プロローグ
『赤い傘?』
『ジンクスだよ。
晴れの日に好きな人と二人の大切な場所で赤い傘のあいあい傘すれば、永遠に一緒にいられるっていう…』
(ばかばかしい…)
東京の大都会。
デートスポットと言われる場所で大好きな人を待つ。
自動ドアが開きドキドキしながら顔を上げる。
なぜ会いたくない人ほどタイミングよく現れるのだろう。
「アッレー!
橘先輩じゃないですかぁ。チョー偶然!」甲高い声が店内に響く。後輩の美嘉に愛想笑いをする。
「何してるんですかぁ?あっ分かったぁ〜。凌先輩待ってんでしょ!」
コイツに下の名前で呼ばれると倍ムカつく。
「愛!」
不意に呼ばれ顔を上げる。自分の名前を呼ぶ彼がそこにいるだけで涙がでそうになる。
しかし美嘉のせいですねている顔を凌に見られたのが一生の不覚…。
「遅れてごめん!
部活が長引いて…」
「別にいいよ。それよりここ出よう。違うところに行きたい」
凌を強引に引っ張り店をあとにした。
「あ〜美嘉じゃん!一人?何してんの?」
「さっきまで橘先輩といたんだけど、橘先輩そっけないからおいてかれちゃった」
「橘先輩?
あたし大嫌い。つんけんして可愛くないよね」
「中学のときは優しかったんだけどなぁ…」
「だってあんな事件があったし…ねぇ?」
「事件?」
「何?あんた知らないの?」
「…?」