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15.有頂天

 ほんの少しベッドで突っ伏したあと、これ以上時間を無駄にするわけにはいかないと、ディアは再び作業に取り掛かることにした。


「…………っ」


 少しでも手を緩めると先ほどの事件を思い出してしまう。ディアは考える隙を与えないように無心に次々と卓上ランプを作り出す。結局、休まずひたすらに作っていたら、夜までに16個の卓上ランプが出来上がっていた。作製した卓上ランプの数は合計20個となり予定を軽く上回っていた。


(勢い余って20個も作っちゃった……。まず、全部にライトの魔法をかけないとだっけ)


 ディアはそう考え、まだ光っていない魔法石に魔法を吸収させる。……あろうことか、調子に乗って。


「ふっふっふ。この、魔王にかかれば同じ魔法を同時にいくつも出すことなど容易……ライト!!? うわあああああああああああああああああ!!!?」


 部屋一面が真っ白になった。オーディーンは言っていた。同じ魔法の魔法石を、一箇所にまとめると、その魔力を共有し合うと。

 文明が滅んだ魔法石のその威力を、ディアはその身をもって知った。


「め、めがぁぁ……」


 手探りでベッドに辿り着き、厚めの布団までどうにか辿り着く。そして、その布団を盾にしてゆっくりと机に近づき、光の元凶を優しく包む。すると光が和らぎ、激しかった光は少し明るい程度には軽減されていた。


「ぁ……ぁぁ……」


 しばらく目の前がチカチカし、回復までに時間を要するのであった。




     ◇ ◇ ◇




 視界が回復し、光っているランプをどうにか部屋の隅へと追いやる。当然上には厚めの布団をかけて、その光を抑えていた。


「…………目、潰れるかと思った」


 調子に乗って一気に魔法を吸収させたのが敗因である。一つひとつであれば、徐々に光が強くなっていたはずなので、途中で対策もできただろう。全ては調子に乗ったことが原因である。


(ひどい目にあった……。完成品は部屋の隅に置いたけど、実はまだ材料あるんだよね。せっかくの機会だし、なんか、もう一捻りした物作ってみようかな)


 創作心を駆られたディアは、次に何か凝ったものを作りたいと思い考え始めた。


(うーん……。同じやつ作ってもな……。そういえば、石を割っても効力が変わらないって言ってたけど、これ、粉々になったらどうなるんだろ?)


 魔法石を粉々に粉砕しそれを紙に塗してみる。紙に付着した魔法石の粉にライトの魔法を吸収させるのだが、今回は先ほどの反省を踏まえて、体を机から離し、薄目を開けながらライトの魔法を一回だけ使ってみた。


「お、おぉ……!」


 すると、一回しか使っていないのに紙に塗した粉全体が光っているようである。どうやら、石の大きさが小さいとひとつの魔法で一定の範囲にある複数の対象に魔法を吸収させることが出来るようだ。


 この成功をいいことにディアの創作はエスカレートしてしまった。ガラスに混ぜたらかなりいいものができるのではないか?そう考えてしまったのだ。考えてしまった後は即行動である。

 夜中に宿の外に出て魔法でガラスの材料を集める。


「サンドウォール」


 目の前に砂の壁が生まれ、魔力の供給を断つとすぐに崩れた。


「アースボックス」


 土で出来た箱をいくつか用意し準備完了。


「ヘルフレイム」


 魔王ならではの魔法、ヘルフレイム。地獄の業火を、まさか、ものづくりに使うなど、ディア以外あり得ないだろう。

 砂を土の箱の中で高温で溶かすとドロドロに溶けてきた。この溶けた砂に先ほどの魔法石の粉を混ぜる。これを別の型となる箱に流し込み徐々に冷やしていくと……


(うん、分かってたけど透明にならなかったね)


 白っぽい石のような塊が出来上がった。もとよりディアはガラス作りには素人である。砂からガラスが作られる程度の知識しかない。その上、魔法石自体が白いので粉を混ぜた時に透明にならないのではと懸念していた。


 仕方がない。そう思いながらも冷やしたガラスモドキにライトの魔法を付与する。すると……


「お、おおおおおおおお!」


 棒状の石全体が光り出したのだ。その明るさはそこそこ強く、部屋に置けば部屋全体を照らせるだろう照度である。また、不純物が混じっているせいか優しい光り方のように見え、とても使いやすそうなものが出来た。


(いい! すごくいい! せっかくだから、これは棒を直立させて使いたいな。そうすると、これに土台をつければかなりいい感じになるのでは!?)


 まわりが明るくなってきていることに気付かずディアは部屋に戻って土台作りに没頭するのだった。




「ぬあーー!?」


 ガラスモドキを部屋に持っていく際に再度目がやられたのはご愛嬌。



     ◇ ◇ ◇



「で、できたぁ……」


 土台をつけて完成した頃にはすっかり朝になっていた。達成感と共にその意識は落ちる。



……


…………


……………………



「ハッ!?」


 ガバッと音がしそうな勢いで体を起こし辺りを見回ると既に昼になっていたようである。


(やっちゃったぁあああああ!)


 両手で顔を覆うディア。ただでさえ時間がない中寝落ちしてしまうとは。納品分に時間をかけるのではなく、完全に趣味の作品で徹夜し、寝落ちしてしまった。あと少し耐えられれば、納品まで耐えられれば。そう思ったところで後の祭りである。


 ……そして手元に残った朝食券も無駄になってしまう。


(これ、お昼とか明日の分に使えないかな……ちょっと相談してみよ……ってそうじゃない! お昼ご飯は後! はやく納品に行かないと!)


 荷物をまとめて部屋を出ようとした時、ふとヴァラロスのことが頭をよぎる。


「〜〜〜〜ッ!」


 また昨日の事件を思い出し、赤面して足が止まる。よく考えてみれば夜通し変なテンションで作品を作ったせいで汗をかいていた。昨晩シャワーは済ませていた為、そのまま出かけてもさほど問題はなさそうに思えたが、今のディアはそこで足が止まるようになっていた。


(…………シャワー浴びてから行こう)


 きびすを返し部屋に戻るディアであった。




     ◇ ◇ ◇




 道具屋に着く頃にはとっくに昼を過ぎていた。ディアが到着するや否や、待っていた道具屋の店主、オーディーンが出迎える。


「ずいぶん遅かったな。昨日の夜か今日の朝には来るもんだと思ってたが」

「……こっちにも予定ってもんがあるの」


 この神はどこまで見通せてるのだろうか。内心ヒヤヒヤしながらディアは当たり障りのない言い訳をする。それをみたオーディーンはため息を吐きながら答える。


「はぁ、まぁいいけどよ。あまり無理すんなよ? 寝不足はお肌の天敵だぜ」

「あんたが言うとなんか気持ち悪いから。でも、心配してくれるのはありがとう」


 オーディーンが茶化しながらディアを気遣う。なんだかんだで古い付き合いだから心配するのも分かるが、その真意は別にあることをディアも理解はしていた。


「で、だ。その布で包まってるのが例のブツか?」

「そう。一応、一つひとつに布カバーも付いてるから問題なさそうだけど、保護もできるし、絡んでおいた方がいいかなって」

「なるほどな……。この布で光の強弱をつけてるのか。買い手が来たらそこも説明するか。しかし、なかなかいい出来だな。これ、こっちで価格決めていいか? 8割を取り分としていいから」

「そ、そんなに貰えるの!? もっと少ないかと思ってた」

「最初に言っただろう? 客引き用の商品が欲しいんだ。こんな目玉商品があればすぐに客が集まってくるだろう」

「そう。まぁ、価格は任せる。適正価格とかわからないし」


 ディアはそう言うと商品をオーディーンに託した。オーディーンならこの卓上ランプの価値を正確に測ることが出来るだろう。餅は餅屋とはよく言うが、道具は道具屋なのである。その為、この件に関しては全て任せるのが最善であった。


「あぁ、そうだ。これ20個あるから。ちょっと調子に乗って作り過ぎたから依頼は20回分でよろしくね」

「おぅ。俺はいいぜ。俺はな」


 オーディーンが意味深なことを言う。その言い方に少し引っかかったディアであったがオーディーンがいいと言っているのだから何も問題はないはずだ。あとは、ギルドに依頼達成の報告をするだけとなりディアは安心するのだった。


ぐぅー……


 安心したからか腹の虫が鳴る。


(お腹すいた……)


 寝過ごして食事をとっていなかった為、まずは昼食をとりに行くことにした。

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