As10.密かな抵抗の分担、迫り来る脅威と期待
翌朝、宿屋の中にある食事処でヴァラロスとオーディーンが食事をとっていた。
「確認だが、この後の方針は?」
オーディーンが問いかける。当然である、ヴァラロスが巻き込んだことなのだから。しかし、すべてを知っていそうな相手に釈然としないといった表情をするヴァラロス。一見すると当たり前のことだが、相手は神である。そのまま方針を伝えるのは試されている気持ちになっていた。それでも話すべきであろう。これはヴァラロスが始めたことなのだから。そう思いヴァラロスはオーディーンにこれからのことを説明し始めた。
「まずは聞き込みだな。物資が届かないとか知ってるはずだし、なんならこの後宿屋や色んな店に聞いて回ろうと思ってる」
「まぁ、妥当なところだな」
「というわけで、東側半分を頼むわ」
「……は? なんだって?」
一瞬何を言われたのかわからないといった表情をするオーディーン。そんなことは構わないとばかりにヴァラロスは話を続ける。
「ついてきてくれるって言っただろ? なら、手伝ってくれ。二人で同じとこ回っても仕方がないし、分散した方がいいだろ?」
「まぁ……そうか……? いや……」
ヴァラロスの言葉にオーディーンはある一定の理解を示す。しかし、それは同時にある違和感を呼び起こした。
「ヴァラロス……、おまえさん昔は何事も一件一件確実にこなすタイプだったよな? 二人で行けば聞き逃すこともないとか考えそうだが……」
「いや、流石に今回レベルなら分担した方がいいだろ。効率よくできるところは効率よくやらないと……あれ?」
なんでそんなことを考えたんだ?ヴァラロスはふと自分を振り返り疑問に思った。大したことはない当たり前のこと。それなのに、ヴァラロスにとって効率よく動くことへの優先度が上がっているのを感じた。まるで、誰かに影響を受けたかのように。
「……まぁ、分担した方がいいだろ。東側の店へ聞き込みを頼む。また昼に落ち合おう」
「わかった。昼までには有益な情報を仕入れてやろう」
でも今はそうするべきだと結論づけ、ヴァラロスは改めてオーディーンに街の東側半分の聞き込みを依頼するのであった。
◇ ◇ ◇
「……おい。てめぇ……」
お昼頃になり一度宿に戻ってきたヴァラロスとオーディーン。しかし、オーディーンはなぜか怒っていた。
「どうした? 東側の聞き込みは終わったのか?」
「終わったのか? じゃないだろ! 店が明らかに東側に集中してるんだが?」
こいつ知ってやがったな。そんな思いから怒りを露わにするオーディーン。ヴァラロスはバレたかといった具合に飄々として答える。
「昔はそんなに店多くなかったはずだけどなー」
「こいつ……」
しらを切るヴァラロスに拳を握り震えるオーディーン。どうやら想像以上に大変だったようだ。それもその筈、この街に訪れる人はずっと東にあるオリオルという街から訪れる。馬車移動で何日もかかるため気軽に行き来できる距離ではない。しかし、その分、街に着いた時に納品や食事ができるだけすぐやれるように東側に集まっているのだ。逆に宿屋は西側に位置しており、訪問者が街を巡るようにできている。
このことをヴァラロスは知っていたからこそオーディーンに東側を任せたのだ。
「というか、あんたなら全てのことをお見通しじゃないのか?」
「だから、知ってることしか知らないの!」
「ほぅ……。なら、俺が誰を探してるかは知ってるだろ?」
「そ、それは……知ってても俺の口からは言えん……」
「はぁ……。じゃあ、それはいいからおあいこな?」
「おぉ……。ん? それは違くないか?」
「まず東側の報告を頼む」
ヴァラロスが無理やり話を逸らした後、オーディーンとの情報共有に入った。
「……東の平原で何か強力な魔物が発生してる、か」
「何度か冒険者が討伐に出たらしいんだが、誰一人として帰ってきていないらしい。近々王都の騎士が対応に向かう予定とか言ってたな」
「こっちも同じ情報だ。行方不明になっている冒険者のランクはみんなBだったようで、5人でパーティを組んで出発したようだ」
「それが全員帰ってこないってことは相当まずいやつがいるってことだな」
どうやら、状況は芳しくない。物資の輸送を行っていた道に強力な魔物が居座ってしまったようだ。なら、そいつを討伐できればあるいは……。
カンッ!カンッ!カンッ!
「な、なんだ?」
次の目標が定まりそうな時、ものすごい音が響き渡る。辺りを見ると皆慌てるような素振りを見せる。どうやら、異常事態が迫っているようである。
「あいつだ! 平原の方にやつが現れたぞ!!」
「逃げろ! あんなのに勝てるわけがない!」
「逃げるったってどこに逃げるんだ!?」
住民の慌てる声があちらこちらから聞こえてくる。それを聞いた二人は顔を見合わせる。
「例のやつが来たってことか? でも、なんで?」
「さぁな。だが、俺たちのことを食料か何かかと思ってるんだろう。魔物からしたら最近急に餌が寄ってくる様になったから巣を探しに来たってとこか? 食いしん坊なやつだ」
「食いしん坊って……」
オーディーンの言葉にヴァラロスは納得する。帰ってこない冒険者たち。つまりそういうことだろう。その脅威がこの街に迫ってきているようだった。
「……行くのか?」
オーディーンがヴァラロスに問いかける。ヴァラロスはその声にニッと笑みを浮かべて言い放った。
「まず目立たないと向こうにも見つけてもらえないからな。行くぞ」
ただ頷くオーディーン。ヴァラロスは目的のために動いている様であったが、その笑みには何かを含んでいた。それはまるで、長年抱えていた後悔を打ち払う機会を得たかと言わんばかりであった。
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※本編完結してるので完結フラグつけてますが、続き書いてます




