第14話【霜夜蒼という少女】
路上ライブが終わり、深く息を吸って吐く。
凄い開放感。
大空の下で、人と一緒に歌って、叫んで、手を叩く。
これこそが、人とのコミュニケーションだ。
たとえ会話が苦手でも、音楽でなら人と関わる事ができる。喜びも、怒りも、哀しみも、楽しさも、全てを遠慮なく吐き出せる。辛いことも忘れてしまえる。
音楽が無いと生きていけない。それは、昔も今もこの先も、ずっと変わらない事なのだろう。
「──ベースやってて良かった……」
「ふふっ、どしたの?急に。私も蒼のベース大好きだよ」
「ええ。ありがとう、緋」
路上ライブで使った機材を片付けながら、緋と笑い合う。
彼女と過ごす日々もかけがえのないもので、彼女のそばにいることが、生きている中で一番の幸せだ。
こんな日が、永遠に続いてくれればいいのに───
「───霜夜?」
「!!」
しゃがみこんでベースを担ごうとしたその時、嫌な声が聞こえた気がして、反射的に体の動きが止まる。
気のせいだろう。気のせいであって欲しい。
「お前、霜夜だよな?」
「………」
恐る恐る声の主の姿を確認する。
「…!!」
───妙に老けた中年の男性。高校の担任だった。
──最悪だ。
もう二度と見たくないと思っていた人物だった。
「……………」
「お前……学校も来ないで何やってんだと思えば……こんな所で遊んでたのか」
「ッ……遊んでた……ッ…!?」
頭に血が上る。色々な思いが込み上げてくるが、今はただ、その言葉に無性にイラついた。
「────ッ!!!」
────遊びなんかじゃない───
───声が出ない。
なんで……。
───叫べない。
──言葉が出ない。
どうして。どうして言い返そうとしても言い返せないの…!?
「────なんだよおっさん。喧嘩売ってんのか」
「!!」
紫音…。
「聞き捨てなりませんね。何が遊びですって?」
黎…。
「………蒼。しっかり」
「…緋……!」
緋は蒼の肩に手を当て、守るように寄り添ってくれる。
「………なんだ?霜夜の友達か?」
「だったら何だ」
「霜夜の現状は知ってるのか?単位が取れてないんだよ。2学期の中間テストもすっぽかしたら留年だぞ」
「アァ?こちとら高校なんざとっくに中退してバンドに命かけてんだよクソジジイ。文句あんならツイッターにでも愚痴っとけよ」
「大人に向かってなんて態度だ。礼儀も知らんのか」
「テメーも私も同じ人間だろ。そこに上下なんてあんのかよ」
「………なるほどな、こんなクズ共に囲まれたんじゃ、霜夜がグレるのも仕方ないか……」
「クズはテメーだろ」
「そうですよ。私、人の好きなことを馬鹿にする人は大嫌いです」
「………。どうしようもない奴らだな。話が通じない。……霜夜。月曜は絶対に学校に来い。生徒指導はまだ終わってないぞ」
蒼の高校の教師はこの場を去ろうとするが、紫音たちの怒りは収まることを知らなかった。
「おい。謝れよ」
「何にだ」
「分かりませんか?私たちの“生きる意味”を“遊び”呼ばわりしたことに対してですよ!!!」
「…遊びは遊びだ。学生なら学校へ来て勉強するべきだ」
「……どうしようもねぇ奴だな。話が通じねぇ…」
「………」
黎は拳を握る。
「………謝らないならぶん殴ります。身長小さめだからって舐めないでください」
「黎、やめて」
「…蒼さん……」
「分かりましたから……」
口が震えて、これ以上喋れない。
「……」
緋は蒼の背中をさすると、立ち上がって彼の方を向く。
「消えて」
「……ふん。どうなっても知らないからな」
教師の男はそう言うと蒼たちの前から姿を消した。
「……っ…」
「蒼ッ!!」
力無く崩れ落ちる蒼を緋が咄嗟に受け止めた。
「……大丈夫…?」
「……ひい…ろ………っ…」
「蒼!!」
体に力が入らない。過呼吸を起こしてしまっている。
「蒼、もう大丈夫だから…!」
「ん………ええ……」
「とりあえず、場所移すぞ。ベースは私が持つから、緋は蒼を頼む」
「うん」
「じゃあ私が蒼さんのアンプ持ちますね」
荷物を纏め、4人は近くの屋根の下のベンチへと場所を変える。
「…緋、ありがとう……」
「ううん。…私には、蒼のそばに居てあげることくらいしかできることないから」
「いいえ。それが本当に、すごく助かるわ…。貴女がそばに居てくれるだけで、気持ちがかなり楽になるから…」
「なら……よかったけどさ……」
「……なあ、蒼。あいつ、一体何なんだ。見たところ高校の教員だよな」
「……」
「言いづらいなら話さなくてもいいけど……」
「……少し、昔話を聞いてくれるかしら。私が緋と再会するまで、どんなことがあったのか」
「……うん。話して、蒼。全部受け止めてあげるから」
◇◇◇
小学2年生。緋と別れたあの頃から、引越しと転校続きの日々が始まった。
緋さえいてくれればいいと思っていた私は、元々人と関わることがあまり好きではなかったこともあって、転校先で全く人と仲良くなることができなかった。最初のうちだけは、何人か物珍しさで話しかけに来てくれる子がいたが、多分、私はそれに上手く答えることができなかったか、全部突っぱねてしまったのだろう。
誰と出会っても、決まって同じことを思っていた。
「……この人は緋じゃない」
私の中での友達か否かの判断基準はひとつだった。『終緋』であるかどうかだった。そもそも友達なんてできるわけがなかったのだ。
小学生のうちに4回、中学でも1回転校し、その頃にようやく親の仕事が落ち着いたため家が建った。けれど、中学3年の冬、両親は私を家に置いて赴任。夫婦仲が良かったのが災いだった。遂に母は娘ではなく夫を選んで付いて行った。お小遣いもくれるし生活費も全て出してくれるけれど、本当に必要な場面以外では顔を見なくなってしまった。
今までは孤立していても転校になれば変わらないから別にいいと思っていた。けれど、孤立した状態でずっと、と言うのはかなりキツいだろうなと思った。実際そうなった。
高校に入った時、私はそろそろ変わろうとした。もう二度と会えるかも分からない過去の友達に囚われたまま、誰の記憶にも残らないような人生を送るのは流石に虚しすぎる。そう思って、友達を作ろうとした。けれど、無理だった。
自分はとことんコミュニケーション能力が足りていない。人と会話しようと思っても言葉が出てこない事が多く、何を話していいかも分からなかった。クラスメイトの話題についていくために流行りの音楽を聴いてみたりもしたけれど、自分には合わなかった。
結局のところ、私は1日につき3回は「緋に会いたい」と思いながら、この寿命のカウントを進めていた。
高校1年、3学期。
放課後。今日も誰とも話さないまま、私は席を立った。
部活は幽霊部員。絶対何かしらの部活に入らなければならないのだろうと思っていた私は、運動する必要も無く大会を目指したりしそうにない、緩そうな雰囲気だった英会話部をセレクト。しかし、英語以前にそもそも会話が苦手な私はすぐに自分には合わないと悟り、もう行かなくなってしまった。
「──おい、霜夜」
1回の下駄箱前で、担任の教師に呼び止められた。細身でそこそこ若めの男性。人当たりは悪くはなく、生徒からの信頼もそこそこ。悪い人ではない。
「……なんですか」
「学年末テストの課題、出してないだろ」
「………そうですね」
「そうですね、じゃない。出しとけよ」
「…機会があれば」
「出す癖を付けろ出す癖を」
彼は呆れ気味だ。それはそうだとは思う。自分でも呆れている。
「まあ…お前がそういう人間ってのはこの1年間で何となく分かってるけどよ。もう少しくらいやる気あるように見せる努力はしろよ」
「それが私のためになるとは思えません」
それが私の信条。やる気もないのにやる気があると嘘をつき、霜夜蒼という人物を人に間違って覚えて欲しくない。嘘つきは泥棒の始まりとも言う。正直者でいることが私なりの正義だから。
「あのなぁ霜夜……」
「……分かってますよ。この世界、嘘つきが得をするんだって」
でも、私はしない。そんなことをして自分をよく見せようだとか、そんなことはどうだっていい。
私はピエロになりたい訳じゃない。
担任を振り切るように、靴を履き替えて校舎を出る。
「…はぁ……。いちいち言われなくてもそんなこと分かりきってるわよ。テストの点は足りてるんだから出す必要なんて無いでしょ」
足速に駅を目指す。
成績なんてものはただ人に優劣をつけるだけの評価のひとつに過ぎない。そこで上を目指そうだなんて思わない。高校さえ出られればなんでもいい。将来やりたいことも無い。進学する気もない。金を払って学校に行くよりも金を貰って働いた方が得に決まっている。私でも使ってくれる会社に就職して、両親のためにも自立してあげる。そうやって生きていくしかない。
「……人生ってつまらないわね」
道は決まっている。舗装された道路。赤と青を繰り返す信号。周りを歩く人々や走る車。
畦道に乗り出していくような人生は、きっとこの世界では送れない。
「……ほんと、つまらない」
家に帰って、コートを脱ぎ捨てると部屋へ直行し、ベースを手に取る。
感情のはけ口になるのはこれだけだ。
誰にも認められなくても、こうしていれば少しは気が紛れる。
誰かに聴いて欲しいという思いが無いわけでは無いけれど、こうして発散するだけが自分には合っているだろう。
人と関わることが好きではないから。1人でベースと対話するくらいが丁度いい。
──気が付けば外は真っ暗になっていた。
「…はぁ……夕飯……どうしようかしら」
自炊する気も起きない。どこかへ買いに行く気も起きない。
「……もういいか…」
ベッドに倒れ込む。
「…どうやって死ぬまで生きればいいの?」
毎日。毎日。毎日。1人で、同じことの繰り返し。きっと明日も。その次の日も。誰にも知られないまま、霜夜蒼は静かに生きていく。
「…楽でいいんだけど……少し寂しいわね……」
◇◇◇
何も無い日々が続いていた。ある日、母から電話が来た。
「もしもし、蒼?」
「お母さん…」
「蒼、ちゃんとご飯食べてるの?」
第一声がこんな質問だった。
「……ええ。…食べてるわよ」
「本当?」
とても心配そうな声をしている。
「…ええ」
嘘だ。本当は食欲がなくてあまり食べていないが、母を心配させる訳には行かない。
「なら良かったわ…。最近、口座の残高あまり減ってなくて心配してたの。ちゃんとご飯食べてないんじゃないかって……あ、もしかして自炊始めちゃったの?」
「あ……。え、えぇ、そうなの」
「そっか。じゃあ、余計な心配だったみたいね。…あ、でも仕送りはやめないからね。蒼も頑張ってるんだし、自分へのご褒美でもなんでも、余ったお金は好きに使っていいからね。洋服も新しいもの買っていいのよ。あ、あと蒼は音楽好きよね。CDとか、ベースの機材とか。欲しいもの、たくさんあるんじゃないの?遠慮しないでいいんだからね。もちろん、限度の範囲内でだけど」
「ええ……。ありがとう。でも……少し申し訳ないわ。あまり贅沢するのは2人に悪い気がして……」
「…そう?でも私も、親としてできることなんてそれくらいしかないから…。あ、もし、親に頼ってばっかりだなって負い目を感じてしまっているなら、アルバイトでもしてみるのはどう?」
「アルバイト…?」
「ええ。あれ、高校バイト禁止だっけ?」
「…長期休みの間だけは、申請すれば大丈夫だったと思うわ」
「そう。なら、社会勉強も兼ねて、やってみたらどうかしら。蒼は少し人見知りだから、飲食店とか接客は少し怖いかしら…。あ、スーパーの裏方のほうとかなら、結構すぐやれるんじゃない?」
「……どうかしら。やってみないことには分からないけど……でも、やってみようかしら。少しは親孝行したい」
「ありがとう。気持ちだけで十分。……それじゃあ、またね、蒼。元気でいるのよ」
「……ええ」
蒼は電話を切る。
「………お母さんにも心配かけて……ほんとに……ッ」
◇◇◇
「それじゃ、解散。春休みにアルバイトしたい奴は申請用紙取りに来いよ~」
高校1年生最後の日。即帰宅する者、部活に行く者、友達と駄弁る者、教師に呼び出されている者。各々が各々の放課後へ移行する中、蒼もまた、アルバイトの申請用紙を取りに、他の生徒に紛れ教卓へと赴く。
「霜夜もバイトするのか」
「ええ、まあ。…両親に迷惑かけたくないので」
「……そうか。課題、今回だけはやっとけよ」
「……余裕があれば」
──家に帰り、勇気を出して近所のスーパーに電話してみる。
「あの…えっと…アルバイト募集…して…ますよね?」
慣れない会話をし、面接の日を明後日に決める。
「…電話でもこんなおどおどして……私、大丈夫なのかしら…」
力無く天井を仰いでため息を着く。
「……でも、やるしかないのよ……」
そして、面接の日。
面接と言っても、かなり簡易的なものだった。
「君が電話くれた霜夜蒼ちゃんだね」
「…はい」
「高校生だっけ」
「はい。……えっと、それで、あの、は、働ける期間なんですけど…」
「ああ、春休みの間だけなんだよね」
「…えっと、はい。休みの間だけです」
「んー。分かったよ。春休みって短いでしょ。…明日からでも行ける?」
「え?あ、はい」
「ちなみに、学校からは何か貰ってる?申請用紙みたいなのとか」
「…あ、はい。これ……」
蒼は学校で貰った用紙を渡す。
「えと……ここにお店の名前と住所…書いて貰えれば大丈夫です」
「はいよ。…それじゃ、蒼ちゃん、明日からよろしく」
「は、はい」
用紙を受け取り、家に帰った。
「……この紙って別にすぐに出す必要ないわよね」
ほんの少し人と対面して話しただけでかなり疲れた。もう家の外には出たくない。そもそもインドアなのでできるだけ外出はしたくない。
「早ければいいんだろうけど………提出は休みが明けてからでいいわね……」
用紙を入れたクリアファイルを通学用の鞄に雑に放り込む。
「……はあ。ベースでも弾こうかしら」
◇◇◇
春休みが開けた。
始業式前。クラスはそのままで、2年生の教室へ入る。
他のクラスメイトは、和気あいあいと話をしているが、私は誰とも話さないまま席に着く。
「………」
バイトに行って、ベースを弾くだけの春休みだった。だいたい想像通りの過ごし方だった。
「みんな席に着け~。今日から2年生だ。数日後には先輩になるからな。自覚持っておけよ。2年のクラス分けは始業式の後に張り出すからな」
教室に入ってきた1年生の時の担任。この人は、教員にしては人の心がある人だった。今年は誰が担任になるやら。まともな人であってほしいが、教師になろうだなんて思う人間がまともなわけが無い。彼が特殊なだけだ。
「…それじゃ、始業式だ。体育館に集合」
みんな立ち上がる。蒼もそれに続いて、体育館へ向かおうとするが、担任に呼び止められた。
「あと、霜夜」
「はい…?」
「バイト、やっぱりやめたのか」
「え?…いえ……やりましたよ。…これ、用紙です」
「…………あ、ああ……」
担任は複雑そうな顔をしながら、蒼から用紙を受け取る。
「………。…あぁ…悪いけど……放課後、職員室に来れるか?」
「え?まあ……。はい」
その後、始業式を終え、クラス分けと担任の発表があった。
「…1組ね……」
2年1組の教室へ行く。
「………」
担任は物分りの悪そうな顔をした中年の男性だった。人の名前と顔を一致させるのが苦手な私は、彼の自己紹介を3秒で忘れ、なにか不穏な空気を感じながら学校での時間を過ごした。
放課後になり、1年の頃の担任に言われたように職員室を訪れる。
「えっと……2年1組の霜夜です…」
「ああ、来たか」
私を待っていたのは、今年の担任と、生徒指導の教師。
「……私……何か……しま…し…た…か……?」
「無断アルバイト。校則違反だ」
「……は…?」
突然の事で混乱する。
「……いえ……ちゃんと用紙…出しましたよね…?」
「今朝にな」
「………出してるじゃないですか」
「アルバイトをやるより先に提出する決まりだぞ」
「……いや、でも…」
「言い訳は知らん。無断アルバイトは反省文、原稿用紙5枚」
「あ……っ」
何も言えないまま、原稿用紙を胸に押し付けられる。
「………ッ……“無断”じゃないです!!ちゃんと担任に言いました!!!アルバイトするって!!!ちゃんと断ってます!!!」
「屁理屈は知らん。反省文を書け。タイトルは『無断アルバイトと私』だ」
「ッ………“無断”じゃありません…!!」
「屁理屈は知らんと言っている」
「………無断の意味も分からないの?」
「なんだその態度は」
「……………態度に名前とかあるんですか」
「………」
「……それと霜夜。俺からもだ。春休みの課題、何一つ出てないよな」
「………それがどうかしましたか」
「出せ。絶対だ」
「……テストの点は足りてます」
「それは関係無いことだ。出せ」
「………」
「出せよ」
「………」
「出せって言ってんだよ。分かるか?」
「ッ………えぇ……分かりました…!!!」
分からない。
分からない。
分からない。
理不尽だ。
ふざけている。
原稿用紙を握り潰しながら階段を降り、靴を履き替えて校舎を出る。
「………無断じゃない。出す意味が無い。私は何も悪くない」
私は正直に言ったんだ。
じゃあ何だ。アルバイトはしませんでしたと言えばよかったのか。しませんでしたと嘘をついて、それでお咎めなしのハッピーエンドにすれば良かったのか。
家に帰ると、鞄を床に叩きつけて部屋に行き、ベースを手に取る。
「私は悪くない……!!!」
◇◇◇
次の日、教室に入ると、自分の席には張り紙が貼られていた。
「………」
暴力のような文字で、『課題・反省文提出 早く!!!』とでかでかと書かれている。
「霜夜さん、なにか悪いことしたの?」
名前も知らない誰かが話しかけてくる。
「私は何も悪いことなんてしていないわ!勝手なこと言わないでくれるかしら!!」
「ッ……ご、ごめん……」
彼女は蒼から離れていく。
「……」
彼女はもしかしたら、心配してくれていたのだろうか……。
「ッ…!!!」
貼り紙を剥がしてぐしゃぐしゃに丸めて窓の外に放り投げる。
「──ほらもう時間だぞ。席に着け。この時点で立ってた奴は遅刻にしとく。遅刻3回で反省文な。まず1回。それと、霜夜。課題はやってきたか?」
──そんな一晩で何でもかんでも完成すると思う?馬鹿なんじゃないの。
そんな事を強気に発言することも出来ず、ただ「いえ」としか答えられなかった。何も手をつけていない。
「明日持ってこなかったらこれも反省文な。原稿用紙5枚」
───そんなもの書かせる暇があったら生徒全員の成績上げさせる努力でもしなさいよ。
言葉は喉を通らないまま詰まってしまう。
「はぁ………」
これはもはやため息なのかも分からない。
次の日、行きたくないと思いながらも学校に行った。
苦痛だ。今までの学校生活とは決定的に違う苦痛だ。ただ、つまらない、面白くない、スカスカな日常に嫌気が差していた去年とはまるで違う。本当の苦痛だ。
それでも学校には行かなければならないだろう。私は嫌でも学校に行った。それだけでも褒めて欲しいのに。
呼び出され、こう言われた。
「お前、本当にどうしようもない奴だな。校則違反。何の反省もできない。自分は悪くないの一点張り。ハキハキ話さない。友達もいないみたいだしなぁ。────
───いったいどんな親が育てればこんなクズに育つんだ?」
「ッ!!!!!」
何様のつもりだ。
どんな意味があって私の親を貶した?
許さない。
許さない。
絶対に許さない。
家に帰り、机に向かって吼える。
「書けばいいのよね…!!?書けばいいんでしょう!!?原稿用紙5枚分!!!」
全部吐き出してやる。
私は間違ってない。
私は正直に言った。
嘘をついて、偽って、それが正しい選択でしたなんて教訓を与えたいのか?
私は何も悪くない。
悪いのはお前の方だ。
説明不足だった学校側の責任だ。
生徒指導を行わなければならないくらい重大な問題になるのなら予めしっかりと講習しておくべきだろ。
そのくせして、やらなくていい無駄なことしかしない。
こんなことをして何になる。
私にこんな仕打ちをして、誰が得をする?私がこんな目にあって、誰が幸せになる?
どんな理由や事情があろうと、人の悪口は到底許されるべき行いでは無い。
生徒に物事を教える立場の人間が、人を貶すようなことをしていいはずが無い。
反省するべきはお前たちのほうだ。
無断の意味も分からない馬鹿に何かを言われる筋合いは無い。
私は何も悪くない。
誰にも迷惑をかけてない。
誰かを不幸にしたこともない。
むしろ人手不足で困っている店舗の役に立った。褒めて称えられるべきだろう。
それなのに、お前らときたら。
私をこんな目に遭わせて楽しい?給料は増えた?誰かが幸せになった?誰が得をした?楽しくないわよね?給料も変わらないわよね?誰も幸せになんかなってないわよね?誰も得なんてしていないわよね?私が傷付いて、嫌な思いをして、苦しんでいるのよ。分かる?私は人のため社会のために働いて、役に立ってきたというのに。お前らときたら。誰の役にも立たないうえに人を傷つけることしかしない。人間として終わってる。もっと人のことを考えて生きられないの?
お前らが私の気に触るせいで日常生活に支障が出ている。
体がだるい。
吐き気がする。
寒気がする。
震えている。
私はどうしてこんなにも震えている?考えたことがあるのか?
言葉がどんなに人を傷つけるかお前らは知らないだろう。
私は知っている。
こんなに傷ついている。
反省しろ。
私は教師でありながら生徒に暴言を吐きました。って。
言えよ。
言えよ。
言えよ。
反省文、書けよ。
「───原稿用紙5枚じゃ足りない!!!!」
足りない。
怒りを、憎しみを、不満の全てをぶつけてやる。
これを逆ギレと呼びたければ呼べばいい。
けれど、この私の反省文……いや、“作文”を読んでキレるならそれこそ逆ギレだろう。
そうだろ。
そうでしょッ!!!!
頭の中を回る言葉。
文章も、段落も、何もかもめちゃくちゃなまま、それをただただ書きなぐっていく。
「─────なので、これを機に教員のみなさまも、是非反省文を書かれてみては如何でしょうか。………完璧……原稿用紙10枚…ピッタリ埋めてやったわよ…。これで満足でしょ…。タイトルは、そうね…──
───『反省文とあなた』」
後日。
私はまた学校に来た。今日は昨日よりも気持ちが晴れている。逆に、ワクワクで心臓がうるさい。
今まで、小学生や中学生の頃から、読書感想文だったり決められたテーマでの作文だったりを夏休みの宿題でやった事があるけれど、そのどれと比較しても、歴代最高傑作と言える作文が完成したのだ。
私は将来、作家になれるかもしれない。そんな冗談を頭の中で思い浮かべながら教室へ入り席に着いた。
「───霜夜」
朝のホームルームが終わった時、担任に呼ばれる。
「なにかしら」
「今日こそ書いてきたんだろうな。反省文は」
「ええ……つい気合いが入ってしまって10枚分一気に書いてしまったわ。これで満足かしら?」
すぐには中身を見せないために、原稿は茶封筒に入れてきた。
「1限目の物理だから、失礼するわね」
心臓がバクバクと鳴っている。
楽しみだ。是非とも最後まで読んで欲しい傑作だ。どんな反応が帰ってくるのか楽しみで仕方がない。
私は高ぶる気持ちを抑えられないまま、授業に臨んだ。
───昼休み。
「───霜夜蒼。いるか」
──来た。私の最高傑作の作文をお読みになられた教師風情が。
「何か用かしら」
「………生徒指導室へ来い。今すぐにだ」
「お昼を食べてからでもいいかしら」
「今すぐにだと言ったのが聞こえなかったのか?」
「そこへ行く意味が分からないわ。急ぎの要件なら今ここで言えばいいじゃない。それともなに?生徒にお腹を空かせた状態で午後の授業を受けさせるつもりかしら」
「………その態度は何だ。霜夜」
「何だと言われても分からないわね」
「それが教師に対する態度かと言っている!!」
周りに生徒がいる中で怒鳴り散らかす。
「……周りへの迷惑、人の気持ちを考えられない。教師という立場が偉いと思っている………。私が書いた渾身の作文を、どうやらまだ読んでいないようね」
「読んだよ。あれの何処が反省文なんだ?」
「私がいつ反省文を書くと言ったかしら」
「はぁ?」
「貴方こそ、反省文を書くべき人ではないかと思うのだけれど」
「霜夜………いい加減にしろ!!」
「いい加減って何かしら」
「お前なァ!!!!」
机が蹴り飛ばされ、胸ぐらを掴まれる。
「ッ…」
「調子乗ってんじゃねぇぞ!!!」
「───」
耳元で叫ばないでくれるかしら────。
「──!?」
声が………出ない……。
「あ────ッ!!!」
──投げ飛ばされ、床に叩きつけられた。
「が……ッ……!!!」
「霜夜!!放課後でもいい!!!生徒指導室に来い!!!いいな!?」
体がおかしい。
過呼吸。
息が吸えない。
震えが止まらない。
「ぁ……ッ……ぁ……あッ……が……ッ………ッ……」
壊れたフイゴみたいな、変な音の咳が止まらない。
「霜夜さん!?」
「あいつ怒らせるから……!」
「大丈夫!?霜夜さん!!」
全く関わったことの無いクラスメイトが心配してくれている。
「ぁ……ぁ………」
怖い。人が怖い。
関わるべきじゃない。
私は文章に自分を託すべきじゃなかった。
人に何かを伝える手段に言葉を選んではいけなかった。
───もう誰とも関わりたくない。
◇◇◇
保健室のベッドで目が覚めた。
「………」
時刻は午後4時44分。下校の時刻を過ぎていた。
「…ッ───!!!」
あの生徒指導の教員の顔がフラッシュバックする。
「ぁ………ッ………」
頭が痛い。
また呼吸が乱れる。
「ッ………は……はッ………が……」
苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
辛い。
「たす……けて……」
何も無いところへ手を伸ばし、ベッドから転げ落ちる。
「いッ………た………ぁ…… 」
「───霜夜」
「ッ!!!?」
名前を呼ばれて、電流が走ったように体がビクンと跳ねる。
──担任だった。
「お前、あの反省文はどういうことだ」
「────」
───声が出ない。どういうことだと言われても。
「教師をバカにしているのか」
「────」
───バカにしたのはそっちが最初でしょ。
「仮病で保健室に逃げるとはな」
「───」
────仮病?
「書き直せ。“反省文”、原稿用紙20枚分」
───ああ、そうか。
伝わらないんだ。
私がどれだけ言葉を並べても。
どれだけ意味を言葉に込めても。
どれだけ自分の言いたいことを伝えようとしても。
────何も伝わらない。
伝える力が無かったのか。はたまた、相手がそれを理解しようとしないだけなのか。
どちらにせよ────
「───私が何を言っても無意味なのね………」
何か言ったところで意味が無い。
何を言っても無駄なんだ。
人は言葉を叫ぶことができるのに、言葉の意味を理解しようとすることができない。
──それが悲しかったのか、悔しかったのか。
───私は大粒の涙を流して、痛みを知った子供のように、大泣していた。
鞄は教室に置いたままだろうが、もうどうでもいい。貴重品は常に持ち歩く主義だ。鞄には学校に関するものしか入っていない。
保健室を出て、玄関で上履きを投げ捨てて外履きに履き替える。
無言のまま学校から帰る。
呼吸はまだ安定しない。
細い体を襲い続ける悪寒。
吐き気に耐えながら駅を目指す。
何度も何度も変な咳と嗚咽を漏らしながら家に帰る。
頭がクラクラする。
階段も登れそうにないほど視界が揺れる。
居間の畳へ倒れ込んだ。
「………。…………。………」
なんとか気持ちを落ち着かせようと、ゆっくり呼吸することを心がけて、静かな時間を過ごした。
◇◇◇
────体が痛い。制服のまま畳の上で眠ってしまっていた。
「……っ」
ありえないくらい体がだるい。ぐわんぐわんとまるで内側からハンマーで叩かれているかのように頭が痛む。
「……熱……あるわよね…」
体温計に手を伸ばす。
電源を入れると前回測った体温『34.7℃』という、私にとっての平熱が表示された。
意識を失いそうになりながら体温を測る。
「……38.9℃……」
言うまでもなく、私にとってこれはとてつもない高熱だった。
弱々しく息をしながら、階段を登り自分の部屋へと向かう。
「…流石に……ベッドで…寝たい…わ……」
ブレザーを脱ぎ捨て、リボンを外しブラウスの第1と第二ボタンを開けて布団に入る。
物凄く気持ちが悪い。
本当に死にそうだ。
「寝て……。…寝れば……治るわよね……?」
◇◇◇
次の日になっても、体調は良くならないままだった。
歪む視界。ぐちゃぐちゃな夢を見たような気がする。
「………休むしか…ないわね……」
学校に電話をかける。
「すみません……2年1組の霜夜蒼です……体調不良のため…今日は休みます……」
「そうですか。分かりました。伝えておきます」
電話を切り、寝込む。
「………喉…乾いたわね……」
布団から出る。少し寒い。
部屋を出る。不思議と少し楽になったような気がする。
ガラスのコップに水道水を入れて飲み干す。
「……お腹も空いたわ……」
何も食べてない。なにか簡単に用意しよう。
「……何も無い……」
冷蔵庫はほとんど空だった。
「………はぁ……流石に買い物に出かけようかしら。このままじゃ餓死しちゃいそうだし」
気持ち悪さを誤魔化す為にシャワーを浴びる。
「そういえば最近部屋着と制服しか着てなかったわね」
春休みの間、外出はアルバイト以外でせず、アルバイトにも制服で行っていたため、本当に久しぶりに私服のタンスを開いた。
「夏物………」
制服以外の衣替えの概念を失っていた蒼のタンスの中身は、去年の夏から変わっていなかった。
「まあいいわ。すぐ暑くなるでしょ。あとは上着で調節すればいい」
できるだけ寒くなさそうなフレアスカートを選び、適当な服を選んで上にカーディガンを羽織る。
「服も大して持ってないわね…」
ここ2年間くらい、まともに服を買いに行っていなかったかもしれない。
「……お母さんとお父さんに心配かけさせるわけにはいかないわ。元気に生きていかないと…」
元気でいること。それが母との約束だ。
「……お金も、有難く使わせてもらうわね」
あまりにも減らないと、また心配されてしまう。
まだ少し体がだるいが、家を出て駅に向かう。
ショッピングモールへ行き、そこの飲食店で食欲に身を任せとんかつ定食を注文。美人の店員さんに暖かい目で見守られながら完食。その後、服屋で春物の服を何着か購入。
途中で楽器屋をみかけ、吸い寄せられるように入ってしまう。色々あるせいで、ベース用の機材を見にきたはずが、色々見て周ってしまう。
「お嬢ちゃん、ギターに興味あるの?」
店員のお姉さんに話しかけられる。少し怖い。
「あ……いえ……私はベース以外は…。見てただけです」
「そうなんだ。ベース弾くの?」
「はい……まあ…」
「へぇ。どのくらいやってるの?」
「……始めたのは確か……小学生の中学年くらいなので……」
「ほぉ……で、今何歳?」
「…女性に年齢を聞かないでください……」
「あははは、ごめんごめん。でも、結構長いことやってるんでしょ?」
「そうですね。6、7年………」
「あら。年齢バレちゃったね」
「……忘れてください」
「…でも、それだけ続けてればそれなりに弾けるんじゃない?」
「…分かりません。家でひとりで弾いてるだけなので」
「えぇ、勿体無い。せっかくやるんだったら誰かに聴いてもらった方が良くない?」
「……そうですかね」
「そうだよ。音楽ってさ?自分が出したい音を出す、ってのももちろんあるけど、“誰かに聴いて欲しい”っていうのも絶対あると思うんだよね」
お姉さんは、壁にかけてあるギターを手に取り、椅子に座る。
「お嬢ちゃんさ。人と話すの苦手でしょ」
「………まあ、はい」
「やっぱりねー。“言葉”ってものがあんまり好きじゃなさそう」
「……当たりです」
「言葉ってさ。簡単に人の心を大幅に動かすことができちゃうんだよね。言葉ひとつで人を笑わせることができたり、その逆で、言葉ひとつで人を死に追いやったり。色々できちゃうわけ。でもさ───
────“音”は、人を傷つけないんだよね」
「………!!」
「不思議だよね~。こうやって、私がギター弾いてもさ。どれだけ怒りを込めて、どれだけ他人への不満や文句、最低な負の感情を込めながら音を出してもさ。人には、そこまで伝わらないわけよ。『怒ってんのかな』って、その程度しかない。むしろ、『ああ、いい音してんな』って、そう思ってもらえるわけ」
「………!」
「たとえ人を不快にさせる事があったとしても、それは、『下手くそ!聞くに耐えねーよ!』とか、逆に『私より上手いの腹立つ…』とか、あってもそのくらいなわけよ。音には人を傷つける程の刃がない。だから私は、音楽が好きなんだよね。聴くのもやるのも」
「………貴女みたいな人が、この世界にどれだけ居ますかね」
「さあ。私は私だけだからねぇ」
「……強いんですね」
「まあね。お嬢ちゃんもロックに生きてみたら?」
「ロックに……」
「辛いなら、高校なんてこれからも行かなくていいよ」
「……!!…なんで…知って…」
「なんでって、年齢バラしちゃったのはお嬢ちゃんの方じゃん。今日は金曜日だし、普通は学校あるよね」
「………まあ、はい…」
「学校行かなくても、できることは沢山あるよ。泣きたい時は泣きながら、辛い時は休みながら。好きに生きてみるのも“悪くない”よ。落ち着くまでゆっくりして、その時また学校行きたいかなって思えば行けばいいと思うし、その時、学校よりも大切なものが見つかれば、それに命かけて、スリル満点の最高の人生を送ればいいと思うな」
◇◇◇
「お母さん。しばらく学校休みたいの」
「…そう。分かったわ。無理しないで言ってくれてありがとう、蒼」
「お母さん……」
「本当にごめんなさい。こんな時、そばにいてあげるのが家族ってものなんでしょうけど」
「ううん。大丈夫よ。私は電話でも十分。お母さんも、あとお父さんも、仕事ばっかりで疲れたらちゃんと休んでね」
「ありがとう、蒼。元気でいるのよ」
「ええ。お母さんも、元気で」
電話を切り、ベッドに横になる。
「まずは風邪治して……元気になろう。お母さんとの約束だから」
何日か家で大人しく過ごした。ベースを弾いて、音楽を聴いて、それから、自炊の勉強をした。
「バイトもやろう。やっぱり、頼ってばかりは申し訳ないわ」
俯いてばかりなのもやめたい。前を向きたい。
前を向きたくて、変わろうとして、少し思いきって飲食店でアルバイトをしてみることにしたが、これは失敗だったかもしれない。少し調子に乗りすぎた。
「霜夜さん。お客様に失礼でしょ?もっとハキハキ喋れる?顔は笑顔で。ちゃんとしてよ」
「……すみません」
こんな叱責の後で笑えるわけがないでしょ。馬鹿なのかしら。そもそもそんな偽物の笑顔を誰が求めているというの?
不貞腐れながらバイトを続けた。
家でベースの音に想いをぶつける。
高校と大して変わらない。毎日、何も無いスカスカな日々を送る。
けれど、まだマシだった。ミスを叱られるのは私が悪いから。叱責にも理屈が通っている。それだけでもかなり楽だった。
辛い時は、音楽が助けてくれる。
「雨の日には…濡れて…晴れた日には、乾いて…」
大好きなバンドの大好きな曲を聴いて、口ずさむ。どんな理不尽が相手だとしても、それが特効薬になる。
ふとあの日のことを思い出しても、『最後に笑うのは正直な奴だけだ』というワンフレーズが私を支え続けた。
そうやって、4月、5月を乗り切った。
大それたことはしていないだろう。けれど、私は私なりに頑張ったつもりだ。そんな頑張りが報われたのか、6月の始め、私はこの人生での唯一の友達だった緋と再会した。
◇◇◇
「───という感じよ。…悪いわね。つまらないお話だったでしょ」
「ううん。ありがとう、蒼。辛いことも話してくれて」
「いいえ。私の方こそ、吐き出せた分だいぶ楽になったわ。ありがとう、みんな」
「話聞いただけだ。礼はいい」
「素直にお礼は受け取っていいのよ。“話をちゃんと聞いてくれる”って、本当に凄いことよ」
「そうか?」
「そうよ。黎もありがとう」
「いえ…。蒼さんは大切な仲間なので」
「…そうね。本当にありがとう。…仲間がいるって、凄く素敵なことね」
「うん」
「私にはScarletNightという居場所がある。…音楽という、気持ちを伝える手段がある。…緋と作ったこのバンドが、私の生きる意味なのよ。…だから、決着つけないといけないわね」
「決着?」
「…高校なんて辞めて、バンドにこの命を捧げるわ」
「蒼…」
「今更行く理由も無いもの。ちゃんと解放されておきたい」
「ん。…蒼、頑張ったね」
「緋……」
「それで、見てるかは分からないけど、見せつけてやればいいんだよ。これが私たちの生きる理由だって」
「ええ。…そうね!」
……To be continued




