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5.運命の出会い

(……なんか、すごい見た目の店だな)


 ディアが道具屋に着くとあたりは暗くなっていた。それでも道具屋の見た目がわかるのは大きな看板が光っておりとても目立っているからだ。その大きさはまるで2階そのものが看板の形をしているのではないかと思えるほど大きな看板がついている。


(とりあえず中に入らないと。もう暗くなっちゃったし)


 ディアがそう考えて店の中に入ろうとした時、中から話し声が聞こえてきた。


「確かに受け取った。いやー助かった。誰も受けてくれなくて困ってたんだ」

「それならこんな無茶な納期にしなけりゃいいのに……」

「急ぎで欲しかったんだから仕方ないだろ」


 どうやらちょうど納品に来ているようだ。間に合った事に安心して店の中に入る。


カランカラン


「ん? こんな時間に客か? 案外需要あるんだな」

「案外は余計だ。でも、悪いな。もう店仕舞いの時間だ。また明日来てくれ」

「なっ……」


 店主を見た途端に拳を握り締め震えるディア。


「ああ?……どこかであったか……?」

「お、おい。なんかすごく怒ってないか? 買い物させてやれよ」

「なんで……」

「……あっ!? まさか!?」

「あんたこんなとこにいたんか!!?」


 ディアが店主に向かって突進し掴みかかる。まさに鬼の形相。それほどまでに怒り心頭の様子でそばにいた冒険者は慌てて仲裁する。


「まてまて! 店主の知り合いか? まさか奥さん!? えっ!? こんな若いの??」

「違うわぼけ!! あんたなんで今まで連絡しないの!?」

「お、おぅ!? いや、その前に……なんでここにいるんだ?」

「おーけー。歯ぁ食いしばれ!!」

「まてまてまてまて!! ちょっと待ってくれ! どう言う状況だこれ!?」


 ディアが店へと入った途端。いつの間にか修羅場と化していた。主にディアによって。




     ◇ ◇ ◇




「で、なんでここにいんの?」

「色々と調べ物をしていたんです」

「色々って?」

「色々は、いろいろだ」

「……チっ」

「怖いから!? 俺もう帰っていい? あとは2人でどうにかしてもらっていい!?」

「ダメ。アタシはあなたにも用があるの」

「なんで!?」


 一応後ろめたさはあったのか、正座をしたまま受け答えをする店主。あまりの気迫に近くにいた冒険者は震え上がっている。

 その冒険者は精悍で整った顔立ちをしており、所謂イケメンってやつに見える。短く刈り上げすぎない、少し無造作な焦茶色の髪型で、その瞳は曇りのない紺青色をしていた。腰に剣をさしているところからすると剣士だろう。その体つきは剣士らしくがっしりとしている。外に出ることが多い為か肌は少し日焼けしている印象を受けた。

 その冒険者がいる手前ディアとしても喋り辛い部分があった。


「……この人は? 関係者なの?」

「ただの依頼をこなしてくれた冒険者だ。()()関わりはない」

「ここまで巻き込んでおいて関わりないってどういうことだよ……」

「……そう」

「それ、納得するんだ」


 ディアは少し考えた後、まずはそこの冒険者と話した方が良いと判断して話を切り替える。


「あんたとの話はあとで。まずはこっちから」

「……店閉めたいんだが」

「ああん?」

「何でもないです」

「……俺帰っていい?」

「ダメ」


 ディアは深呼吸をした後に冒険者に向かって話し始める。


「パーティを組んでくれるCランクの冒険者を探していたの。なので、パーティ組んで欲しい」

「え、嫌だけど」

「なんで!?」

「怖いからだよ!?」


 即答である。目の前にいるはずのない人がいたために暴走してしまったのだから仕方がない。その冒険者にとってディアは恐怖の象徴になっていた。

 今までの暴走を振り返り我に帰ったディアは落ち着きを取り戻し改めて向き直る。


「……さっきのは悪かった。あまりにも予想外のことで少し取り乱してしまった」

「……少し?」

「どうしてもプロカルに行きたいのだけど路銀がない。稼ぐ必要がある。だからプロカルへ行く路銀が集まるまででいいから、パーティを組んで欲しい。……お願いします」


 ディアが落ち着いた様子で冒険者にお願いをする。もちろんお願いをするときは頭を下げてだ。その冒険者は知る由もないが魔王であるディアが頭を下げることなど普段ならあり得ない。ただ、ディアとしても先ほどの醜態を考えたら頭を下げざるを得なかったのだ。

 そのお願いする様子を見て冒険者は頭を掻く。


「……冒険者のランクは?」

「Eランク。今日登録した」

「話にならないな。俺に何のメリットがある。悪いが他の冒険者をあたってくれ」

「あっ……」


 冒険者がそう言い残し背を向けた時、正座をしたままの店主が口を開いた。


「……おい、こいつとパーティを組んでやってくれ」

「……正気か? 寄生する気じゃないの?」

「俺はこいつを知ってる。少なくとも戦闘で足を引っ張ることはない」

「……あんたの基準と俺の基準が合うとは限らないんだが?」

「そうだな……。恐らく単体でドラゴンを複数体相手にできるぞ」

「なっ!?」

「ちょっと!!」


 店主の言葉に冒険者は驚愕の表情を浮かべる。ディアは何勝手なことを言ってるんだと別の意味で驚いた。


「流石に単騎でドラゴンを何体も相手にするのは厳しいからね!」

「ほら、こう言ってるぞ?」

「一体相手なら無傷で勝てる自信はあるけど、2体以上になると流石に防ぎきれないから」

「…………は?」


 ディアは自分の実力を過大評価しているであろう店主に向かって自分の正しい実力を伝える。それを聞いた冒険者は意味がわからないと言った表情を浮かべる。

 その冒険者の表情を見た店主はニヤリとして話を続けた。


「ドラゴン2体だと勝てないのか?」

「勝てないなんて言ってない!ドラゴンの攻撃が当たるのが嫌なの!前にドラゴン3体相手にしたときは生きた心地がしなかった……」

「……おい、それマジなの?」


 店主とディアとのやりとりを見ていたその冒険者は会話の内容が信じられず思わず口を挟んだ。挟んでしまったのだ。それはその冒険者が目標としていたことそのものだったのだ。

 何故か話に食いついてきてラッキーと思っているディアはそれを見てここぞとばかりに自分を売り込む。


「マジマジ、大マジ。ちょっと外で魔法見せようか?」

「魔法……おまえ、魔法使いなのか?……おい、まさか模擬戦しようってわけじゃないだろうな」

「違う違う。ちょっと空に花を咲かせようとね」

「花……?」

「……じゃあ俺はその間に店仕舞いを……」

「あんたはそのままでいなさい」

「……はい」


 そう言い店の外に出るディアと冒険者。店主は正座のまま取り残されていた。




「さて、ここからどこに行くんだ?」

「ん?どこもいかないよ。ここでやる」


 ディアがそういうと手のひらを天に掲げる。そして、生命力を魔力へと変換し掲げた手に魔力を込めてその魔法を唱えた。


「エクスプロージョン」


 その手から放たれた魔力は天高くへ上がり、そして空で弾けた。


ピカッ……ドン!


 その光はまるで夜空に咲く花のようである。遅れてやってきた音と衝撃が体を揺さぶる。


「どう? 綺麗でしょ。これアタシのお気に入りなんだー」

「……っ!?」


 そう言ってニシシと笑うディアはとても無邪気で先ほどとは別人のようであった。

 その笑顔に釘付けになる冒険者。それ程までに破壊力があった。


 実は、魔法使いが貴重なのには訳がある。魔法を使う為には使用者の魔力を使うのだが、その魔力は使用者の生命力から変換される。この変換にも変換効率というものがあり、一般の人だと3割程度である。つまり、消費した生命力を100とした場合に、魔力としては30しか使えないという事だ。そうなると燃費が悪すぎて攻撃に魔法など使えない。もし、万が一、生命力がなくなってしまうと、その人は死んでしまうのだ。生命力は自然に回復するものだが、魔法を使うたびに命を削ってしまう為、魔法使いが貴重なのはこれでわかるだろう。

 そんな中、ディアの身体は特異体質であった。なんと魔力変換効率はほぼ100%なのだ。それがどれだけ異常かがわかる。だからこその魔法使いであり、魔王なのである。

 その為、冒険者も夜空に咲く花をみて、ディアがとても優秀な魔法使いである事を瞬時に理解出来たのだ。


「で、どう? パーティ組んでくれる?」

「……はぁ。少しの間だけな」

「やったぁ! ありがと!」

「っ!!? あ、明日パーティの申請に行くから8時にギルドに集合な」


 ディアが満面の笑みを浮かべてはしゃぎながら喜ぶ。その飛び回る様を見て、不覚にも可愛いと思ってしまう。その冒険者は心を乱されてしまうのであった。


「りょーかい! あ! そう言えば自己紹介まだだった」


 ディアはそういうと右手を差し出しながら自己紹介をする。


「アタシはディア。魔法使いだけどある程度なら接近戦も出来るから。プロカルへ行く資金集めまでよろしく!」

「俺はヴァラロスだ。見ての通り剣を使う。少しなら魔法も使えるから距離をとっての攻撃も可能だ。しばらくよろしく」


 そう言ってその冒険者、ヴァラロスも手を握り返してくる。この時が魔王と、後の()()との初めての出会いであった。

第一章完です。次から第二章に入ります!

基本的に一話ずつの20:00更新を予定してます!

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