとしたら、この後どうしたものか。。。このまま転がってる人間がいっぱいいる場所に置いていくのも気が引けるしな。


「お父さんはどうすればいいのかな。」

「どうしようか。このまま置いたままにするのも嫌かもしれないけど、一度ここを離れてまずは落ち着こう。」

「はい。」


沙耶の家を離れ、事が起こる前と何一つ変わる事のない涼の自宅へと移動する。


移動の間、沙耶は話すことはなかった。中途半端な慰めはしない方がいいだろう。したところで結果が変わるわけでもないのだから。


~~~


自宅に付いたあと、とにかく体中に飛び散っている血を洗い流すことになった。俺が先に入るのも何だからな。沙耶には先に入ってもらうことにした。

その間、居間に置いてあるソファーに座りながら今後の事を考える。


まずはあの死体とかどうしようかな・・・

警察に連絡したら、それは処理はしてくれるだろうけど、それと同時に俺が危なくなる。誰が見ても被害者と加害者全部死んでるのわけですし。

しばらく悩むも答えは出ない。気が付くと30分も経っていた。

明日仕事を休もう。もう4時前なのに寝てないし、この問題の区切りをつけないと仕事なんて出来ないわ。


まとまりもしない考え事をしていると、不意に今の扉が開く。

沙耶が風呂から上がってきた。相当疲れいるのだろう、顔色はあまり優れない。細かい話は明日に持ち越しする事にした。


「俺の部屋にベッドがあるから、そこを使いなさい。」

「・・・あなたは?」

「俺はここでそのまま寝るから気にしなくていいよ。」

「でも。」

「子供が気にするな。今日は色々あったんだ。辛かっただろ。そんな時は素直に甘えなさい。それに話は起きてからにしよう。」


沙耶はゆっくり頷くと、静かに部屋へと入っていく。


(さて、俺も色々考えるのやめて、今日は寝ますか。)


ソファーに横になり、フワフワした落ち着かない気持ちを抱えながら瞼を閉じた。


~~~


あんな事があったのに熟睡出来てしまった。時間は昼前。今日は少し残念な空模様。沙耶は起きているのだろうか。

部屋のドアをノックしてみる。寝ていたとしたらもう少し寝かせておいてあげたいが、これからの事考えないといけない。


「はい。」


どうやら起きているようだ。


「入るけど、いい?」

「どうぞ。」


自身の部屋に入るだけなのに中に女性がいるだけで意外にドキドキするものだな。ドアを開くと沙耶がベッドの端に座り、床に足を下ろしてこちらを見上げていた。ちゃんと寝たのだろうか。


「寝れた?」

「少しだけ寝れました。」

「そっか。これからの事なんだけど、話してもいいかな?」

「はい。」


起きてから考えたこれからの事を話し始める。


「まず、自己紹介がまだだったよね。俺の名前は桐谷きりがや りょう。今年28歳になる27歳。ただの会社員。ちなみに独身です。」

「・・・」


ちょっとは笑ってくれるかと思ったけどダメか。


「君の事を教えてくれないかな?」

「私は藤崎ふじさき 沙耶さなと言います。今年高校3年生になったばかりです。父と二人暮らししていました。」

「あぁなら俺と同じだね。俺も父さんと二人暮らしなんだよ。」


言ってから、まずかった事に気付く、もう「同じ」ではない。

沙耶は少し俯いてしまった。配慮出来ない辺り俺らしい。今後は直していこう。


「そ、それじゃあこれからについてなんだけど。」

「はい。」

「まず君のお父さんに関しては俺の友達がやってる寺にお墓を建てようと思う」

「え?」

「あのままにするのもお父さんが可哀相でしょ?」

「・・・」


沙耶は今何を考えているのだろう。こちらの話に無反応になり、俯いてしまったが、構わず続けることにした。


「それとひとつお願いがあるんだ。今回俺があの3人を殺したでしょ?」


殺したの単語に一瞬だけ沙耶が反応したように見えた。


「あの事件を警察に話してしまうと、最終的に俺が捕まっちゃうんだよね。だから、このまま警察には話さずにあの3人の遺体の処理をしようと思うんだ。」


それでも反応はない。ここでやっぱり警察に話するとか言われるとかなり不味い。内心ビクビクである。


「ど、どうかな?」

「・・・今の私にその判断は出来ません。お父さんがしっかりお墓に入れられるならそれだけで十分です。」


どうやら、お父さんの死については一つの区切りをつける事が出来たみたいだな。通報されずに済んだのも有り難い。俺はまだ捕まるわけにはいかない。これからやらなければいけない事があるのだから。

そんな打算的な事を考え、ストレートに提案する醜い自分が嫌になるが、しょうがない。


「良かった。ありがとう。お父さんにはしっかりお墓を用意しような。」

「ありがとうございます。」

「それと、君は他に身寄りと言うか、お父さん以外に頼れる人はいる?」

「・・・いません。母は出て行ってしまいましたし、親戚らしい親戚はいないと聞いています。」


そうか。困った。だとしたら、答えは考えていた中でもっとも難しい方のプランになってしまう。


沈黙する涼の顔を沙耶が見つめる。

沈黙が苦しい。でも、言うしかない。こんな若い子一人で放り出せるわけがない。放り出したらどうなるか何て考えたくもない。


「そ、そのだな。」

「・・・」

「・・・この家で一緒に住まないか?」

「えっ。」


静かになった部屋の窓から雨の音が聞こえてきた。

どうやら雨が降り出したようだ。


設定その2

主人公:桐谷キリガヤ リョウ

身長:178cm

スポーツと勉強は中の上で、ずば抜けていいわけでもない。モテるかモテないかで言えば、毎回友達止まりでそこまでモテるわけでもない。友達付き合いもそれなりにこなすが、親友と言える人間はいない。髪型を色々変えてばかりいるので固定じゃない。基本それほど長くはない

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