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01:開幕のベル

 都内にある某ホテルの、巨大な宴会場。

 まもなくここで記者会見が行われようとしていた。

 穏やかな陽が差し込むガラスの向こうには東京の摩天楼が広がっている。だが室内に、その優雅さを味わう余裕のある者はいなかった。数百席用意された椅子は、テレビ局、新聞社、週刊誌、ネットメディアといったあらゆる媒体のマスコミ記者たちで埋め尽くされている。彼らの放つ殺気にも似た熱気が、会場の空気を歪ませていた。


 先月、とある男女のアイドルふたりの熱愛がスクープされた。

 その報は日本中を席巻し、各種マスコミは様々なニュースを送り出した。

 それらを受けて、今日、本人たちによる会見が行われることになったのだ。


 壇上には長机がひとつ。白いクロスがかけられ、無数のマイクが林立している。その背後の金屏風が、これから始まる「ショー」の異様さを際立たせていた。


 この会見の様子は、複数のプラットフォームで全世界に生配信されている。会場には巨大なモニターが置かれており、まだ主役のいない会場内の様子を映し出している。画面の端にはコメントが流れていて、期待、憶測、罵詈雑言、応援が入り乱れ、まるで現代のコロッセオの様相を見せていた。


『まじで付き合ってんの?』

『否定会見だろどうせ』

『凪ちゃん泣かないで!』

『蓮様信じてる!』

『マスコミは真実を報道しろ!』


 そんな喧騒の真っ只中、会場の扉が開いた。

 本日の主役ふたりが、双方の事務所関係者に伴われて姿を現した。


 ひとりは、神楽坂蓮。

 国民的男性アイドルグループ『Stardust Mirage』の不動のエース。


 もうひとりは、月島凪。

 清楚系女性アイドルグループ『Lunar Symphony』の絶対的センター。


 現代の芸能界にその名を馳せる有名人たちだ。


 蓮は、漆黒のスーツに身を包み、その表情は能面のように静かだ。

 凪は、純白のワンピース姿で、伏し目がちに蓮の半歩後ろを歩く。その姿はまるでスキャンダルを謝罪する悲劇のヒロインのようにも見えた。


 ふたりが長机の後ろの椅子に着席する。その途端に、凄まじい数のフラッシュがふたりを襲う。まるで真夏の雷光のように、この会見の主役たちを過剰にライトアップしていった。

 蓮と凪はそのまばゆさに目を細めることもなく、正面を見据えている。

 やがて、司会者が神妙な面持ちで口を開き、会見の幕が上がった。


「ただ今より、神楽坂蓮、及び月島凪の、各種報道に関する記者会見を行います」



 -つづく-

※短いお話なので、この週末3日間で完結します。

※次話は、本日13時の更新です。

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