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そうやって座りこんでいると前に影が出来、見上げると、楽器を持った菜乃花が立っていた。
「どうしたの?」
優しく問い掛けられると声が出ず、涙がこぼれる。
「分かんない。もう、ど、どうしたら、い、いいのか分かんない」
「とりあえず、部室まで来なよ」
と声を掛けられ菜乃花に着いていく。
B棟4階の吹奏楽部の部室。入ると見たことのないような大きな楽器や歴史を感じる写真が所狭しと押し込んでいるように感じた。
「狭いでしょ?まぁ、ここに座りなよ。」
と椅子を引かれ座る。
「春斗がね。ゆたちゃんが泣いているみたいだからと呼びに来たのよ。まぁ、最初にゆたちゃんに気づいたのは、弥凪君みたいだけど」
と話しだした。春斗は菜乃花の2つ下の弟だ。
「落ち着いた?」
「うん」
泣いてしまった事が恥ずかしくうつむきながら返事をしていると
「吉浦先輩。今日は、村上先生、来るんですか?」
と菜乃花の後輩が呼びに来た。上靴の色から2年生だと分かった。
「どうだろう?さくちゃん。とりあえず基礎練して、パート練習してて。リズムを合わせる事を意識するように伝えてね」
「分かりました」
菜乃花が顧問が来るかどうか分からないと伝えると少し不機嫌そうにして部屋から出て行った。
「菜乃花は、練習しなくていいの?」
今、菜乃花を引き留めていることに気づき声を掛けると、
「大丈夫。それよりどうしたの?」
と尋ねる返されてしまった。
「えっと、……」
「部活関係なのは、分かった。ねぇ、着いてきて欲しい場所があるんだけど。今日、大丈夫?」
「大丈夫」
「じゃあ、制服に着替えておいで、今から行くから」
「えっ。分かった」
菜乃花はそう言うと部室を出て、さっきの後輩と楽器を持っている同級生に話し掛けていた。
様子を見ていると二人とも焦った顔になり、菜乃花に話していた。
菜乃花がこっちに来たので話し掛けると何でもないと手を降り、
「じゃあ、着替え終わったら下駄箱で待っててね」
と部室に帰って行った。残された私は急いで1階にある教室まで行き、着替え始めた。