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第61話 男の記憶力は曖昧だ

無事に停学期間も明けて、今日から学校である。


久々の学校は緊張するな。まだ1週間しか空いてないのにな。

散々通ってきた通学路も、いざ目の前にすると帰りたくなるな。


それでも頑張って教室に向かった。


教室に着くと、「ちゃんと来れたね〜〜!!」と先に来ていた陽菜さんが出迎えてくれた


「俺は赤ちゃんか。まあ、帰りたくなったのは否定できないが」

「子供の面倒はお姉さんに任せて!!」

「なんだそれ」


いつものメンバーも俺の席の周りに集まって賑やかになってきた。

とりあえず、久々の学校も無事に過ごせそうだ。


久々の授業も特に困ることがなかった。

前の学校では授業の時間が嫌いであったが、この学校の授業は好きなのかもしれないな。

最も、唐突にくる後ろからのシャーペンの攻撃で声を出さないようにするのが難しいが。


そういえば、授業で先生が、結構重要なことを言っていたな。

今回のテストでは、上位10名と下位10名の掲載が行われるらしい。


次の学期は俗に言う3年ゼロ学期。

そのためにも、勉強のモチベーション的に張り出したりするらしい。

そんなの効果あるのだろうか。


正直、テストの点を調整して、2位でもいいのではないかと考えたりもしたが、結局、この学校では深月さんを倒さないと、ダメであろう。

陰キャが名前を売るのは大変なんだよな。

張り出されることでより有名になるしな。


せっかく、頭の中に、『2位じゃダメなんですか?』とどっかで聞いたフレーズが浮かんできたが、今回は1位ではないとダメなんだ。


掲載か。これで陽菜さんの横に並べる男になれそうだしな。

これまでの俺だったら、びびって点数調整をしてたのかな。

俺も少し変わったな。


数学の先生も今回の独自問題は今まで以上の難易度だと興奮していた。

クラスの人は冷めた目で見ていたが、俺は少し楽しみだぞ。


その方が、俺的にはありがたいし。

満点が二人もでるのは面白くないであろう。


久々の午前の授業は普通に終わった。


昼休み。

俺はこの学校で、テスト期間を除き、初めて、図書室に向かわなかった。


ご飯を食べてどこにも行かないでいる俺を須子が不思議がっていた。


「あれ? 月城、今日はどっか行かないのか? いつも、用事あるって言ってたじゃないか?」

「もういいかな。用事は」


いざ声に出してみると、寂しいものだな。


「そうか。いいオカズがなかったか」

「そんなところだな」


深月さんって……オカズなのか?


「じゃあ、テスト勉強しとこうぜ!!」

「珍しいな」

「だって、10位以内に入ったらよ〜〜、名声得そうじゃないか!!」

「まあ、わかるが……」


俺……須子と同じ考えだったのか……

高安も含め勉強をしようとすると、いつものメンバーの女子がやってきた。


「じゃあ、みんなで一緒に勉強しようよ〜〜」


陽菜さんは、俺が行かなくなった理由はわかっている……よな?

でも、何も特に言ってこなかったな。


いつものメンバーで勉強していると周りの人は不思議に思いながらも、興味を持ち始めていた。

俺らにとっては当たり前の空間だが、1軍女子達が陰キャと仲良いんだからな。


気がつけば、段々と俺らの周りに人が集まってきて、クラスの勉強会が始まっていた。


クラスでも盛り上がって楽しかった。

もちろん、全員が参加したわけではない。

嫌いな奴もいるが、それを含めても、俺はこの空間が居心地が良かった。


俺らを中心にクラスがまとまった気がするな。

最も、陽菜さんとか数井さんとかのおかげであるが。


俺も、あまり話したことない人に勉強を聞かれたりもした。


俺ら1組は、中間テストまでは、昼休みは勉強会をすることになった。

先生達の張り出しにも、どうやら効果はあったようだ。



正直これはありがたい。


いきなり満点を取ったらみんなはすごくびっくりするだろう。

勉強している姿を見せるのは大事だ。

努力する姿を見せれば、満点とった時のみんなの評価も上がるだろう。



放課後は、陽菜さんは忙しくなければ、俺の家にゲームをやりにくるようになった。

もちろん一緒に帰るわけではいが、俺の家の最寄駅で待ち合わせて一緒に家に帰る。



「あ〜〜!! 惜しかった〜〜!! 次は勝てそう!!」

「まだまだだな」

「もう一試合!!」

「何度やっても結果は同じだぞ?」


陽菜さんのゲーム腕が段々上手くなってきて、正直焦っていることは内緒だ。

後で、練習しておかないとな。


「てか、勉強は大丈夫なのか? 前は教えてって言ってじゃん」

「それなりに授業は聞いているよ? 誰かさんが1週間いないから……ノート書いてくれないから眠くても我慢して……」

「あ。そうだよな。大丈夫か?」

「も〜〜。冗談だよ!! 優しいんだから。ムキにならなくて大丈夫だよ〜! あ! すきあり!!」


心配している俺を差し置いて、きちんとゲーム内で攻撃してきた。

まあ、器用なので、大丈夫だったが。


「うっわ〜〜。反射神経すごいね」

「今のは危なかったけどな」

「じゃあ、集中力を削げばいいのか!! ねえ、国語の教科書の150ページから音読してよ」

「教科書ないだろ?」

「ないよ!! 覚えてないの?」

「別に、覚えてるよ?」

「じゃあ、読んでよ!」


150ページってなんだっけと思いながら頭の中で思い出し、音読をしてあげた。


そうすると、陽菜さんは、急に、コントローラを置いて教科書を取ってきた。


「教科書あるじゃん!!」

「てか……全部あってるんだけど……」

「読んで欲しいって言ったの陽菜さんじゃん」

「そういうところだよ!! やっぱり普通の感覚と違うんだよ!!」

「えーー。大体1回見たら覚えるぞ……」

「すごいね。じゃあ、裸は容易に見せられないね。一回で覚えられたら悲しいし……。 何回もでも興奮してもらいたいし? だからベットの下やパソコンにエッチなのないのか!!もう頭の中にあります的な??」


いや。違うよ。

動画はちゃんと隠してあるよ。


俺だって、覚えられたら便利だと思うぞ。

ただ、なぜかそういう時の脳はうまく働いていないんだ。

瞳孔がおかしいのか覚えられないんだ。

『この動画面白そう!!』とポチッと押して、しばらくして、『前にも見たぞ?』と思うことが多々あるんだぞ??


まあ、そんなことは陽菜さんに言えないし……


「一体、何バカなこと言っている……」

「本当にすごいよね〜〜。でも、なんで、深月ちゃんとの区別もできないの?」

「人の区別は苦手なんだ。あんまり顔を見ないようにして過ごしてきてたし」


楽しい思い出は記憶に残りにくい。

合宿の時の陽菜さんや深月さんの顔は覚えているが、段々と薄れていく。


ただ、嫌な記憶は残りやすい。

例えば、深月さんの最後の顔の方が鮮明に覚えている。


だから、人の顔はあまり見ないんだ俺は。


「なるほどね〜〜!! まあ、続きやろ??」

「おう」


確かに区別できないのは二人に失礼だしな。


入れ替わっても区別できるようにしておこうっと。

苦手だな……


「ゲーム終わったら、少し勉強するか?」

「じゃあそうする!! 少し聞きたいところもあったし!!」


俺のせいで陽菜さんの成績を下げたくはないしな。

お勉強も少しはしておこう。




俺はテストまで、帰宅部のエースと自負できるような楽しい日々を過ごしていた。




深月は、光が停学処分になって1週間、一人で図書室にいた。


光に会いたくはないものの、体は光を待っていた。

物音するたびに、図書室の入り口を見てしまう自分にうんざりしていた。


光に対する怒りがあるものの、どこか忘れられない自分にうんざりもしていた。


いつもと違って一人ぼっちの図書室では、勉強もあまりはかどっていなかった。

一年生の時はずっと一人だったのに、なぜか一人が辛かった。


光が学校に復帰した日の昼休み、深月は少し興味本位で1組の教室を覗いてみた。


そこには、クラスの人に囲まれて楽しそうにしている光の姿があった。

光は自分との過去なんて何もなく、どうでも良かったんだなと改めて感じさせれられた。


嫌っているはずなのに、どうしても、苦しかった。

図書室向かったが、何も手に付かなかった。


元々、友達の少ない深月にとって、相談できる相手はいなかった。


普段なら姉に相談するところではあるが、陽菜は全てを知った上で、楽しそうに光と交流している。

その姿を見て何も言えなかった。


唯一、深月が連絡を取っている人物は、実であった。


実と深月は頻度は少ないもののラインは続いていた。

夜に、勉強の質問とかをしていた。


二人の距離は以前と比べ、タメ語になったものの、ほとんどプライベートの話はせず、事務的な関係ではあった。




テストも近くなったある日、実から誘われ、深月は一条家で、二人で勉強会をすることになった。


指定された場所に着くと、日本にあるとは思えないほどの大きな豪邸がたっていた。



「ようこそ。いらっしゃいました。早乙女 深月様でございますね。ごゆっくりしていってくださいませ」


大きな門の前で出迎えたのは、エリカだった。


深月は、エリカの圧倒的なオーラと、並外れたグラマラスなスタイルに見惚れていた。

そして深月は、どこかで見た顔だなと、じっとエリカを見つめていた。


「どうかされましたか……?」

「いえいえ!!そうじゃなくて……。すっごく綺麗な方だなって」

「早乙女様ほどではありません。今まで見た中で一番お綺麗ですよ。私はただの実様の専属の付き人です」

「そんなことないですよ……。それって……リサちゃんみたいな?」

「リサをご存じでしていたか。リサは出来の悪い妹です。何か失礼なことをしませんでしたか?」

「そうだったのですか!! リサちゃんはすごく優秀ですよ!!」


そんな会話をしていると、実が迎えにきた。


「わざわざ来てくれてありがとう!!」

「ごめんね。忙しいのに。誘ってくれてありがとう」

「ラインや電話だと教えるの難しいしね。大丈夫だよ!!さあ、入って!」


「お邪魔します!」


光のマンションや別荘とは比べものにならないくらい豪華であった。


映画のセットと言わんばかりの豪華なものが家の至る所に置いてある。


「やっぱり、一条家は広いお家だね」

「ここで育っちゃうと、感覚おかしくなるけどね。ただ、僕たちの金銭感覚はそこまでずれてはないとは思うんだけどね……」


大きな廊下を過ぎていくと、二つ部屋があった。


「片方は兄さんの部屋さ。見てみる? 何もないとは思うけどね」

「いや。大丈夫」

「じゃあ、とりあえず、どうぞ」



深月と実は特に雑談することはなく、黙々と勉強会を開始した。

実から指摘される点は、一人で勉強してきた深月にとって新鮮な情報が多かった。


そして、図書室の時間が無くなった深月にとって、人と勉強するのは久々の空間だった。


実と光がどこか似ているからか、昔を懐かしんだりもしていた。


あっという間に、2時間がたった。


「すごいよ!! この短期間で随分伸びたね!! やれる期間でやれること以上のことがでたんじゃないか。これなら兄さんに負けることはないと思うよ!」


「本当にありがとう。おかげで随分伸びた感じする」


「もともとのレベルが高かったからだよ!!」

「そうかな……。でも、今回のテストは今まで以上に大変って聞くし、心配……」

「そうだよね。数学の最後の問題とかは、僕の高校でも僕以外は無理だろうし、それ以外でも結構レベル高い問題が多いしね。でも、深月さんなら大丈夫だと思う。」

「優しいね。忙しいのにありがとう」

「全然気にしないで大丈夫だよ!!最近はそんな忙しくなかったし」


そう言った実の顔を見ると、目の下に大きなクマができていた。

よくよく見ると、結構疲れた顔をしていた。それに手には色々の訓練のせいか、マメがいっぱいであった。


そして、深月は会ってみると、実が自分に対して好意を寄せていることに薄々だが気がついた。


他の男子が放つ下心ある感じではなく、誠実な一途な思いを感じた。


傷ついた深月には、その思いが温かった。




ゲームをしていたら、気がついたらテスト当日になっていた。

まあ、特に勉強もしてないが大丈夫だろう。


さっさと、1位を取って、陽菜さんと一緒に登校しよう。

下校もしていいのかな?


第一科目の数学が開始して、60分の時間のうち45分が経過した。


そんな俺はまだ1問も解けていない。


どうしよう。


今回はマジでヤバイかもしれない……

ゲームばっかしてるから罰が当たったんだよ……

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久しぶりの更新おつかれさまです! 妹が弟になびいているようでそうでもないのか? 主人公の元に来ているのは実は姉を装った妹か? など色々読みながら考えてしまいましたw 投稿始まって以来主人公にとっては最…
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