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普遍的な日常の始まり

ピピピッピピピッピピ……。

何時も通り毎朝恒例の目覚まし時計が鳴る。

気だるそうに止めながら私はカーテンを開く。こうして何時もの朝は始まる。

少女は目の前にかかっている制服をとって着替え始めた。

五月らしい初夏模様の天候が窓から覗いている。

「朝か。」

そうつぶやき少女は制服に着替える。到底高校生とは思えない無機質な部屋で淡々と服を脱いでいく姿は違和感でしかなかった。

長い黒髪を払い制服のリボンをきゅっと結び無表情にドアを開ける。


橋本かずそれが私の名前だ。別に特別な苗字でもないし有名人でもないから普遍的な人間と思ってもらってかまわない。そこらの高校三年生と同じだ。だけど強いてそこらの人たちとの違いを強調するならば私は他人よりも幾分か無口なところ。あまり声に出して発言するタイプでもないしどちらかというと何事にも興味がないタイプだ。まぁ、この生活で何も不具合はないし今後もこの性格は変わらないだろう。そんな中でも一緒に住んでいる母親とは会話を交わしていた。ある意味私は母親に唯一心を許していたのかもしれない。物心がついたころから母親しか居らず女一筋で育て上げた彼女を私はどこか尊敬していたのかもしれない。しかし、そんな母親も今日からこのアパートを出て行く。単身赴任というやつだ。私が高校三年生ということもあり転校するよりもあと一年此処ですごす方がいいだろうと考えたらしい。


私は部屋から出て台所に向かい朝ごはんを淡々と作り始める。卵焼き、鮭の塩焼き、ご飯、味噌汁……日本のテンプレート朝ご飯見たいな品を作り出しさっさとリビングにあるテーブルに並べる。リビングにはテーブルが中央にありそれを半囲みしているソファーとその正面にテレビがあるのだが、かずの母親みゆきはそのソファーで大の字をかいて寝ていた。

「みゆきさんご飯です。朝ですよ。」

何食わぬ顔でソファーで寝ている彼女を揺さぶり起こす。しかし、中々反応しない。

「おきないならもう朝ご飯全部私が食べるね。」

今まで無表情だった顔を一瞬だけ緩め先に食べるそぶりを見せた。すると……

「それは反則でしょ~?」

もそもそと動きながら起き上がり半目の状態でかずを見つめる。

「そうでもしないとおきないでしょ。さて、いただきます。」

「あはは……あんた私の母親みたいね。いただきます。」

この光景を見れば分かるように私の母親は普段頼りない。普段というより9割がた頼りないのかもしれない。しかしここぞという場面では凛々しい一面を見せてくれる。小学生の時、親父がいないことでいぢめられていた時期があったが母親がその異変にいち早く気づいてくれて私を救ってくれた。

懐かしい昔話を思い出していると、みゆきがご飯を食べながら口を開いた。

「そういえば今日からねぇ」

「あぁ、一人暮らしの事?」

「そうそう!あんた本当に大丈夫なの?」

「それみゆきさんがいうわけ?私が居なくなったらひとりで朝ご飯作らなきゃいけないんだよ?」

「あー……それよね。私の法が危ないのね、なんか納得したわ。まぁあんたのことだから夜遅くにいろんな所行ったりしないと思うけどいろいろと気をつけるのよ?」

「そうだね。気をつける部分はちゃんと気をつけておく」

みゆきは眠そうな目で一所懸命かずの顔を見て念を入れた。


そう、上記でも書いたが今日から私の一人暮らしが始まる。別にワクワクもドキドキもしない。あまりそういう感情になったこともない。多分平穏に日常が過ぎて卒業してまたみゆきさんと住みなおすものだと思っている。



登校時間になり私は家を出て鍵を閉める。みゆきさんも同時に支度をして家を出る。何時もと違うのは今日みゆきさんはキャリーバックをもって此処を去るという事だけ。

「まぁまたついたら連絡するからよろしくね」

「分かったよ。」

相変わらず無表情な顔で返事を交わし学校へ行こうとすると不意にみゆきさんがかずを呼び止めた。

「そういえばーかず。」

「ん?」

みゆきさんはなにやら考え込んだ様な顔で私を見つめる。

「いやなにか言う事あったんだけど忘れちゃって」

「なにそれー。まぁ何時ものことか……まぁ思い出したらいつでも言ってね?連絡待ってるから。」

気さくに手を振りその場を去るとみゆきさんは少し大きめな声で私に言い放った。

「元気でねー!!ほんとまた連絡するんだからねー!?!?」

その声を聞き私ははいはいと呟いて手を振り続けた。


学校の登校手段では電車を使うので駅まで歩いて行く。

あまり人が乗っていない電車に乗り込みボケーっと外を見つめる。

私の地元は決して都会の方とはいえない。かといってそこまで田舎ともいえない微妙な土地といえる。少し遠出すれば大都会にいけるし逆に田舎も行くことができる、いわば都会と田舎の中間地点みたいなところだ。

そんな中間地点といえる地元の風景を見ながらあまり好きではない学校へと向かう。

「はぁ~。あと一年か。」

ボソッと私は呟く。

がやがやうるさい学校はあまり好きじゃない。雑音がひどいし声のうるさい生徒だって居る。

私は何時も机に座ってボケーっと空を見つめるのが好きだから皆みたいに群れてしゃべってわいわいしている人達の考えてる事が理解できない。

しかし幸福なことにクラスの生徒たちは別に私を迫害なんてしてない、まぁ逆にわざと絡む人達も居ないが。いわゆる知らぬが仏状態。それでも一人だけかまってくるアホ野郎が居たっけな。

『○○駅~○○駅です~』

ふと自分が降りる駅の名前が聞こえてくる。

今日も早く終わりますようにと頭で念じて電車から降りた。


学校の中に足を踏み入れるとやはりそこはざわついている。

「ねぇねぇ昨日のドラマ最終話みたー?」

「面白かったよね!?!?やっぱり名倉ちゃんかわいいー」

「あの俳優三ツ村クンもかっこよかった!!」

隣で三人の少女達がキャアキャアはしゃいでる。

昨日のドラマはどうだったか~やの誰々がかっこいいだの、正直どうでもいい。

そんな喧騒の中~


ドンッ。

靴箱で上履きに変えて教室に向かう手前で見知らぬ人物と肩が当たった。


「おい!どこみてん……」

黒髪の少年はかずににらみを利かせようとしたがかずを見た瞬間顔が青くなる。

「あぁ、ごめん不注意だっ……」

謝罪の言葉をさえぎるように男はいきなり叫びだした。

「ぎゃぁあああああごめんなさい!!あのほんっとごめんなさい!!!」

そういって男は足を彦ずりながらわたわたと走り去っていった。

私ははぁとため息をついて再び教室に向かった。


そう、付け忘れてたけど私はある事件以降この学校で一番強いやつと思われてる。

この事件さえなければさっきみたいな事もなかっただろう…。


「ぉおおおおおい!!かず!!」

髪の毛がまっきんきんの金髪頭で何時も髪をつんつん立たせている制服腰パン野郎

が大手をふって走ってきた。


こいつだ。こいつのせいで私は…。

「おいこのバカ野郎。お前のせいでやっぱり私はこの学校で変な扱いうけてるじゃないか。本当迷惑だ。」

「んなこと言うなよ~天下の番長といわれた俺様っちがお前の一打撃でぶったおれちまったんだからしょうがねぇーよ」

こいつの名前は谷崎竜也。自称この学校の番長らしい。あながちその強さは本物らしく先生も手がつけれないやつだったらしい。

ある事件とはこいつが今年同じクラスになって勝手に私のことを好きになって無視したら挙句の果て暴れだした。私はその行動をみてすごく不愉快に感じたから昔からならってたボクシングの技で顔を向かって殴ると見事的中して教室から吹っ飛んでいった。このおかげで私はこの学校の番長を一撃で倒した魔物と噂されだした。

まぁ、元々友達なんて居なかったしこのおかげで変に絡んでくるやつも居なくなったから半分感謝はしている。

「本当迷惑なやつだ。」

一言残して私は教室に入った。

「今日もそっけねーなー。あいつ本当によくわからねーや。」

まぁそんなとこが好きなんだけどっと竜也は呟いてかずの後を追った。


私の席は運がいいことに一番後ろの左端にある。窓が隣にあるし、あまり目立たない事から私は気に入っていた。そこの席に座ったとたんこのがやついた教室とは別の世界に入ったような感覚に陥る。皆私に視線をむけず個々の話題で盛り上がっている。そんな中異世界に入っている私は窓の向こうの空を見上げてぼーっとする。

この時間帯は何気なく好き。





学校が始まるチャイムが鳴り響く。

あぁ今日もめんどくさい日常が起きるんだな。

そう思ってた。





教室の外は静まり返り皆教室の中へと入っていく。

そんな中一人だけきょろきょろしながらかずの教室の前で止まっている少女が一人。

少女の髪の毛は明るいチョコレート色でボブの髪型をしており、少し目立つような容姿だった。さらにハーフなのか目の色は透きとおった青色。なぜか少女の周りだけ異空間をはなっている、そんな様だった。


先生が少女の先を越して教室の中へと入っていく。

まだ、がやがやしている教室を一喝して口を開いた。

「あーみんなおはよう。今日は転校生が来たんだ。まぁ高校三年なのにって思うやつもいるだろーが事情があるんだ仕方ない。おいっ入って来い」

先生は扉のほうに視線を向かせた

『転校生……か。まぁどーでもいい。』

ガラガラッ---。

扉を勢いよく開いて一人の少女が入ってゆく。

生徒たちはいっせいにざわついた……。

確かにこの少女の容姿は目を見張るものがある。顔つきも綺麗で透きとおっている感覚だ。しかし、生徒たちはそのせいでざわついたのでは無くこの少女がある有名な人物だからだ。


「名倉ともみです。」

少女はペコリと頭を下げてにこっと皆に向かって笑いかける。


『名倉?なんか今日どこかで聞いたことある・・・・・・』

かずはそうふと思いながらもどうでもいいと促し外を見続けた。


「おいっ名倉ともみってあの…有名な女優さんだよな!?!?昨日ドラマに出てたっ……」

竜也は席から立ち上がって名倉のほうへと指をさした。


「こら宮崎!!指をさすな!!ま、まぁ名倉は察しの通りあの有名な女優さんだ。しかしわけあって先週から活動休止してる。まぁあまりそこらへんの事は聞くなよ?」

先生はめんどくさそうに生徒をなだめた。

しかし生徒のざわつきは止まらずみな個々の話をし始めた。


かずは名倉の姿に目もくれず空を見続けていた。

正直いって女優などというものに興味がないかずにはどうでもいいことだった。


「おいお前ら静かにしろっていってるだろ!!」

先生が再び一喝し名倉に目線を向けてどこに座らそうか悩んでいるそのとき。

名倉が偶然かずの方向に目を向けた。

そして不意に叫びだす。


「あぁあああ!!!」

生徒たちは静まり返り名倉が見ている視線に目を向けた。

そこには一人の少女橋本かずが居る。


視線に気づいたのかかずは目線を教室にもどす。

「・・・・・・は?」

そして名倉は叫んだときと同じくらいの大きな声で言い放つ。

「あ!!かずっちでしょ!?!?久しぶりおぼえてる~!?!?!?」

みな口があんぐりあいたまま再びかずを見るそして名倉を見る。そして3秒後かずの一番嫌いな喧騒が始まる。


そう思えばここから私の普遍的な日常は終わっていたのかもしれない。




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