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第一章二部

 


  空間に振動を起こし一時的だろうが聴覚と視覚を奪うほどきらめきと咆哮を放った者が居るであろう場所を見つめる。



 樂は何も言う事なく冷静に状況の変化を待っていた。



 だがそれほど経たずに時は訪れ、目を向けることに神経を尖らせていた樂は数秒の間を置いて咆哮が止んだ事に気づいた。



 ライラックは一体何をしたのか機嫌を損ねてしまったとかを頭の片隅で考えていると当の本人は発光した体を慣らすようなそれでいてその体にご満悦な抑揚のある声が空気を震わせた。



「ガハッハ貴様は面白いな。すぐに聞いてみたらすぐに返ってくるとは…守護者として今までここにいるが静かで平穏ではあったがそれと伴い退屈もあった。…あぁこんなに気持ちを動かされたのは本当に久方ぶりだ……」



 ライラックはあまりの変化の無さに気が抜けていたのだろう。そんな時に森に異常が出始めて警戒してて、問題元を確認出来ない状況にする毒霧を吐き出す歩くキノコに翻弄されていたとして……



 そんな時に一人で通ってくる者がいれば理由はどうあれ警戒するには十分だ。



「そいつは良かった。今は俺も機嫌が良いから森の問題については手伝うよ。こんな形だけど何かの縁だろうし俺はこの森を気に入った。手を貸してもいいだろう?」



 そう言って緊張を解き深く息を吸い、



「でも俺、約束した仕事が残ってるんだ。だからその毒を吐くキノコを殲滅するのに手を貸すよ。残りの問題は仕事が終わってからになるんだがいいか?あとまだ俺、眩しいから光量を落としてくれ……目頭が少し痛くなる。」



 と約束をしておきながら彼の現状について追求をしておく。



「ガハッハッハすまなかったな、如何せん久しく気分が良くってついな。少し明かりを小さくしよう……お前は良き者と判断した。こいつ等を治して貰ったからな……そこでっだ、私がその目的とやらに手助けしよう。それでなら最後まで協力して貰えるか」



 徐々にではあるが太陽にも等しい輝きは光を弱めている…それでも周囲が白く見える程の明るさなのだが今は口出ししないほうがいいだろう。光量は落としてくれているのだから……




「そうだなガルドビオ山岳ってとこがあるんだがそこを超えたとこに大きな民村があるんだ、そこに届け物を持っていかなくちゃいけない人がいるんだ。今から行っても後一週間はかかるんだそれより早く行けるなら今日中にキノコ狩りしてやるさ」




「安心するが良い、そのあたりは三日で届けてやろう。勿論休憩も挟んでな。しっかり原因を無力化でもしてくれればその後の帰りの安全も保障しよう」




 正直なところ順調に事が進み始めている。樂は問題に巻き込まれて仕事に支障を来たすと思ったがむしろ好都合で送ってくれるときた…なんだか調子が良すぎて気にはなってしまう。


 だがそれはライラックも同じような心境に違いないだろうと思えた。


 お互い似たものがあるのだろうと樂は少し感じ苦笑いしいまの相棒を見つめる。




「よしならばこれから早速キノコ狩りをするか、そいつらは結構いるんだろ?」




 樂はライラックの言うキノコがかなりの数がいると思っていた、結構深いであるここを毒霧で影響を及ばすほどだ。



 周囲の風景を見ながら色々と考えていて樂は自分の変化に気づいた。さっきよりも格段に光は落ちランタンのような柔らかい明かりになっていることに、そして景色が変わっていることも……



 見える、何かが見えるのではなく見えなかったものが見えるのだ。今まで見ていた景観は跡を残すことなく幻覚から開放されていた……完全な森で木漏れ日ならぬ木漏れ月明かりでライラックは照らされていた。



 ライラックが言っていた事が本当であるとわかりいつ幻惑をかけられたのか記憶に該当するものは全く無かった。



 樂は一つだけだがほぼ確定しているだろう理由に思い当たる。ライラックは咆哮を引き金に体を輝かしたあの光によって幻覚から開放されたのではないかと……



 あの後視界の七割を占めているライラックの巨躯とその体から発される光によってより周囲を確認出来ていなかったのではないかと。



 さっき光度を落としてもらったから周囲を見てこの事に気づけたのだろう。ライラックはこの事を知っているのだろうか?



「すまない、少し待っててくれ片付けるから」



 樂は一言だけ伝える。



 念の為、彼の能力を少しは理解しておく必要があると思い樂は足元にいる羊モドキ達に使った救急パックを取り、片付けてから疑問を問う。



「ライラック、あんたのその光…見てから幻惑だか幻覚だか直ったんだが特殊な効果でも持っているのか?」



 思っている事を隠すことなくままに問う。こんな事に回りくどく言う奴なんていないと思うが……



「気づいたか、私の固有能力は輝陰こういんといったところだな。私の光で一時的に視界を奪うが穢れを祓う事が出来る…勿論例外もあるし出来ないこともある…万能ではないが有力な光だ。応用して様々な事に使える。少し話が反れたが幻覚から覚めるのに時間がかかったのは強い光を間近で直視したからだろう。弱めた間も視界は白く幻覚のままだったんじゃないか? 直るには直るが時差が起きる。だが、視界が治ればそのまま幻覚も戻る…そういうことだ」



 彼の能力の一部を理解し、その上で事を考えた。物理的な事に関しては光は対応できるものに限りがあるがそうで無いものには結構優秀で有力で抵抗力なのだと。


 そこで浮かぶ疑問に…



「成る程……でもそれならこの森の問題点には十分通用するだろ?実際ならそれで十分なんじゃないの---」



「それがここ最近はこれほどの輝きが出せなかったのだ。勿論光る事は出来たし効果も確認できた。だが、目くらまし程にしか効かなかったのだ。だから万能ではないのだ……だが私自身に対しての異常負荷は消せていた。」



 ライラックは言いたい事を言えた…ような雰囲気を出している。だが、まだ言っていないのだろう深く息を吸い胸を張らせる。



「何よりキノコ自体はたったの二体しかおらん。しかし奴を軸に陣形なるものをしていた一軍団がいる」



 樂はただ言われたことを思考の不覚で反芻し繰り返しライラックの言っている事を理解した。事の大きさを知り、底知れぬ存在感を持ったライラックを見やる。



「すまない、一応聞くが陰の力は効---」



「陰は体を酷使するのでな使用するには良い条件ではあるが極力使いたくは無いのだ……あれは負荷がきつい」



 まるで聞かれる事を分かっていたように言い切る前に言われてしまった。



「もし陰をしたら三日は無理になっちゃうよな……」



「三日は無理だが一週間以内は保障しよう。私は嘘をつかぬ」



 ライラックからの声が地鳴りのような響きを持って言い返す。



 彼の目には形容し難い意志を感じさせられる。樂は月明かりに負けないだろう明るい笑みをライラックに向けて。



「よし、予定が遅くならないなら手伝うよ。実際のところあんたが強いのは存在感だけでも分かるから……分かるからこそなかなか処理できない相手に興味を持った。それに俺自身仕事以外に調べ事をしていてな、なんかある予感がするから手伝うよ。お互い無茶しようぜ?」



 そんな元も子もない事を楽しげに言う人間をライラックはただ呆然としたまま見続ける。樂も彼の顔を見て少しふてくされる。



「あのさぁ、あからさまに馬鹿じゃねぇのこいつ…みたいな事思ってるだろ。話だけを聞いていればキノコを軸に森を荒らしてるわけだろ?要するに取り巻きよりも主要のキノコを狩りとれば良い訳だ。まさに質対量だな。言っておくが俺は弱くはないぜ」



 樂は口を尖らせブーブーと喚きながら抗議する。駄々を捏ねる子供のように……



 そして本人もライラックもお互いに声を出して苦笑した。 



「樂と言ったな、話を戻すが周囲を固めている軍団は私の光は効果は余り期待できない。数は多いが個々はそれ程脅威になる者共ではないが、しかし断定して言える事があるあいつ等は肉体への負荷を気にせず攻めてくる侮ってはならない。甘く見ていると痛い目にあうぞ」



 ライラックは森に対して害悪となる者に警戒するようにひと言付け足して樂に言う。



 樂は目先にいる強大な存在がそれほどまでに危険を唱えるのを理解したうえではっきりと



「ライラック、俺の事を甘く見るなよ。大丈夫である理由を教えようこのことは絶対に他言無用だ……俺はただの人間とは違う。」



 樂の言葉を聞いたライラックはその意味を理解するに頭をフル回転していた。ライラックは樂がどういう存在なのか、どういった存在であるのか、どんな理屈で存在し得たのか。ただ気になりかけていた。だが、ライラックは樂の他言無用・・・・と言った意味を深く読み樂の経緯を求める事は無かった。



「樂よ、貴様の事を案じての事だったのだが裏目に出たようだな………分かった。では簡単に会議といこう。周りくどくいくのはもう無しだ。」



「良いねライラック、話が分かる奴はこうでなくっちゃ」



 樂は八重歯を覗かせる笑みをライラックに向ける…ライラックはその顔を見てフッと鼻で答え、その巨躯を動かしそれに足元にいる羊モドキがついて行く。



「来い、ここから少し離れたところに地核の湯がある。夜風にさらされて冷えたのでな、私は行くが貴様もどうだ?木々と岩で作った家もある。無理にとは言わぬが来るといい。そこで話としよう」

 


ライラックは木々の開けた道を歩んでいく後を樂はついて行く。知りたい事が出てきたし逸る気持ちもあるが今なんとなく聞いておきたかった事をライラックに聞いておく。



「なぁ聞きたかったんだがこのモフモフしてるこいつ等ってどんな名前なんだ?」



 ライラックは足を止める事はなく進んでいくが足元にいるモフモフ達を傷つけないようにしっかりと進んでいく。



「こいつ等にはフォリエという名前がある。この森でしか生息していない固有種で天敵が存在せず危機感がややゆるい。しかし私にも詳しくは分からぬが恩を返す修正がある。時に私に返されてもどうしようもないのだが好意を無駄にするのは失礼だからな。いつも甘んじている。」



 ライラックはそういうとフォリエが持ってきたのであろう果実を二足歩行になり手で受け取る。



 すると先ほど手当てした包帯巻きのフォリエ2匹が緑のしわしわな木の実を持って樂に寄ってきていた。樂は気づいて受け取りフォリエに「ありがとう」と撫で、ライラックに何という実なのかを聞いたら実ではあるがその実、葉が何層にも重なった物らしくこの森にある木から出来る実の中で一番変化してきた木の実であると。



 そんな特殊な実をかじりながらライラックと並び歩む。その後には多くのフォリエが足を進み多くの足跡を残していた。







 歩んだ先には青白く光があり空に微かな湯煙のカーテンが出来ていて星の美しさを昇華し一つの絵として出来上がっていた。






 会議が少し先延ばしになったのは言うまでもなく、その日はお互いの思い出話に喉を鳴らした。




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