第50話【ロックンローラー】
「あの」
「ん?」
リハーサルの後、ScarletNightは純白の髪の美少女に話しかけられた。確か、1つ前の出番のWhiteLogicというグループの子だ。
「…今日は、よろしくお願いします」
「あ、はい。よろしくお願いします…」
「私、WhiteLogicの兎白真冬といいます。ScarletNightさんは、去年の秋に路上ライブを見て…その……今日、一緒にライブできるのが凄く光栄です」
「あ、ありがとうございます…」
こちら側は向こうのことをよく知らないのが少し申し訳ない。それと、同年代の子と敬語で話すのはどうも慣れない。タメ口が出てしまいそうになるのを何とか堪える。
「………えと…よかったら私たちのリハーサル…と、ライブも見てくださると……嬉しいのですが…」
「…いいですよ。特に用事もないので」
「ありがとうございます!」
真冬は頭を下げると、ステージへ向かっていく。
「……WhiteLogicか…」
「楽器持ってなかったわよね」
「アイドルっぽかったです」
「アイドルがわざわざ私たちなんかに声かけるかな…」
アイドルとロックバンド。同じく音楽に精通する存在だとしても、その在り方はまるで違う。
「緋の可愛さが文字通りの意味でアイドル顔負けなのは確かよ」
「可愛いから声かけたってことですか?」
「まあそうだろうけど、アイドルってのは顔が命だ。対バン相手に自分より顔のいい奴がいて、それも、それがロックバンドのボーカルなら。……分かるだろ」
「………つまり…」
「え、さっきのもしかして宣戦布告?」
「そいことだろ」
「うーん…そんな煽ってるような雰囲気じゃなかったと思うんだけど……」
「でも、アイドルといえばやっぱり嘘つきのプロってイメージあるだろ」
「そういうものなの?私アイドル全く詳しくなくて…」
「まあ、そういうのが一般的かと」
「そうなの……?仲良くしてもらえるのかと思ったのに…」
「でも心配いらないわ。緋が世界一可愛い。それがこの宇宙で一番最初にできた法則だから」
「そうですね。余裕な顔して迎え撃ちましょう」
「その法則はちょっとよく分からねぇけど、顔の良さはまぁ緋の勝ちってのは私も同じだ」
「ちょっと。みんな私ばっかり言ってるけど、蒼も最高に可愛いし、紫音も黎もその辺のアイドルや女優より圧倒的に可愛いからね。……いや、じゃなくて、顔の良さの話じゃないの。私たちはアーティストなんだから、勝敗はライブで付けようよ」
「それも当たり前のことよ。相手は音源でしょ。私たちのウリは生演奏の“ライブ感”。格の違いを見せつけてあげましょう」
「蒼、なんか気合い入ってるね…」
「そうかしら。私は至っていつも通りだけど」
「なんかピリピリしてない?」
「別に。少し気に食わないだけよ。あの白い子、緋の前であざとい顔してた」
「それが理由か……」
「私の緋に近付こうだなんて、そうはいかないわよ。絶対渡さない」
「その辺にしとけ。リハの準備できたみたいだ」
「……」
緋たちはステージに目を向ける。
メンバーは5人。真ん中…センターに先程の純白の少女、真冬が立つ。彼女から見て右手には、ギャルっぽい金髪の子と、少し幼げな茶髪の子。そして左手には大人しそうな薄紫の髪の子と、黒髪ロングのいかにもな清楚系の子。当たり前だが全員顔がいい。真ん中の3人のみがマイクを持っており、両脇の2人はマイクを持たないことを見るに、3人がボーカル、2人はダンスの担当ということだろう。そして、衣装は白を基調としたザ・アイドルといった煌びやかなもので非常に輝かしい。身につけるものといえばオシャレ目な私服と楽器であるScarletNightとは全く違う佇まいだ。あの短すぎるスカートは特に。あれで踊ろうというのだから恐ろしい。
───マイクチェック。証明の調整。セトリの確認。楽器のサウンドチェックが無い分、曲に時間を使える。
「セトリ3曲目の『論理的現実逃避』です」
「はいよ」
───流れる音源に合わせ、センターの真冬が口を開く。
「───」
真冬の役割はボーカルのみ。そのサイドの2人はマイクを持ち歌いながらもダンスに参加、両脇の2人は真冬とは逆にダンスのみだ。
音源は打ち込みだ。ソフトで作った音源そのままだろう。生演奏に誇りを持っている緋的にはあまり好ましいとは思わないが、曲自体には光るものがあるし、ピアノではなくギター寄りのコード進行のため緋の耳に優しい。そしてなにより、バンドとアイドルの違い。4人によるダンスこそ、音楽の楽しみ方のひとつの側面の本質を見ているような気分になる。音楽、そのリズムに合わせて体が動いてしまう、その延長線上にダンスというものが存在していることを思い知らされる。
「………凄いね。ダンスの善し悪しとかよく分からないけど、これはライブ向きだって思う」
「そうね。否定はしない」
「…本番がどれだけ盛り上がるのかは分からないけど、これの後が私たちの出番、それもトリだからね。全部上回ってやろう」
「ええ」
◇◇◇
楽屋で出番を待つ。
真冬は隙あらばScarletNight、その中でも終緋の様子を眺めていた。
「………」
ボーカル&ギターの終緋。塩顔、細身のくせして巨乳。歌も上手くてギターも弾けて非の打ち所が見当たらない。長い前髪のせいか目つきが悪くなる歌唱中とは打って変わって、柔らかい表情を見せるギャップがたまらない。メンバーには悪いが、彼女こそがこの人生の中で見てきた女性の中で最強の美少女だ。
「……」
「真冬、見すぎじゃない?流石に引かれてるし私も引くよ」
「え」
星麗奈に言われてハッとなる。
終緋のすぐ隣には、霜夜蒼がいる。彼女も負けず劣らずの美人だ。
「………」
いや、これは引かれているというかむしろ責められているような気がする。
蒼は緋を抱き寄せると、不機嫌そうな顔で睨む。
「…貴女、私の緋に何か用でもあるの?」
「い、いえ……」
「そう。…緋が可愛くてついつい見てしまうのは分かるけど、見世物じゃないのよ」
「わ、分かってます…」
「分かってるならやめて頂戴」
蒼はため息混じりに言葉を零す。
「…あのさ。もうちょっと言い方考えられないの?」
薄紫の髪の美少女、サブボーカルの霞が蒼に突っかかる。
「霞…」
「なに」
「あんたがボーカルの子大事にしてんのは見れば分かるけどさ。…真冬は、あんたたちの音楽に背中押されたからアイドル続けられてんの。…今日のライブの共演だって楽しみにしてたのに、そんな扱いされたら傷つくと思わないの?」
「………!」
「…ごめんなさい、私たちのことそんなふうに思ってくれてるなんて思ってなくて…」
「謝るのはあんたじゃない。青いの」
「……蒼のこと青いの呼ばわり…?」
「緋、私のことはいいから。…ごめんなさい。少し冷たかったわよね」
「ううん、い──」
「──そんなぽっと出の言葉で許されると思ってんの?」
「……」
「霞、私は……」
「良くない」
「霞、抑えなさい。みっともないわよ」
「…舞は真冬の幼馴染でしょ?真冬が傷ついて何とも思わないわけ?」
「貴女の言動こそ真冬を傷つけてる自覚はある?WhiteLogicの印象を悪くしないで」
「はぁ?」
「ちょっと2人とも!」
「そんなに怒るほどのことじゃなかったでしょ!?」
「星麗奈も美遊も甘い。私は真冬を傷付けた奴はどんな奴だろうと許さない」
「…じゃあその言葉、そっくりそのままお返しするわ。真冬は繊細なの。分かっているでしょう?これ以上ScarletNightに突っかかるのは許さないし、メンバー内で揉めるのはもっと許さない。WhiteLogicは真冬の居場所。それを破壊するつもり?」
「………」
「霞。一旦落ち着いて」
「………チッ」
「霞」
「……真冬に免じて見逃してあげる」
「別に逃げるつもりは無いけど」
「は?」
「蒼。燃料投下すんな」
「…そうね。ごめんなさい」
「………あのさ」
星麗奈が口を開く。
「ほんとごめん。真冬がScarletNightさんとの共演楽しみにしてたのは本当だから。こんなバカもメンバーにいるけど、どうか真冬とは仲良くしてあげてほしい」
「う、うん。こちらこそ仲良くしてくれると嬉しい」
「ほ、ほんと?」
「うん。…あ、タメでいい?同年代の子に敬語使うの慣れなくて」
「あ、うん!全然気にしない!私もタメで話していい?」
「いいよ。よろしく真冬」
「ありがとう…!…よろしく、緋」
◇◇◇
「……私は認めないから」
バックステージで霞がボヤく。
「まだ言ってるの?」
「……ナメてるよ、あいつら」
「霞…」
「真冬には悪いけど、私は好きになれない。…どうせ生演奏の方が格が上だとか思ってるんだよ。…私だって、この手がちゃんと動けば……ッ」
「……霞さ。真冬の前でよくそんなこと言えるね」
「……!」
「……もうあんたはギタリストじゃないの。真冬を引き立てるダンスとサブボーカルやるのが今のあんたの使命じゃないの?」
「………」
「失ったもので張り合わないで。みっともない」
「………。………はぁ」
「霞。笑顔だよ笑顔」
「………分かってるよ。……私はアイドルだから」
「ん。…ライブ終わったら、ScarletNightにちゃんと謝ってよ」
「………うん」
「───行くよ、WhiteLogic」
───歓声。光る5色のサイリウム。
「真冬!!」
「星麗奈!!」
「霞!!」
「舞!!」
「美遊!!」
「みんな今日は来てくれてありがとう!!さっそく1曲目!『白と透明』!!」
音源が流れると共に、ファンはそれぞれ推しのカラーのサイリウムを振り、コールを叫ぶ。
「はい!はい!はい!はい!」
歌の合間合間に挟まる合いの手。
センターの真冬を中心に、4人はポジションを変えていく。
遠くまで綺麗に透き通る、冬に吹く風のような真冬の歌声。暗闇の夜を照らす星明かりのように光る星麗奈の歌声とダンス。ステージ下から漏れるスモークのようにふんわりと盛り上げる霞のハスキーな歌声。寸分の狂いもない完璧な動きと位置取り、凄まじいキレで繰り出される美遊のダンス。美遊とは対照的に柔らかく、優雅に、自由自在に舞い踊る舞のダンス。メンバー全員の個性を最大限に発揮し、全員が互いを引き立て合う。そして何より、フロアを彩る白、黄、ピンク、紫、緑の5色のサイリウムの光とコールが、音源では絶対に味わうことの出来ない空間を演出してくれる。
「コールありがとう!みんな大好きだよ!!」
演者とファンの一体感。これこそライブ感だ。
1曲目『白と透明』に続き、オリジナル曲『白と透明』、『命が白紙になるまで』、『論理的現実逃避』
、『正しくない生き方』、『空幻妄想』と、次々に披露していく。
最高の時間だ。曲はライブで披露して完成すると言っても過言では無いだろう。
楽しい時間は一瞬にして過ぎ去っていく。
6曲目『ホワイトアウトからの抜け出し方を』を披露し、MCへ。
「…改めまして、WhiteLogic、センター、メインボーカルの兎白真冬です」
「リードボーカル、夜攫星麗奈です」
「サブボーカル、芦原霞です」
「ダンサー、黒姫舞です」
「同じくダンサー、木立美遊です」
「…みんな、今日は本当にありがとう。…WhiteLogicのライブが、ほんの少しでもみんなの日常の中に、癒しとして存在できているのなら、嬉しいです。…次が最後の曲になります。最後まで、みんなよろしくお願いします!…『放射冷却』」
太陽の光は暖かいように見えてそうでも無い、鋭い棘のように肌を刺す冷たい朝の空気。そんな冬の日の記憶に、様々な想いを込めて吐き出す。詩的な歌詞の多いWhiteLogicの曲の中でも特に詩的な歌詞が透き通る。
「───」
最後の曲を歌い終える。
「……ありがとうございました!WhiteLogicでした!トリのScarletNightも、どうかよろしくお願いします!」
───バックステージで、ScarletNightへバトンタッチする。
「お疲れ様。WhiteLogic、良かったよ。ダンス、ファンとの一体感。…私たちに無いもの沢山持ってて凄いなって思った」
「…ありがとう。…ScarletNightも頑張って」
「うん。…最っ高のライブにしてみせるから」
───真冬からバトンを受け取る。
「……っし……行くよ」
「ええ」
「おう」
「はい」
──ストラトキャスターは今日も最高の音を出す。
───Opening ActのSEに合わせ入場。SEから歓声を挟んで、生演奏へ繋げていく。
特に言葉は発しない。感情は全て音にして吐き出す。
Opening Actからアウトロを伸ばし、Shake it all offのイントロへ繋がる演奏へと移っていく。
───溜めに溜めた感情が爆発するようなShake it all offのイントロが炸裂する。緋と黎による爆竹のようなストロークが鳴り響く。
静かなAメロ、そしてサビでまた炸裂させ、イントロと同じフレーズを間奏で弾く。
「──行くぞRAIN OF BOW~ッ!!」
蒼の叫びと共にアウトロをぶち上げていく。
アイドルとは盛り上げ方が違う。決まったコールも無い。ペンライトも無い。けれど、手を上げ、リズムに乗せて跳び、手を叩く。それでいい。音を聴いて音に酔う。
Shake it all offのアウトロから繋ぎの演奏へ入り、そして続けざまにNo Limiterへ。
もう既に暑い。激しく光る照明、ギターを弾き散らして歌い散らかす、それだけで汗が滝のように吹き出す。だが、楽しくて、止まらない。
濡れた髪が頬に張り付くのを振り払うように声に力を込めて、この小さな体の中にあるものをぶっぱなす。
No Limiterのアウトロを〆、繋ぎのドラムソロへ移っていく。緋は1度ギターを下ろし、水を飲むとマイクを手に取る。
「…ScarletNightです!披露したのは、入場曲『Opening Act』、続いて『Shake it all off』、『No Limiter』でした。最初っから飛ばして行きましたが、付いてこれていますでしょうか!!…次は、ちょっと大人しめの新曲です聴いてください、『桜錯乱』」
ドラムソロからベース、そしてオシャレなギターメロディが入る。
珍しく日本語歌詞を多めに使い、言葉をシンプルに並べていく。
音作りに拘りまくった黎の優しいサウンドが心地よく鳴る。
散っていく桜のような儚さと確かなロックが程よく合わさって独特の世界観を演出していく。
桜錯乱のアウトロから続けざまに新曲『Nadeshiko』へ。音数を少なくするオシャレ路線で、ベースとドラムの音に気持ちいいギターフレーズが重なっていく。
いざ歌唱がはじまると、緋と蒼でラップ調の掛け合いを繰り広げていく。
「ッ───」
黎はペダルを踏みつけ、歪みを足してサビへ突入。ヘビーなサウンドで押していく。
───決まったコールなど無いが、この瞬間だけでその体を音楽の上に乗せてやる。
「──Everybody jump now!!」
跳ぶ。音楽に合わせて体を飛ばし、声を出す。ダンスなんてなくとも、身振り手振り、全身を使って全員を巻き込んで、リズムと一体化していく。
リズムも分かりやすいフレーズを繰り返す。3回目になれば歌えるだろう。
「Sing!!」
フロアへマイクを向ける。みんなの声をしっかり拾う。
「──One more!!」
みんなと叫んだ4回目のコーラスから、間奏へ。
路上ライブで積み上げてきた、ファンはもちろん知らない人でも乗れる、そんなライブパフォーマンスを繰り広げていく。
曲が終わっても演奏を途切れさせず、ドラムとベースで繋ぎの演奏へ入っていく。その間にギター組はセッティングを変更できる。
緋はストラトキャスターを担ぎ直し、汗で濡れた髪を払い、前髪を耳にかける。流れるように『Trying to fly with a tailwind』のイントロへ入っていく。桜錯乱、Nadeshikoから繋いだ洒落た雰囲気を、じわりじわりと変えていく。アウトロを引き伸ばして、1度〆る。
「…改めまして、ScarletNightと申します!桜錯乱、Nadeshiko、そしてTrying to fly with a tailwindでした。…ScarletNight初のライブは、去年の9月にLEVORGERさんのライブハウスツアーのオープニングアクトを急遽代役で出演させて頂いたのが初のライブで、それを除けば、去年11月末のライブが初でした。今年は1月から月に1回ずつライブをやってきて、今年4回目のライブです。…こうしてライブができているのも、皆さんのおかげです。CDやグッズもたくさん買って頂いて、本当にありがとうございます!…メンバー紹介!」
紫音のドラムソロが始まる。
「ドラムス!曇紫音!」
強く、それでいてテクニカルなビートが刻まれていく。
「ギター!昏木黎!」
紫音からのバトンを受け取り、黎のギターソロへ移る。ストロークから早弾きとタッピングを経て、蒼へ音のバトンを投げる。
「ベース!霜夜蒼!」
黎から引き継ぎ、蒼のベースが低音を響かせる。手拍子と共に、スラップが勢いを増して緋に繋ぐ。
「ボーカル!終緋!」
蒼と目を合わせ、音を受け取る。底から込み上げてくるマグマのような感情を音で吐き出すギターサウンド。
「…あと2曲、最後までお付き合い下さい!初披露の新曲行きます!“Accomplice”」
緋の疾走感あるギターソロからテンションを上げ、少し静かなAメロの裏でエモさを感じさせるコードが響いて、じわりじわりと盛り上げていく。Bメロで溜め、サビでさらにぶち上げていく。
掻き鳴らすストラトは絶好調で、かつてない程に心地良い音色を響かせる。
ストラトキャスターへの想い、そして自分の意味に悩んで葛藤した想いを込めて音を放つ。
星になりたくて空を見上げても、もう既にそこには数多の星が光っていた。そこに飛び込んでも、周りの光に比べれば目立たない小さな光かもしれない。けれど、ここにいる人達は見つけてくれた。
決して掻き消されてなんかいない。
頭の中でぐるぐると回って解けない感情は全てさらけ出す。どこまでも私は私だから。
私を選んだ理由はあるんだろう。きっと、私の歌だからこそ刺さった人がここにいるんだろう。
もう、自分の価値なんて気にしない。劣化版と言うなら言えばいい。私はその程度で諦められるほど賢くないんだ。人生は選択の連続というけれど、私の人生はきっと一本道だ。音楽をやるしかなかった。それ以外の道は無かったのだから。
───Accompliceのアウトロを引き伸ばす。
「──最後の曲です!今日は本当にありがとうございました!余ってる体力全部吐き出してけ!!This one is called, …“Farewell to the shitty band”!」
疾走感の中にも洒落た、少しスカした雰囲気をプラスした紫音のドラムに3人が乗っかっていく。
蒼や黎、紫音とも、音の掛け合いを楽しみながら、演奏を進めていく。
たとえ誰に何と言われようとも貫き通す自分の音楽にかける想いを吐き出し、アウトロを引き伸ばして最後の最後まで、残りの力を全て使い切るように振り絞ってギターを掻き鳴らす。
「ScarletNightでした!!またお会いしましょう!!」
────全員で息を合わせて、〆る。
「ありがとうございました!」
◇◇◇
楽屋に戻ると、WhiteLogicの面々が出迎えてくれた。もう私服に着替えており、煌びやかなステージ衣装ではない。
「……お疲れ様。ライブ、凄く良かった」
「ありがとう」
「…なんて言うか……アイドルとバンド、全く違うことをやっているようで、でも、芯にあるのはきっと同じようなことで……だから私はあの日、ScarletNightのライブに背中を押されたんだと思う」
「私も、今日WhiteLogicのライブ見て思った。…声出して、体動かして。ライブってやっぱり最高だなって。…音楽って、アーティストと音源だけじゃ絶対に完成しないんだって改めて思った。歌もダンスもすごく綺麗だったし、ファンの人の熱も凄かった」
「…あの」
「ん?」
薄紫の髪の子。確か、サブボーカルで、名前は芦原霞だったか。
「……変に突っかかってごめん。悪かったと思ってる」
「いいわ。ロックバンドだもの。いつものことよ」
「……あと」
「まだ何か?」
「……そっちもみんな可愛いじゃん」
「え、ええ…ありがとう…」
「まぁ、真冬には及ばないけどね」
「…緋の方が圧倒的に可愛いけど」
「蒼、可愛いの基準は人それぞれだぞ」
「霞も余計な一言付け足さないの」
「ごめん」
「でも、顔はともかく、スタイルは流石に私の負けかな」
真冬は緋の顔から下へ目線を落とす。
「あー、まあそれは否定できないかも」
「え……」
「少なくともF以上はあるでしょ」
「ちょっと。緋を変な目で見ないでくれるかしら」
「ごめんなさい…」
「………」
最後に測ってからそこそこ経つ。下着のサイズはHでも若干合わなくなってきている気がしなくもない。だが黙っておく。
「……蒼」
「ん?」
「疲れた」
「…そうね。お疲れ様」
「ん…」
蒼に寄りかかって目を瞑る。
いつだって全力だ。
目指すものは果てしない。けれど、私は羽ばたく。
追いかけて届くように。
……To be continued




