4.
ぺちゃ、ぴちゃ。
水を含んだ重たい欠片を落としましょう。積もった欠片を溶かすように。
少しずつ、少しずつ、わたしの季節が終わる香りがしてきたわ。
世界はいつもちょっとずつ変わっているのね。
ひとのこどもがいるわ。
文字の練習をしているのかしら?
新しい道具に、縫い上がったばかりのかばん。もう、学校にいく年になのかしら。
新しい世界への不安と期待に胸をふくらませているのね。
きっと、そこはとても素敵な世界よ。頑張ってね。
あぁ、内職で作ったものをまとめているのね。
随分な量だわ。
お外に出れない分、みんなで同じ時をおうちで過ごしたのね。
そうして、心のつながりを強くして、新しい節目を迎えるのかしら。
欠片が、もうほとんどないわ。
わたしも頑張ったわね。なんとなく眠くなってきちゃったわ。
あと、少しね。
さて、そろそろ見にいかなくちゃ。
だいぶ良くなってきたわね。
いつも当ててた左手は、もう溶けてしまったから、右手冷たさをあげるわね。
まだ、少し苦しそうだけれど、きっともう大丈夫。
あら、目が覚めたのね。
こおった水面みたいに澄んだ綺麗な色の瞳ね。
よかったわ、わたしが溶け切ってしまう前に目が覚めて。
あぁ、眠いわ。なんだか気が抜けてしまったわね。
いつもよりちょっと早めに眠ることになってしまいそう。
とても、楽しかったから、きっといつもよりも素敵な夢をみれるわ。
「 ーーーーーーーーーー 」
ふふふ、たいしたことじゃないわ。
わたしの本質はそういうものとは違うから。
……何をしているの?
駄目よ。そんなことをしたら濡れてしまうわ。
折角、よくなってきたのに。
「 ーーーーーーーーー、ーーーー 」
わたしは冷たいのよ?
でも、はじめてしったわ。
ひとって熱いんじゃなくて、あたたかいのね。
「 ーーーー 、 ーーーーーーーーーーー 」
もう、そこまで春がきているわ。
大丈夫、あなたは良くなるわ。
わたしは溶けてしまうけれど、消えてしまうわけではないわ。
あなたがわたしを忘れるくらいの時が流れても、わたしはこのあたたかさを忘れないわ。
でも、あなたがそういうのなら。
あぁ、もうさいごの一欠片になってしまったわね。
「 ーーーーーーーーーー 」
はっぱが落ちて、空気が乾いてきたら。
そうしたら、また、あなたに。