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おまけ3.魔王のその後と、二人の絆の証

「はい! ひぃ、ひぃ、ふぅー」

「ひぃ……ひぃ……」

「頑張って!!」


 プルートに綺麗なタオルや桶などを用意してもらいミニスがお産を担当していた。プルートは執務室の外で待機している。いままで誰も踏み入れることのなかった魔王の私室だ。他の誰も入れたくはなかったのだろう。そう思い、ミニスは余程のことがない限り一人でやろうと考えたのだ。多少無理がある事はわかってる。それでも、今までの経験からどうにか対応しようと考えたのだ。お湯は魔法を使えばいくらでも用意できる。保温も頑張ればできる。過去に対応したイメージを参考にミニスはこの事態に立ち向かっていた。


「後もう少し! 頭出てるから! 頑張って!」

「わかっ……たっ……!」


 ミニスに応援されて息むディア。誰かに支えてもらえることが、今のディアにとって何よりも安心できるのであった。



     ◇ ◇ ◇




「んなああああああ! んなあああああああ!」


 ミニスが取り上げた赤ん坊の鼻と口の羊水を除くと、手の中の小さな命から元気な産声が聞こえてきた。これで、呼吸はできるため一安心である。あとはへその緒を処理して身体が冷えないように暖かく柔らかいタオルで包む。これで赤ん坊は大丈夫。あとは母体だ。場合によっては出血が止まらないことがある。ミニスはディアのお腹に手を当てて確認する。


「…………大丈夫そうですね。お疲れ様でした。そして、おめでとうございます。元気な女の子ですよ」


 どうにかお産を終えることが出来たようだ。ミニスの言葉にディアが反応する。


「本当に、ありがとう……」

「いえ、……はい、抱っこしてあげて下さい」


 ミニスはそう言うと、即席ベッドの上に乗せていた赤ん坊をディアへ手渡した。


「あなたがアタシの…………っ!?」


 ディアが赤ん坊を抱きかかえると、母親がわかるのか赤ん坊が目を開けようとする。その目はまだ腫れており大きく開く事はできない。しかし、隙間から見えたその瞳は確かにお互いの目を見ていた。

 その瞬間、ディアの目から涙が溢れる。


「わぁ! オッドアイなんて珍しいですね!」


 その子供は、魔族特有の尖った耳を持っていた。魔族なのだから当たり前なのだが、しっかりと母親の特徴を継いでいたようだ。特徴的なところといえば、その眼だろう。右に綺麗な紺青色を瞳を持ち、左にディアと同じ薄紫色の瞳を持っていた。右の綺麗な紺青色の瞳。それは、忘れもしないあの人を思い起こさせる。


「ヴァル……! あなた、ヴァルの眼を持って産まれてきたのね……」


 涙が止まらないディア。そんな彼女を見て赤ん坊が手を伸ばす。それは、まるで泣いているディアを心配して手を伸ばしているかのように思えた。


 親子のふれあいを見ていたミニスも涙ぐむ。やはり新しい命の誕生は心を動かされる。そう感じるのであった。




 少しの間、ディアを見守っていたミニスは、重要なことに気がつきディアに話しかけた。


「そういえば、名前はどうしますか?」


 名前。そう、産まれたのだから名前は必要だろう。そもそも妊娠に気付いていない時点で名前など考えているはずもない。ミニスはそう思っていた。しかし、ディアの方を向くと彼女は赤ん坊に微笑みかけ、その顔には、なんの迷いも見られなかった。


「名前ね。あなたはアタシとヴァルの絆の証そのもの。他の人にも愛情をもって優しく寄り添える、そんな人になって欲しい。だから、()()()()。そんな意味の名前。これからよろしくね。()()()


 ディアが優しくアモルへ微笑みかけると、アモルもまたディアへ満面の笑みを返すのであった。





     ◇ ◇ ◇





「では、これで」

「待って」


 ミニスが一通りの片付けを終わらせてから私室を出ようとすると、ディアはそれを制止した。何事かと思ったミニスが振り返り首を傾げているとディアが気になっていたことを話し始めた。


「師事していた先生はもう居ないのよね? これからどうするの?」

「あー……実はまだ決めてなくて……。医者として働こうと思ってはいるのですが、実は思ったより患者がいないので生活できるかわからないんですよね……」


 事実、ミニスは医者の助手をやりながら様々な仕事をその都度受けていた。実は、医者の助手もやりくりしていた仕事の一つで、たまたま実入りが良かったので続けていたのだ。しかし、雇用主がいなくなってしまった現在、報酬を支払ってくれる人はもういない。身につけた技術で医者を続けてもいいが、ただの助手であった自分に果たして依頼など来るのだろうか。ミニスはそんなことを思ってしまった。


 それを聞いたディアは、予想通りと言わんばかりに要件を話し始める。


「なら、アタシの下で使用人として働かない?」

「えっ!?」

「アタシのサポートをしてもらいたいの。衣食住は保証する。どう?」


 魔王様の下で働けるなど想像していなかった。通常、そのようなポジションは魔族の中でもエリートのものであり、なかなかないのだ。それならば、その手を掴むことに何を遠慮しようか。


「はいっ! 是非っ!!」


 こうしてミニスはディアの下で働き始めるのであった。……15年後、自身が取り上げた子供の父親が現れることなど夢にも思わずに。

ミニスの語源はラテン語のminister。仕える者。という意味です。実は、おまけ1話目のタイトルの意味するところであり、このキャラはafter storyにも出てくる人物です。


魔王のその後のおまけ話 完 です!


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