4 異世界でも科学は通用する?
しばらくお世話になっているこの村で,ある噂を聞いた。
それは,最近オーク達がこの辺で暴れていて,この村にも被害が出るかもという内容だった。
「俺は...まだ弱いッス...」
「僕もそんなにできることなんてなぁ...この村にお世話になった分だけでも恩返しがしたいんだけど...」
「私の魔法なら少しはなんとかできるかもしれないけど~...」
「できるッスか!?」
「できるかも~って言ったでしょ~。確信は持てないよ~...」
「相手の強さもわからない以上なんともできない...か...」
「もしかして,オーク達を倒そうとでも考えてるの...?お願いだから,そんなこと考えないで...もう被害は出したくないの...」
(...そういえば,この世界でも現実世界の科学は通用するのだろうか...?もし使えるならなんとかできるかもしれない。)
「...あの,もしよろしければいいんですけど,小麦粉をちょっと頂けません?」
「...?小麦粉ならここに...」
「ちょっと外に出てきます」
「小麦粉をもって何をしに行くんッスか?」
「まぁ,ちょっとした魔法的なものを...」
~
村からそこそこ離れた場所。
ここなら村に被害は出ないだろう。
「ここで魔法の練習するの~?」
「まあ,村に少しでも被害が出たら困るからな。」
「そんなに被害がでる可能性がある魔法の練習ッスか?」
「そんなところ,かな。」
小麦粉を撒いて,風を起こし,火を近づける。
これが使えれば,この世界でも魔法を使えなくてもなんとかできるかもしれない。
「離れてろよ。」
順番通り行っていく。
火を近づけたその瞬間。
大きな爆発が起きた。
「...ッ!!粉塵爆発が...使えた...!」
「今のは一体何ッス!?」
「びっくりしたよ~!まさか蒼が爆魔法の使い手なんて!!」
「うーん,あってるとも違ってるとも言えないかな。」
この世界には”科学”の教養はないみたいだ。
でも,この世界でも現実の科学は通用する。
これなら,魔法が使えなくてもなんとかなる!
~
村から帰ってくると。
「聞いたぞ,お前さん!この村を助けようとしてくれてんだって?さっきの爆魔法もお前がやったんだって?」
「助けてくれるのはうれしいけど,無茶はしないでくれよ...?」
「無茶はしないつもりです。でも,これだけお世話になった村に恩返しも何もしないのは僕の心が許さないんです。」
「それで死んで帰ってきてもらっても困るからな...?別に俺たちは大...丈夫だ...。」
それってどう考えても大丈夫じゃない反応だよな。
「今日の夜,偵察に行ってこようと思います。」
「待ってくれ!お前さんはこの村に恩返ししたいと言っていたが,お前さんはこの村の外の人だとは思ってる。本来であればこれは私らでどうにかする問題だ。だから,本当にやっていただけるのなら,少しでも手伝わさせていただきたい。」
「それなら,小麦粉か木粉と片栗粉を沢山譲っていただけないですか?」
「小麦粉か?その程度なら全然出せるが...何をする気なんだ...?」
「まぁ,ちょっと討伐に使おうかなと思いまして。」
――僕がなんとかします。と心に誓って,夜を待った。
※粉塵爆発はここで出たもののほかにもいろいろあります。(小麦粉,片栗粉,木粉,砂糖,鉄粉,アルミ粉,石炭粉など)
大きな被害が出る場合もあります。
調べてしっかり対策しておきましょう。