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外したシュートの行方

作者: 天馬トビオ

栗ヶ崎豪大、31歳。いや、昨日の誕生日は歳を足してもいいのだろうか。まあいいだろう。

それにしても昨日のパラグアイ戦は泣けたよ。駒野とは知り合いという程でもないが、会えば挨拶くらいはする仲だ。今度会ったら一言かけてやろう。

え? オレが何者かって? 元Jリーガー、代表にだって呼ばれたことある。去年はJ1で優勝争いをしてたんだ。最終節、決めれば得失点差でうちが優勝のはずだった、あのシュート。闘莉王のプレッシャーに負けでフカしちまった。でもそれなりの成績をおさめた昨シーズン、こりゃ岡ちゃんのメガネがくもってなきゃ、代表に返り咲けるって思ってたんだけどね。


でもオレ、死んじまった。だから「元」Jリーガー。




「さあ、そろそろあの世に旅立ってくれなきゃ困るんだけども。もう3ヶ月も未練タラタラで男らしくないわよ!」

「うるせーな、ギャルメイクで死神とか言われても信じれねーんだよ。もちょっと、らしい恰好で来いよ。」

「らしいって何よ! 人間の勝手なイメージで死神決めつけんじゃないわよ! ほらさっさとしてよ、ほら!」

「お前それでもプロか? プロならプロらしく成仏しやすくしてくれよ。事故死なんて未練ない奴いねーだろ。」


「・・・・わかったわよ、前に言ってた外したシュートが忘れられないんでしょ。どうにかしてあげるわよ。」

「!!! マジでか? できんのかよ、そんなこと!」

「死んでるんだから、他人に馮依することもできるわよ。不器用な奴はできない奴もいるけど。」

「なんだよ、そんなことできるんなら早く言えよ。そんな事出来たらサッカーし放題だろ!」

「バッカじゃないの? そんな都合がいいわけないでしょ、馮依時間によって媒体の寿命が削られるのよ。」

「で?」

「で?ってアンタホントに馬鹿? 他人の寿命削るのよ?」

「で?」

「サイテー! ホント早く地獄に連れて行ってやりたいわ!」


確かに他人の寿命を削るってのはちょっと気が引ける。だけどもオレもこのまま地縛霊ってわけにもいかないからな、仕方ない。


「よし明日はちょうど試合日だ。明日やろう、やり方教えてくれ!」

「ムカつくけど、仕事のため・・・・。ホントムカつくけど。」




さて、やり方はわかった。あとは誰に憑くか、だ。

こうなったら日本人じゃなくてもいいな。名古屋のケネディ、あのデカさは魅力だ。それに日本人じゃないと罪悪感も少ない気がする。でもタイプが違うな。

ガンバの平井がノッてるな。こいつも面識少ないしいいかも。いや待てよ、恩を売ったことある奴から寿命もらうのが一番かな。気持ち的に。

そうすると、やっぱ平山か。あいつにはいっぱい焼き肉食わせてやったからな。まあ一時期太らせた原因はオレなんだ。

よし決定、すると対戦相手は・・・・・名古屋! 闘莉王が今年からここにいる! 運命としか思えん。こりゃ燃えて来た!


「よし試合開始だ! 優しいオレは後半20分から出る事にする。どうだ優しいだろ?」

「寿命奪う時点で優しくなんかないわよ。」


前半終わって0-1。点の欲しい展開、燃える。


「アンタの言ってるデカいイガグリくん、調子悪そうね。」

「ちょっとな、また太ったんじゃねーか。」

「交代させられちゃうんじゃない? ほら外人さんがアップしてる」

「なに! そりゃいかん、ちょっと早いが行ってくる!」

「寿命余分に取っちゃカワイそーよ。」

「ん〜、ちなみに聞いてなかったけど、どのくらいの寿命を削るんだ?」

「あー、30秒で1年。」


!!!!!!!!


「アホ! なんで早くソレ言わねーんだよ! 今からだと後半18分だから・・・えっと、何年?」

「ロスタイム入れずに54年、ロスタイム入れたら60年くらいじゃない?」

「ほぼ日本人の寿命に達するな・・・・寿命10年くらいなら残り何分で入ればいい?・・・・」

「ロスタイム考えなきゃ、残り5分で出場ってとこかしら。10年も取るの?」

「じゃ4分30秒・・・・・」

「変わんないわよ、ほら残り5分。悔いの無いように行っといで!」

「う・・・!!!」





「うわ〜〜〜〜〜!!!」

『おおっと、東京の平山。ボールのないところで急に激しく転倒。何かありましたかセルジオさん?』

『トゥーリオと接触してたカモしれないけど、ファウルはないジャナイかな。』


起き上がらない平山。名古屋ボールだが、一旦ボールを切る。


「おい、どうした相太。」

「うわ、大黒!」

「てめ! いきなり呼び捨ててんじゃねー!」バチン!


後輩に殴られた。いや、今はそんなこと言ってる場合じゃない。あと5分・・・え?3分? しまった入れ替わりで時間使っちまった! くっそ! 審判ちゃんと時計止めててくれよ。


東京ボールでスローイン。しかし律儀に名古屋にボールを返す。

そういやサッカーって紳士のスポーツだったな。思い出した。初めて思うがそんなもん「クソっ食らえ」だ。


あと何度、チャンスがあるだろうか。一試合通じてだってほんの数回なのに。

その瞬間、東京が中盤でボールを持った。サイドへ展開する。それに合わせて大黒がニアへ入る。


「ファー!」


クロスを要求する。


「させるかよ。」

「てめ! 闘莉王!」

「相太! お前試合後お仕置きな!」


クロスが入る、ファーへ。これが念願のラストチャンス。ハイボール勝負になって平山のガタイはラッキーだ。これなら・・・・







「あれ? なんでまたここにいるんだ? おい、どういうこったよ、説明しろ死神!」

「なんかね、イガグリくんの寿命が10年も無かったみたい。ほら後、ごらんよ。」

「え?」


「・・・・なんで・・・栗さんが・・・死んだ・・・はず・・・」


「げっ平山・・・・」

「ほらアンタ説明してやんなよ。」

「う〜ん。あのな平山。」


「・・・・・・・・・・・」


「焼き肉おごってやるよ。」

詳細を聞いた平山がとった行動は・・・・・・。

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