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離婚は前提条件なので。  作者: cheeery


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ピリオド



今日もフェイクリングを付けて出勤している。

佐伯くんの興味が完全になくなったと感じたらこっそり外そうと私は決めていた。


昨日あれだけハッキリ告げたから、今日は何もないといいけど……。


無視をされるのは、業務に支障をきたすからやめてほしいのよね。

昨日は不機嫌になり、仕事もしないわ私の言葉を無視するわで本当に最悪だ。


でもいい寄られるよりはマシか……。


もういいや、なにも考えず割り切って仕事をするしかない。


給湯室でお湯を入れて、オフィスに戻ろうとした時。


「美和……」


振り返ると、佐伯くんが私の手を掴んできた。


また……なんの用?

不安に思っていると、彼は必死な顔をして言った。


「昨日の件……ずっと考えてた!なんで……社長と付き合ってるんだよ。あんなすごい人が美和のこと選ぶわけがない。きっとなにかがあったんだろう」


やっぱりその話か……。

選ぶわけがない……。


そうね、選ぶわけがないかもしれない。


ズカズカと踏み込んでくる言葉に、胸がきゅっと縮む。


「答える義務なんてないでしょう」

「あるだろ!前付き合ってたんだから!」


佐伯くんの声が突然大きくなり、誰もいないはずの廊下に反響した。


なんて男だろう。

もう話したくもない。


距離を取ろうとするのに、彼がさらに近づいてくる。


「なぁ、どうして結婚したのかだけでも教えてくれよ」


言わないと彼は引き下がらないだろう。

とはいえ好きになったからと告げるのは気が引けた。


だからはっきりと告げることにした。


「なぜって……それは、お金が必要だったから」


その言葉に、俊くんは信じられないといった顔で固まる。


「金……!?そんなんで結婚を決めるなんておかしいよ。美和きっと騙されてるんだよ。可哀想に……俺がもっと早くここに来てたら助けてやれたのに」


俊くんは悔しそうに手を握り締める。


少し前の私だったら、その言葉に浮かれて喜んでいい人と出会えたと思ったかもしれない。


でも今は違う。

寄り添うって言葉で言うのは、ペラペラの浅い行動に過ぎない。


私と彼は契約結婚でそこには愛はないかもしれない。

でも彼に救われたことは事実だ。


彼は私を救ってくれた。

その形はなんであれ、私を支えてくれたのは四宮くんだ。


「そんな男やめてさ、俺に……」


「じゃああなたは8000万出せるの?」


「えっ」


それを言った時、俊くんは固まった。


「いや……8000万はそりゃぁ無理だけど……でも美和に寄り添うことなら出来るよ」


まっすぐに私の目を見つめて言う。


そういえば、昔もそうやって甘い言葉を囁いてきたっけ。


私はそれにまんまと騙されてしまったんだよね。


バカな女だったと今なら思う。


「じゃっ、無理でしょ」

「……は?」


「8000万も出せないクセに私と結婚したいなんて無理でしょ」


「なに言って……」


俊くんは驚いたように目を見開いた。


まさか私の口からこんな言葉が出るとは思わなったのだろう。


もう私はそんな薄っぺらい言葉で騙されるバカな女じゃない。


「寄り添ってなにになるの?なんの解決にもならないじゃない。でも今の彼は私の悩みを一瞬で解決してくれた」


そう事実が違う。

なにより私が四宮くんのことをけなすのはいいけれど、他の人にけなして欲しくはなかった。


「私は今が一番幸せ」


まっすぐに目を見た。


あの時に何も返せなかった自分のために、今言い返してやった。


「主人と一緒にいることが一番幸せよ」


はっきりと伝えることができた。

それは相手が四宮くんだったからだろう。


「な、なんだよ!けっきょく金じゃないか……!ふん、そんな性格のやつだと思わなかったよ」


俊くんはそう吐き捨てると、その場を立ち去っていった。


……言ってやった。

お陰でスッキリした。


そう思い私も踵を返す。

すると……。


「見てたわね」


一番見られたくない男がそこに立っていた。


「本当、性格悪い……」


「まぁ、いいじゃないですか。僕もダシに使われたわけだし……」


『今の旦那さんと一緒にいることが一番幸せよ』


まぁ……そうね。

ダシに使ったのは事実だ。


「本当に思ってくれているならいいですけど?」


「思って無いし」


そんなこと……思ってない。

だってこれはあくまで契約結婚に過ぎないから。


私は離婚するために動いているのだから。

ただその場を切り抜けるために使っただけだ。


「だいたい見てたんなら、普通は助けに入らない?」


「あなたが嫌うかなと思ったので見てました。自分で言った方がスッキリするでしょう?あなたはそういう女性だ」


「ええ、そうね。本当にスッキリしたわ」


自分で昔のことに区切りを打てた。

前の悲しみを抱えた自分が報われたようなきもした。


「……やっぱり、あなたは強い女性だ」


彼は笑いながら告げる。


「このまま夫婦生活を続けていたら主導権を奪われちゃうんじゃない?」


すると彼は私の髪をさらりと撫でて言った。


「一時的に奪われるのはいいですね。でも最後は必ず僕に戻ってくると思いますよ」


戻ってくるというか、戻すつもりなんでしょ。

そんなことを話している時間も楽しいと思えた。


「まぁ……僕は本当にさっきあなたが言ったと思わせたいって思ってますけど」


『今の旦那さんと一緒にいることが一番幸せよ』


「お、思うわけないでしょ!?」


「どうかな。あなたは素直じゃないしもう少しくらいは思ってるかもしれないですね」

「自惚れすぎ」


思うわけないじゃない。

でも……昔よりは全然いい。


今の自分の方が好きになれるから。



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