5 決行準備
「とりあえず...水と片栗粉を混ぜて...」
「これは何を作ろうとしてるの~?」
「いうところ防御魔法かな」
「防御魔法ッスか?そんなものも使えるんッスか?」
「まあ,魔法ではないんだけどね」
「...魔法じゃない...てのはどういうこと~?」
「まあ今は気にしないでもいい。むしろ気にしてくれないほうが嬉しい。」
ダイラタンシーの検証をする。
「よし,じゃあこれもしっかり使えるか検証しないと」
「かなり柔いッスよ?こんなもので防御魔法の代替しようとしてるんッスか?」
ダイラタンシーを手に乗せて持ち上げるエラン。
「たしかにこれじゃあ防御はできなそうだよね~」
「これはこのままじゃたしかに守れそうにないけどこれはこうやるんだっ...よ!」
ダイラタンシーに強い力を加える。
「なにこれ~!?力を与えると固くなる~!?」
「これおもしろいッス!」
「あ,それでこの力を使って防御力を上げるんだね~!!」
「そういうこと。」
現実世界ではすでに,これを使って防弾チョッキなどを作れないかを模索中だそう。
「これを使って少しでも負傷を防いで,みんなで戦いに行く,これが作戦だよ。」
「言ってもこの程度じゃそんなに防げなそうだけどねぇ~...」
「そのために片栗粉を沢山用意してもらうんだ。しかも前起こした爆発は片栗粉でも同じことができる。つまり攻撃と防御の両方ができるってことだ。」
「これがあればなんとかなりそうだねぇ~」
「まあ,少しでも勝率を上げるためにこれから偵察に行ってこようと思う」
「透明化魔法もないのにッスか?」
「透明化が使える人を探してみるがいなそうなら使わずに何とかする」
「私は闇使いだから透明化に近い魔法なら使えるけど~...」
「使えるのか!?」
「ま,まぁ,認識阻害魔法を使えばそれっぽいことはできるかなって感じなだけだけど~...」
「それでもできるならやってもらいたい!」
――偵察の決行は今夜。夜が更けたころに始める。
「そろそろ,かな。――じゃあ,頼む,ベラン。」
「うん。感覚遮断」
「じゃあ,行ってくる。」
※
「ここがオークの村,か。」
明らかにここだけ雰囲気が違う。
「偵察のためといえ,こんなところにしばらくいないといけないなんて苦行が過ぎる。早く終わらせて帰ろう。」
~
村の中に不自然なように掘られた洞窟があった。
「なるほど,ここが住処だな。」
洞窟探索中,オーク達の会話が聞こえた。
「親方!そろそろ食料が尽きそうです!どう致しましょう!」
「近いうちにまたあの村にでも取りに行ってこい」
「はっ!了解しました!親方!」
(近いうちに村へ...?これは...早めに対策を取らないとダメかもしれない...)
大体の経路や洞窟内の状態についてわかったことだし,もう少しだけ情報が取れたら帰ろう。
~
――よし,ここまで情報収集できればもういいだろう。
そろそろ帰ろう。そう思ったその時。
「うぉっ!?」
――足元の小石に躓いた。
「――今,変な音しなかったか?」
監視役の一体らしきオークが言う。
(不味い,気づかれたか?)
「いや?気のせいじゃないか?」
もう一体のオークが言う。
(これなら行けるか?)
「いや,やっぱおかしいって。」
「うーん,そうか?」
帰ろうとしたその瞬間。
「お前!!誰だ!!」
――どうやら魔法の効力が切れたらしい。
えー。死ぬかもしれません。
「こういう時は...逃げるが勝ち!」
「お前!待て!!」
――あれ?追跡しないのか?
明らかに簡単に離れられてる感覚があった。
――もしかしてこいつらの動きって鈍い?
とはいえこの件を機に早く村に攻めてくるかもしれない。
これはすぐ帰って作戦実行したほうが良さそうだ。