第７１話 失敗した。
訳あって、しばらく休んでました。
久々になりますが続きです。
ということで、リスタートは深月と光からです。
＊
俺は、深月さんとハグを解いた。
「信じられないな……。夢かなんかじゃないのか。同じ気持ちだったのか」
「そっちだって……陽菜ねーのこと好きじゃないの……？」
「多分、俺が、陽菜さんに抱いている感情は、家族に対する感情に近い。リサにも似たような感情だ。
もしかしたら、人をこの感情を恋というのかもしれない。ただ、深月さんには特別の感情を抱いている」
「そっか！！」
「深月さんこそ、弟とどうなんだよ……そもそも付き合ってたりするの……？」
「付き合ってないよ。私も同じかな。すごくいい人だし、色々助けてもらった。でも、光くんに対する気持ちは特別なものだよ」
「え。そうなの？ でも、一緒に修学旅行、回っていたじゃんか」
「見てたの！？ あれは実くんに誘われたから一応行っただけ」
兄弟で同じ人を好きになる程、厄介なことはないな。
「と、とりあえず、連絡しなきゃ。この場所バレたらあれだし」
「そうだな……」
深月さんは弟にラインを送った。
「あれ……？ 実くん急用で来れなくなったみたい！！」
「とりあえず、一安心だな……」
いや。俺もやばい！！
陽菜さんが間違いに気がついてこの状況を見たら、俺……殺されちゃうじゃん！！
携帯を見ると、陽菜さんから、『ごめん。具合悪くなっちゃったから、行けなくなっちゃった』と連絡が来ていた
まじか！！
運が味方してくれているぞ！！
「陽菜ねーなんだって？ 大丈夫そう……？」
「うん……一応？？」
「よかった！！」
深月さんが近づいて来た。
上目遣いで、勘違いかもしれないが、発情期の動物のような表情をしていた。
「このくらいはいいんじゃない？？ 合宿とかでもしてたし、仲直りの儀式でいいでしょ？」
そういうと俺の体に腕を回してきた。
「まあ、仲直りの儀式だしな……」
「じゃあ、もう一回、抱いて？？ 別になんの問題もないでしょ？」
二人とも本当はわかっている。
問題があることは。山積みの問題だ。
でも、そんなことは考える余裕はなかった。
ただ、深月さんよ。
俺は『抱いて』はないぞ。
『抱きしめて』だろ？
さすが、深月さんと言ったところだな。
『いつか抱いてやるからな？？』
心なかでつぶやいて、俺は深月さんを強く抱きしめた。
「すごく……落ち着く。背中大きいね」
「そうか？」
「うん！ すごく安心する」
「……ならよかった」
深月さんは体を密着させてきた。
互いの心臓の鼓動がわかる、
一心同体になった気分だ。
さっきとは違って少しエロい気分になっていた。
『抱いて？』なんて言われれば意識してしまうだろう。
あたりまえだ。一度失った大切な存在だからな。
睡眠不足のせいもあるのかもしれない
完全に、反応してしまった。
「ねえ、当たってるよ？？」
「ごめん」
「大丈夫だから。このままいよ？」
「……いいのか？」
遠から、微かに、音聞こえ、キャンプファイヤーの火が見えた
「キャンプファイヤー始まったんだね！！ ねえ、踊らない？ 付き合ってなくても踊ることはいいんだよね？」
「……やったことないぞ？」
「ここなら、人いないよ。 人前苦手なんでしょ？」
「後悔するなよ？」
「しないよーー！！」
俺らは、微かに聞こえる音楽に合わせて、一緒にダンスをした。
手汗などを気にせず、ずっと握りたかった手を俺はずっと握っていた。
キャンプファイヤーが終わったのが見えたが、しばらく、俺らは話を続けていた。
消灯時間が過ぎそうだったので、先生達にバレないように深月さんと解散した。
バレないように歩くはずだったのに、俺は気がついたら、スキップと、鼻歌を歌いながらホテルの部屋に戻っていた。
部屋に戻ると、他の２人は寝ていた。
『おいおい！！ 聞いてくれよ！！ 深月さんが俺のこと好きだって！！』騒ぎたかったが、我慢はした。
俺も寝ることにした。
ふと、ベットの上で、冷静になった。
あれ……？？
これって正解だったのか？
陽菜さんのことを完全に忘れていた……。
これはやばいよな……
冷静になると、色々と陽菜さんとの思い出を思い出してきた。
陽菜さんは、ずっと俺を助けてくれた。
簡単に裏切ってしまった。
誰にも言えねえ……
双子の妹の方が好きなので、面倒見てくれた姉の方は振っておきます！！……
なんて言えねー。
それに、いつものメンバーも気まずいだろう。
でもさ、俺だって真摯に行動したよ？？
まさか、告白しようとしたら、目の前の人物が、『入れ変わってました！！』とかなくね……？？
それに……弟。
あいつ、死ぬほど、深月さんのこと気に入ってたよな……。
もし、弟がグレて引きこもったらどうしよう。
一条家終わりすぎだろ！！
兄は、コミュ障で、弟は引きこもりかよ。
あーーーーーー。
失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。俺は失敗した。失敗した。失敗した。失敗
ダメだ。
高安が道案内を間違はなかった【世界線】に行かないと……
そうさ！！
弟なんかいない、３pの世界線へ！！
そんなゲートに行けるはずだ！！
脳の使用率を上げれば、別の世界線に行けるかな……
まあ、とりあえず、寝よう。
そう思っても、興奮して寝れない。
体は、結構限界を迎えているはずなのに。
そんな時、深月さんからラインが来た。
「久しぶりにこのライン使う。なんか眠れない。少し話さない？」
「俺も眠れない」
俺らは、ラインでくだらない話をした。
「文字打つの疲れちゃった。もう寝る？ 私……声、聞きたくなっちゃった。さっきまでずっと一緒だったのにね」
「電話はあれだろ。みんなも寝てるし」
「そうだよね……。私のところもみんな寝てる。じゃあ、ベランダで電話しようよ？？」
「じゃあ、今からそっち行くのは？」
「死んじゃったら嫌だよ。あの時、本当に怖かったんだからね？」
「ごめん。今回は大丈夫だ」
「本当？？ じゃあ、ベランダで待ってるね」
平気で、女子部屋侵入するようになってしまった。
でも、好きな人が待ってるんだ。
死んでも行くに決まっているだろう。
前回の要領で、ベランダついた。
ベランダでは、深月さんがお菓子を食べながら俺を待っていた。
お菓子を食べながら、俺らはまた話をした。
話の内容なんて正直覚えてないし、くだらないものだ。
さっきも話したような同じ内容の繰り返しな気がする。
それでも、俺はこの非生産的な行為が楽しかった。
隣に陽菜さんがいることに罪悪感を感じ始めた瞬間、ガラガラと窓が空いた音がした。
俺は瞬時に、ノミより小さく体を丸めて、ベランダの隅に隠れた。
「あ！ 深月ちゃんも眠れないの〜〜？」
出て来たのは陽菜さんだった。
「わ！！ びっくりしたーー。陽菜ねーが眠れないなんて珍しいね」
「ちょっとね……。考え事っていうかね。人生って難しいね……。悪いことして反省中って感じ？？」
「そうなんだ……」
姉妹はそれ以上話さなかった。
互いに干渉せず、静かな時間が流れていった。
それにしても、陽菜さんには何かあったのか？
声質的に何かに悩んでいる感じだったけどな。
ま、まさか俺のことじゃないよね……
5分くらいすると、陽菜さんが部屋に戻った。
俺も体勢を元に戻した。
そのあとは、陽菜さんにバレないように話すことはしなかったが、俺らはくっ付いて綺麗な星空を眺めていた。
そして、気がついたら、また朝になっていた。
修学旅行よ……
頼むから寝させてくれ！！！！
3pへの世界線はここだったりして……
