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As2.はじまりの夜空と、期待の海

 海沿いの街道を馬車で揺られた後、二人は港町パエニンスラへと到着した。


「今日も、夜空がきれいだな」

「……絶対わざと言ってるだろ」


 着いた頃には陽は落ちていて、船に乗るのは翌日となる。今日はここで宿に泊まることになるのだが、空を見ると満天の星空であり、オーディーンがそんなことを言い出した。ヴァラロスは、もはや呆れている。

 どこか物語の始まりを感じさせるその言葉は、いつかへと続く星空へと消えて行った。




     ◇ ◇ ◇




「ぷはぁー。疲れた……」


 宿に着きベッドに仰向けに倒れ込むヴァラロス。やっと一人の空間になれた。道中ずっと胡散臭い筋肉ダルマが横にいるのだ。最初は良かったが、だんだんとその巨体に圧迫感を覚え始め、しまいには無駄にロマンチックなセリフを吐くオーディーンに塩対応をしてしまう。いつのまにかオーディーンへの扱いが雑になっているのを感じた。


「悪いやつではないんだよな……なぜか、雑に扱いたくなるというか……」


 何故かはわからない。でもそんな気分になるヴァラロスは少し得体の知れなさを感じた。しかし、今はそれを気にしている場合ではないだろう。数日分溜まっているのだ。今のうちに終わらせてしまおう。そう思ったヴァラロスは机に向かって持っていた日記に筆を走らせることにした。








『記憶を求めて、また道具屋に行ってみたが、案の定教えることはないと突き返された。どうしてこんなに頑なに教えてくれないのだろうか。服屋の店員やギルドの受付、クレープ屋の店員にまで心配をされる始末だ。……分かっている。胸に空いた穴はきっとそれだ。記憶と共に大切な何かが見えなくなってしまっているんだ。特徴は聞けた。長い黒髪に、澄んだ薄紫色の瞳。華奢で白い肌で、俺より背が低い。だが、妙だ。そこまで特徴を覚えているのに、話を聞いた全員が顔を覚えていない。正確には頭部全体となると特徴を聞いてもみんながみんな覚えていないのだ。どんな顔だったのかとか、イヤリングをしていたのかとか。……なにか、重大な特徴を忘れてしまっている気がする。でも、それが何かわからない。幸い、あのヤブ神から消えたパートナーを探す旅に出ようと誘われた。迷っていても仕方ないだろう。きっかけができたと思えばいい。というわけで、その場で出発したので日記をまとめて記している……会えば、何か変わるのだろうか……?』


『その翌日は、ノヴィシムからプロカルへの山道。途中イノシシの魔物が現れたが、あの神、素手でイノシシを一撃で沈めてた……。実はヤバいやつなのではと思ってしまったのは口が裂けても言えない。その後、山頂のコテージで休む時は、備え付けの料理器具で道中捕まえたイノシシをいただいた。予想に反してとても美味しかった。あの神は多才なのか……? ありがたくご馳走になりその日は就寝』


『朝早くにコテージを出発して山を降りる。次の山を登り、降りようとした時に異変が起きた。山道に焼かれた魔物の残骸が信じられない量で埋め尽くされていた。その光景は悪魔の所業だろう。その光景に横にいる神も顔を引き攣らせていた。一体どんなやつがこんなことをしたのか……。流石の神もこの光景には絶句したまま山を降りた。その後プロカルへ着いたら熱烈な歓迎を受けた。しかし、俺には記憶がないということ、パートナーの魔法使いもいなくなってしまったことを伝えると、誰もが悲しそうな表情を浮かべた。そして、みんながみんな俺を励ますのだ。……いったいなんだっていうのだろう……そんなに、特別な相手だったのか……? その日はプロカルで一泊した』


『プロカルからカスースへ。カスースではパートナーの存在を知ってる人は少なかった。少しだけ姿を見たと話しかけてきた冒険者がいたが、その冒険者によると、俺はスタンピートの残党狩りをしていたのだとか。戦っている様子を遠目で見ていた人がいたようだがそのパートナーは剣で魔物を倒していたらしい。……どういうことだろうか? 別の誰かだったのだろうか? しかし、その人の服装は黒のワンピースで、他の特徴も一致している。魔法使いなのだから魔法を使うべきだろう。剣も自由に使えるということだろうか……。ますます、正体が謎に包まれてしまった。この日は次の日朝早かったため日記を翌日に書いた』


『パエニンスラに着いた。あの筋肉ダルマがよく分からないことを口走っていたので無視している。……なんでか、雑に扱って良いと感じてしまう。本当はバチが当たるだとか考えるべきだろう。だが、本当に何故か分からないが、まるで、気のおけない旧知の仲のような感覚になる。ちなみに、明日はいよいよ船に乗る。チケットが高価で乗れる人は限られるはずだが、任せておけとあの神が言うので任せてみる。明日本当に乗れるなら貴重な経験ができる。楽しみにしておこう』




「…………ふぅ。寝るか」


 日記を書き終えたヴァラロス。明日からの旅に胸を膨らませて、その日は就寝するのであった。

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