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after story 1. 15年後の君と、魔王討伐

それは、二人の別れから15年経ったある日の出来事。

「いよいよ空山のダンジョン攻略かぁ」


 冒険者ギルドの待合所で斧を持った男がそう言う。空山のダンジョンは数年前に突然現れたダンジョンであり、空山を越える為の唯一の道を使えなくされた。その先にあるものは魔族領であり、かつては魔王討伐に向けて空山のふもとの洞窟を抜けていたのだが、最近はめっきり山の反対側へ行ける人がいなくなってしまったのだ。

 それ故にこのダンジョン攻略は魔王討伐に向けて大きな意味を持つ。今まさにギルドの精鋭を集めて攻略に乗り出そうとしている時であった。


「しかし、なんでまたダンジョンになっちまったんだろうな。ある程度は魔物がいた筈だが通り抜けられないような状況じゃなかっただろう」

「いや、魔王がなんかやったんだろ? ダンジョンが自然発生なんてしてたら世界中の坑道がダンジョンになるわ」

「なんかやった。程度でダンジョンにしちまう魔王ってやつは末恐ろしいな。そんなの討伐できるんか?」

「できるか出来ないかじゃなくて、やらないと人類が滅ぶんならやるしかないだろう」

「へいへい。勇者さまには敵いませんよ」

「茶化すなよ、ガレス。お前だってなんだかんだダンジョン攻略に乗り気だったじゃないか」


 勇者の言葉にガレスと呼ばれた男がニヤリとしながら答えた。


「だってよ、未だ誰も攻略出来てないダンジョンだぜ? そんなん挑むしかないだろ? 俺がダンジョンに挑むんじゃない。ダンジョンが俺を挑ませるんだ」


 よく分からないことを自信満々に言うガレスに呆れる勇者であったが、その様子を見て頼もしくも感じていた。

 いざダンジョン攻略となると怖気付き街を去ってしまう冒険者もいたのだ。大概そういった冒険者は駆け出しか腕に自信のないものたちである。その結果、ダンジョン攻略は勇者とガレスをはじめとした精鋭が集まることとなった。


「ダンジョン攻略に参加される方々はそろそろ現地へ向かってください」


 受付からそんな声がかかる。今回のダンジョン攻略はギルドが統率して集団で攻略する形式をとっていた。その為集合時間には現地に集まらなければならない。


「おっと、もうそんな時間か。そろそろ行くかね、勇者さま?」

「だから茶化すなって。好きでなったんじゃ無いんだから。ガレス、お前の事も斧使いって呼んでやろうか?」

「悪い悪い。ここらなら斧使いって呼ばれても通じそうだがな。……こんな事話してたら本当に遅れちまうぞ? ヴァラロス」

「誰のせいだよ……ほら、いくぞ」


 他愛もない話をしていた勇者ヴァラロスとガレスはダンジョン攻略の集合時間に遅れまいと急いで冒険者ギルドを後にするのだった。




 ギルドのある街から馬車で一時間ほど走ると空山のふもとへと到着した。集合時間になんとか間に合った二人はダンジョンの入り口で待機する。

 集まった人数を見ると20人くらいだろうか。集団攻略というには少し少なくも感じる。しかし、未攻略のダンジョン、しかも魔王がその成り立ちに関わると噂されているダンジョンの攻略である。今までも何人もの冒険者が命を落としている。それを考えると逆によくこの数が集まったともいえた。

 待機中にあたりの様子をうかがっていると、少し時間が経ったところで白髪の男が話し始めた。


「みんなよく集まってくれた。私はノヴィシムの街のギルドマスターであるドミニクだ。まず集まってくれた事に感謝する。今回は集団での攻略となる。先にダンジョンに挑んだ先人達が持ち帰った情報によると、ダンジョン内にトラップが多数仕掛けられているようだ。その為、トラップに詳しい冒険者を先頭に陣形を組む。この数年でこのダンジョンで散っていった冒険者は後を絶たない。今回の集団攻略で終わらせるのだ。私も前衛を務める。皆の活躍を期待している。では、まず隊列を組む。名前を呼ばれたものからこちらに来てくれ」


 白髪の男、ドミニクはひと通り話し終えるとそのまま冒険者の名前を呼び始めた。どうやらトラップに詳しい冒険者のようである。恐らく彼らの指示に従って道を歩くのだろう。前衛は彼らを守りつつ。後衛は後ろから遠距離攻撃でサポートする。

 ただ、前衛と後衛も全員で戦闘に参加するわけではない。人数が多いので交代で攻略する方針のようだ。いちパーティだけであれば最初から最後まで戦わなくてはならないが、こうする事で体力を温存しながらダンジョンを攻略できる。おのずと生存率を上げることができるというわけだ。

 今回の攻略はそれだけ本気で練られたものであった。ヴァラロスとガレスは前衛の役割であったが、交代組として最初は後ろに配置されている。


 余談だが、ヴァラロスが呼ばれた際に勇者と紹介され、全体の士気が上がった。

 国王や冒険者ギルドマスター、一部の冒険者にしかヴァラロスが勇者であることは知られていない。だが、魔王討伐を志す勇者という猛者がいることは周知の事実であった為、盛り上がり方は尋常ではなかった。


 ダンジョンの攻略が始まるとダンジョン攻略中に話しかけられては堪らないと考えたヴァラロスは、攻略中に背後からの奇襲に備える為、しんがりを務めることを申し出ており、簡単に受理されていた。



「しかし、すごい盛り上がり様だったな。勇者様がいれば攻略できたも同然だとか」

「買い被りすぎだ。俺だって15年前にいきなりチカラを手に入れたんだ。……当時はどこの馬の骨とも分からない新米女冒険者に実力が負けてたらしいし」

「その話前にも聞いたが本当か? そん時すでにCランク冒険者だったんだろ? そんな新米冒険者がいるかって」

「嘘を言ってどうする。……といっても俺は記憶にないんだけどな。ほんとになんだったんだろうな……」


 遠い目をしながら話すヴァラロス。記憶にないとは言っていたが、まるで懐かしい日々を思い出している様だった。

 そんな様子のヴァラロスを尻目にガレスは前の異変に気づく。

 

「……ん? なんか前が詰まってるな。どうした?」

「あ、ガレスさん。なんかトラップがあったとかで解除しているみたいです」


 すぐ前を歩いていた同じく交代要因の前衛役冒険者が状況を伝える。どうやら地面を踏むと動作するトラップが設置されている様だった。


「流石は専門家ってわけか。そんなの踏んでみなきゃ分からないからな」

「……お前は踏んでからトラップを避けるか防ぐかだからな。正直ダンジョンでは隣を歩きたくない」

「ガハハ。前にお前も一緒に避けてただろ? 踏んだって大丈夫だって」

「お前が踏むから仕方なくだろ!?」

「ははは……なんというか……すごいですね……」


 前衛の冒険者はこの二人が規格外である事を再認識するのだった。ヴァラロスは勇者であり、数々の竜種を屠ってきたAランク冒険者。かたやガレスもBランク冒険者だがこのダンジョンを攻略出来ればAランクに上がれるだろう。もともとガレスはヴァラロスと一緒にクエストをこなすことが多い都合上、実力は折り紙付きである。実績だけが追いつかなかったところでこのダンジョン攻略の話が来たのだ。

 Aランクになるためには国に貢献する活躍が必要である。今回のダンジョン攻略は魔王討伐に関連する国からのそうそうない機会ということもありガレスはこのダンジョン攻略に参加する事を決めたのだった。





 その後、トラップを解除しつつダンジョン内を歩き進み、しばらく歩いた後に少し大きめの広場まで出た。そこはいままでここを通過した冒険者が休んでいたであろう場所であった。


「一度ここで休憩する。十分経ったら再度進むから今のうちに休んでおけ。それと、ここから前と後ろを交代する」


 ドミニクはそういうと辺りを見回し冒険者達の様子を見て回っていた。疲れているものがいないか見回っている様だがこの場にいる冒険者は皆手練れである為各々自由に休んでいた。


「そういえば、昔はこの洞窟通れたんだよな?その時の地図とかないのか?」

「あぁ、あるにはあるが役に立たないかもしれん。地形が変わってるとかで道が無くなってたり、逆に増えていたりしているらしい。一応持ってきてるが見てみるか?」

「頼む」


 ふと思った事を言葉に出すヴァラロス。ガレスが説明するもヴァラロスは何やら考え込んでいた。その様子を見たガレスは念のため準備していた過去の洞窟の地図をヴァラロスへ渡すのだった。


「ここがノヴィシム側の入り口か……ここの通路があって……なるほど。確か今まで一本道だったよな」

「あぁ、途中にあったはずの脇道が無くなってるんだ」


 ヴァラロスが自分達が入ってきた場所から地図を追っていくと真っ直ぐこの広間へと続いていた道の他に脇道がいくつか書かれていた。そして、この広間も一本道の様に見えるが、地図上は脇道が存在している。

 地図を片手にその道があったであろう場所へ歩き出すヴァラロス。壁を触ってみても特に気になることは無い。なんら変哲の無い壁である。すると、後に続いてきたガレスが何を思ったのかヴァラロスに退くようにいう。


「ヴァラロス。ちょっと退け。案外この先に通路があるのかもしれん」


 ガレスはそう言うと自分の斧を振り上げ思い切り壁に向けて振り下ろした。


ざくっ!


「…………」

「…………で、どうすんだ? これ?」


 そこには見事に壁に刺さった斧があった。


「お前ら何やってるんだ!」

「ほら、怒られるぞ」

「いや、気になるだろ」


 近づいてきたドミニクにヴァラロスが説明しガレスが平謝りをする。その様子にまたドミニクが頭を抱えるのだった。

 ドミニクの話によると、地形が変わっていることはすでに調査されており、通路があった場所は最初から無かったかのように壁になっているという。それどころか、調査の為に通路があった場所を掘ってみたこともあるようだが、結局何も無かったとのこと。それどころか掘ったはずの道も次に来た時には何事もなかったかのように土の壁に戻っていたようだ。

 壁に刺さった斧をなんとか引っこ抜いたところで休憩時間が終わってしまったのだった。

※この話は「ジェミニ 〜魂の契約者達〜」の173話を元に微修正した話です。


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