プロローグ
俺はどこにでもいる普通の高校生という存在に疑念を抱く。
第一、「普通」とは何なのか。
ある辞書には「広く一般に通づること」「どこにでも見受けるようなものであること」とある。
では「一般」とは何なのか。
同じく辞書には「広く認められ成り立つこと」とある。
では「普遍」とは何なのか。
「宇宙や世界全体について言えること」とある。
なるほど、同じ意味でも「どこにでもいる普遍的な高校生」としたほうが幾分格好のよいニュアンスを含むことになるな。
しかし待ってほしい。
俺たちは少なくとも三年というかけがえのない時間を生きる存在だ。それなのに、自己紹介で「普通」だの「普遍的」だのといった抽象的概念的な表現で結論づけてしまってよいのだろうか。
あえて普遍的なものを挙げるとすれば、人間であることだ。そんな一言で片付けてしまってよいのだろうか。
俺は嫌だ。
人間はそれぞれが個別であり、つまり特殊なのである。一人一人が違った性格を風貌を思考を持っているのだ。
そんな輝かしい存在を「私は人間です」というつまらない自己紹介しか許されないのなら、俺はもうこの世に未練はない。解脱してやる。
以上を踏まえて、俺は次のような自己紹介をしてこのプロローグの〆とする。
俺は藤代聖護。高校二年生。類稀なるヒネクレモノの男子高校生である。