初めての色 赤
2話目の投稿です。
拙い文章ですが、読んでもらえば幸いです。
正直なところ、俺って何でこんな大胆な行動に出たんだ?
足とかガクガクしちゃってるし。
俺は上がる息を必死に抑えて、件の家屋の近くに身を潜めている。
深夜の為か辺りは不気味な程、静かだった。
聞こえてくるのは凍てつく風の音と耳の裏から聞こえる煩わしい脈の音だけだ。
この辺りは古い家ばかりで、独り身の老人しかいない家が増えてきていた。
それも相まって、それなりの距離があった俺の家まで聞こえてきた、日本ではあまりにも聞かない「あんな音」に誰も気付かない。
俺は問題の家の玄関へと近づく。
中からは微かに怒鳴り声と泣き声が聞こえてくる。
でも微妙に遠い?くぐもって聞こえるのはどこかの部屋にいるからだろうか。
この時の自分の感情は割合にするとこんな感じだったろう。
5割正義感・4割好奇心。残りの1割がどす黒い何とも言えない複雑な気持ち
これがただの学生の馬鹿騒ぎだったなら、こんな夜中に何だよ!って意味の怒りになるのだろうが、この中で起きている事がそれはかなりの確率で違う事を頭が理解している。
それが思っている通りの物だったのなら・・・俺の残りの1割は「殺意」なのかもしれない。
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俺は静かに昔ながらの格子の付いたガラスの玄関ドアを少しずつ開けていく。
横にスライドするタイプの物だ。中は電気が消えている。見える範囲には誰もいないがドタドタと音が聞こえ、怒鳴り声が聞こえている。それと無性にイライラさせる笑い声。
自分の体がすり抜けられる程の隙間だけを作り、玄関ドアを開けるのを止め、中へと忍び込む。
家の中は昔からよくあるタイプの日本家屋で、物がそれなりに置かれている事もあり、かなり狭く感じる。
いや、実際に狭い。
ゴルフクラブは長すぎた。失敗だったかな・・・。わかりやすい手にする武器的な物って言えばこれくらいしか家には無かったのだからしょうがない。
俺の人生において、他人と殴り合いのケンカなどした事もなく、ケンカにならないように、のらりくらりと愛想笑いでごまかし切り抜ける。
そんな人間がわかりやすい武器と言えば家にいつもあるものと言えば「包丁」か父の「ゴルフクラブ」くらいだった。
玄関から伸びる廊下は直ぐに曲がり角になっている。曲がり角から顔を少しだけ覗かせると電気の付いた部屋がが付きあたりにある。冷蔵庫が見える事から台所だろうか。
不快な話し声も気になるが、何よりも目を奪われたのは開けっ放しのドアから少しだけ見えている横たわる人間の足だった。
意外にも頭はクリアだった。そもそもその横たわっているであろう人間の生死は不明だが、さっきの破裂音から察するに死んでいる事が容易に想像する事が出来た。
ゆっくりと家の中を進んでいく。距離はどれくらいだろうか10メートルもないだろう。
暗い廊下を静かに歩くも軽くギシギシと音がなってしまう。
部屋の中へと足を進める。
横たわっている人間は40歳過ぎだろうか男性であった。
近づいて確認する必要もない。
やはり横たわっている人は既に死んでいる。
目を見開き、口からは血を垂れているが、何より一番目立つのはワイシャツに大きく滲む血の跡だった。
横たわる死体から視線を台所から繋がる部屋へと移す。
スーツ姿の男が三人怒鳴り声と笑い声をあげながら、一人の女性?を抑えつけていた。男のうち一人は服を半分脱いでいる。こんな状況だし、こいつらが何をしようとしているのかすぐに理解出来た。
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この先に起こる行為を心が何度も復唱していく。
その回数が増す毎に視界が目の前の4人の人間以外、赤に染められていく。
(あぁこれが【ゴミ】か。掃除しなきゃ。)
その思考のまとまりと共に、襲うのに必死でこちらに気付いていない3人の中の1人に狙いを定め、後頭部に向かってゴルフクラブを振りおろした。
飛び散る血が自分の顔に飛び散る。
現実世界へと飛び散る赤色。
・・・感情の中から正義感や好奇心など消え失せ、どす黒い何かは【確かな殺意】と【解放された歓喜】で塗りつぶされていくのを理解した。
読んで頂き、ありがとうございます。
気長にやっていきます