第53話 俺は友達を裏切った
長くなってしまった……
最近は、更新頻度毎日じゃない分、長さで勝負です。(カッコつけ)
あと、「実は」という表記は、「じつは」とも「みのるは」とも読めて分かりずらいので、こっからは「みのるは」と読んでください!!
色々と考えた俺は、ゆっくりと、たこ焼きをやっている教室に戻った。
教室に着くと、何やらが騒がしかった。
どうやら、あいつら二人が帰らず、なぜか俺のクラスを利用してイチャモンをつけている。
どんだけクソ野郎なんだ。
森さんに文句を言いつつ、須子が森さんを庇っている。
最悪なことに、実行委員の俺は、こういう行為を止める義務がある。
クラスメイトも、俺が来たことで、実行委員が解決してくれるだろうと期待していた。
走って逃げたいところだが、仕方がないか。
「すいません。一旦、外にお願いします……」
「おお〜〜!! これは面白いね〜〜!!」
「今日は良い日ですな」
二人は従順に外に出た。
クラスの人は少し驚きながらも、仕事に戻った。
教室から少し離れた廊下で話すことにした。
「とりあえず、何があったかだけ……教えてください」
色々と厄介だ。
おそらく、この廊下での暴力行為はしないだろう。
表立ってやるほどバカではない。
俺だって、こいつらを殴りたい。
ただ、万が一、俺の体が動いても、俺も同様の立場だ。
ここで問題を起こすわけにいかない。
俺の状況は不利だ……
問題を聞いてみると特に、俺のクラスに問題はない。
森さんの顔を見たいと暴れていただけであった。
「なあ、過去をバラされたくなきゃ、あの女呼んでこい。まあ、オメーじゃ、呼ぶことすらキモがられるだろうが、仕事の一環でできるだろ〜よ!! アイツは顔がいいと思う。少し遊んでやろう。バラされたくなきゃ、さっさとしろ!!」
「本当に惨めですね。あなたは、我々と同じ土俵に立てない落ちこぼれ。弟さんが可哀想ですよ」
俺は、森さんを呼びたくはなかった。
この二人は危険だ。
森さんの配信活動にも影響するだろう。
俺はどうしたらいい?
バラされたら……全て失ってしまう。
でも、大切な友達だ……
死ぬほど考えた。
クズな俺は、友達を選べなかった。
「も、もりさん……ちょっと…いい?」
俺は森さんを呼んだ。
「……うん」
森さんは少し不安そうに近づいてきた。
そこにゆっくりと現れたのは、高安だった。
遠くで、問題を見ていたのだ。
そして、森さんに『来なくていいよ!』と叫んだ。
「あ? 誰だよ。オメー?」
そう言われると高安は、二人に向かって、殺気とは別の気迫みたいなものを放った。
おそらく、戦闘力は俺の方が上であろう。
ただ、何故か、いつもと雰囲気も違うからか、ものすごい恐怖を感じた。
もっとも、なぜか俺には安心感もあったが。
二人の方は、高安の気迫に若干押されていた。
「な、なあ、知ってるか?? 舐めるなよ? おれの父さんは政治家で、暴力団を動かし、お前なんてすぐに消せるぞ?」
高安は、爆笑した。
俺は、高安に「やめてたほうが……」と言うしかできなかった。
高安がやめたらどうなる?
高安は守れるかもしれないが、森さんが危険だ
正解は俺が犠牲になればいいことだ。
なのに……それができなかった。
「お面白いよ? これは」と高安は呑気であった。
ダメだ。高安。
こいつらは本物だ。
ナンバー3.は高安の写真を撮り、父親に送った.
「パパの力か。そういうのありなのか?」
「ありに決まっているだろ!! 」
高安が珍しく、爆笑をした。
「人って、怖いと笑うらしいぞ!! オメーもそれか?」
「別に!!」
高安は動じていない。
なぜだろう。
No.3は父親に電話をした。
「父さん!! 裏の力を使って、今送った奴の家族とかにかなりの嫌がらせをして欲しいんだけど!!」
「ごめん……」
俺は高安に謝ることしかできなかった。
「ん? 面白いからいいよ」
いや。いくらエンタメ好きと言っても……
龍上高校は上級国民も多いんだ。
ネタじゃなくてガチなんだ。
生きている世界が違うんだ。
家に帰ったらすぐに、高安の保護に死ぬほど金をかける。
ただ、それまでの間、いろいろな嫌がらせが起こるかもしれない。
家族に迷惑をかけてしまう。
ごめん。
金銭的な面でのフォローは全力でさせてもらう。
電話も終わり、二人はニヤニヤしている。
「親ガチャってのはあるんだよ!! ば〜か!! せいぜいお家で喚いてな!!」
「まあ、仕方ありませんよ。生きている身分が違うのでね」
二人は楽しそうだった。
「身分ね。面白いな」
急に、あいつのスマホに電話がかかってきた。
「父さん。どうした?」
なんと言っているかは聞こえなかったが、電話から怒鳴り声が聞こえた。
急に、顔が真っ青になっていた。
「え。本当ですか……は、はい……」
高安はニヤニヤしながら、「どうする?」とNo.3に聞いた。
「い、いや……」
「どうしました? 今、選挙前で忙しいとかですか?」
「黙ってろ!!」
珍しくナンバー3が2にキレた。
そして、No.3は冷や汗をめっちゃかきながら、「許してください……」と平謝りをした。
「次はないぞ?」
「はい……」
「じゃあ、消えて」
No.3は2を引っ張り消えた。
何があったかはわからない。
ここまでできる奴は俺の知る限り、数名しかいない。
なんとなく予想ができるが。
今はそんなことはどうでも良かった。
「あ、ありがとう……」
俺は心からお礼を言った。
「友達が困っていたら、助けるに決まっているだろ??」
高安はおそらく、カードの切り札を切ってくれた。
俺のことを友達と思ってくれていた。
俺は、こないだ感謝したはずだ。
なのに……
自分のために、友達を売った。
俺は一緒にいる資格はないのかもしれない。
こんな俺と仲良くしてくれたのに、
動きたくても、動けなかった。
人生で初めてできた友達だったのに。
最低だ。
追っ払ったことから、みんなも戻ってきた。
何があったかは、高安は言わなかった。
俺は、「ごめん……」と言って、少し早歩きでその場を立ち去った。
みんなは、少し心配そうに俺を見ていた。
そんなに見ないでくれ。
俺に友達の資格はないんだ。
とりあえず、目的もなく歩いていると、とある女子に声をかけられた。
「早乙女さんが……」
話を聞くに、どうやら、陽菜さんの具合が悪くなったらしい。
男子は運んでくれなくて、先生を呼びに行っている途中だったらしい。
何で今日はこんなに嫌なことが立て続けに起こるんだ。
周りは、『イケメンがいるらしいよ!!』と騒いでいる女子たちが呑気でウザいな。
俺は急いで、陽菜さんのところに向かった。
料理のエリアに着くと、陽菜さんのことなどを心配せず、男子どもは、体を触りたいという気持ちで、『運ぼうぜ?触っても大丈夫だろ?』と騒いでいる。
どいつもこいつもなんなんだ。
イライラしてきたな。
自分対しても、人間に対しても。
俺は陽菜さんをそっと持ち上げた。
「文化祭実行委員なんで失礼しますね」と声をかけたため、周りも何も言わなかった。
俺は立ち入り禁止エリアの階段を使い、保健室に向かった。
何回目かのお姫様抱っこをしたが、保健室は立ち入り禁止エリア付近にあるため、バレることはなかった。
保健室は1階にあり、ちょうどその場所は、編入試験の時にキスしたところだった。
そうだよな。
ここで、深月さんとキスして、色々始まって、友達もできて……
なのに…俺は何をしているんだ?
なんのために俺は編入したんだ?
「そうだよな。全てここから始まったんだ。リスタートしなきゃ、ダメだろう」
普段は声に出さず、考える俺だが、どこかで、声に出さないとトラウマを克服出来なかったのかもしれない。
珍しく、独り言で呟いた。
陽菜さんや深月さんだけではない。
学校生活を楽しむ。
そこに友達も必須だ。
俺はあいつらに仕返しすることを決心した。
友達を傷つけたんだ。
ああ。
やっと、イライラと体の指令が一致してきたぞ。
でも……今回は、少し怖さが残っている。
精神的なものだ。
龍上高校での、嫌な思い出が残っている。
どうなるかはわからない。
でも、俺はずっとやられてきたんだ。
さっきは高安が懲らしめてくれた。
ただ、これは俺が落とし前をつけないといけない問題だ。
やっぱり許せねえよな。
俺の大切なものを傷つけやがって。
不意打ちでもなんでもしてやるか。
怖い。
でも、やる。
歯の10本くらい折ってやらないとな。
いや、失明でもさせようかな。
とりあえず、陽菜さんを保健室に連れて行った。
保健室の先生がいなかった。
見た感じ、陽菜さんにヤバそうな症状は見られなかった。
ベットに寝かせ、俺は奴らを探しに行った。
フラフラ探していると、深月さんに出会った。
陽菜さんといる時は、深月さんがいそうなルートを避けていたが、今はあいつらを探すために違うルートを歩いているから出会ったようだ。
「あれーー!! 月城くんだ!!」
「おう」
「あれ? 陽菜ねーは?」
「ちょっと具合悪くて休んでる」
「そっか……。大丈夫かな」
「多分、休めば大丈夫であろう」
「そうだね!!」
このまま、できる男なら、『一緒に回る相手いないから回ろうぜ』的なことを言うのであろう。
俺は、陽菜さんが具合悪くなったから、深月さんと遊ぶのは違うと思う。
陽菜さんをバカにしている。
3人でまた、来年も別荘で楽しむんだ。
それに、俺にはやることがあるんだ。
友達を侮辱した奴に、落とし前つけないといけないんだからな。
「ごめん!!ちょっと、用事があるんだ」
「そっか!!じゃあねーー!!」
そう言って、深月さんと別れた。
ただ、俺はなぜか、深月さんを失ってしまう気がした。
再び探しにいくと、今度は鬼頭の取り巻きの一人に会った。
こいつは確か、俺に携帯をパクられた奴だな。
またしても、同じパターンか?
深月さんと話していたからか?
陽菜さんと勘違いしたか?
ただ、意外だな。
鬼頭を観察するに、結構、改心したように見えたのに。
心の底ではそんなことはなかったのか
でも、変だな。
やり合いたいなら、昨日でもよかったはずだ。
まあ、昨日は深月さんだと思ったとか?
よくわからないな。
とにかく今はそんな暇はないんだよ。
面倒だな。
そう思いながら、俺は取り巻きを睨みつけた。
「ち、違うんです……」
その様子から見るに戦闘意思は感じられなかった。
「別に敬語じゃなくていいよ。どうしたの?」
「あの……」
俺は取り巻きから、話を聞いた。
驚くべき内容だった。
「自慢できることではないです……。ただ、自分らはあなたと会ってから変わろうとしました。鬼頭さんは変わりました。そしたらあんな目に……。 図々しいことは承知してます……。ただ、助けていただけますか……」
俺には嘘をついているように思えなかった。
論理的にも矛盾はなかった。
もしこれが事実なら、鬼頭が危ない。
「大丈夫だ。あとは俺を信じて任せてくれ」
俺は、全力で保健室前に向かった。
*
光が陽菜を置いて、探しに行った頃、その一部始終を見ていた二人がいた。
「一体何があったのですか? 珍しく慌てていましたね」
「とりあえず、後で説明する。地雷を踏んだと思ってくれ」
「おいおい。 あれ、落ちこぼれじゃね? なんで、あの落ちこぼれが、あんないい子を抱いているんだ?」
「学校行事のスタッフの一環でしょう」
「でも、あんな落ちこぼれに頼むか?」
「はて。凡人のことはよくわかりませんよ」
「彼女のわけねーよな??」
「ありえないでしょう」
「だよな!! あんな落ちこぼれにいるわけねーよな」
「でも、金目当てという感じかもしれませんね。腐っても、一条家ですから」
「じゃあ、よう、あの女で遊んでも問題ないか?」
「それは面白そうですね。落ちこぼれは、本当に恋に落ちててショックを受けそうですし、弱いので反抗できない。女も女で、所詮は夜職のようなものですからね」
「いいね〜〜!!」
「はしゃぎすぎてはいけませんよ」
保健室のドアを開けて、二人は盛り上がっていた。
「おいおい。どこのバカか知らねーがやめておけ。手出さない方がいいぞ? 番犬に殺されるぞ」
そう言ったのは、取り巻きの一人と一緒に、真面目に警備の仕事をしている鬼頭であった。
「何言ってんだ?? あの落ちこぼれと仲良くしていた女だろ? 番犬? 何も怖くねえんだよ! お前も見掛け倒しか?」
「これだから偏差値が低いと困りますね」
「あ??」
鬼頭はいつもの癖で、一瞬、殺気をを放った。
「やるのか? まじで舐めるなよ? おれらは強いぞ? 」
「本当に、バカは困りますね。呆れますね」
一瞬イラついた鬼頭であったが、悪口を言われたからと言って、すぐに暴力に走るような男ではなくなっていた。
月城にやられていこう、自身が井の中の蛙であることを知った。
「別に、やり合いたいわけではねーよ。 ただ、このエリアは立ち入り禁止だ。出ていってくれねーか?」
「でかい割に、根性ねーな。まあ、あの落ちこぼれより弱そうだしな」
「あれに勝てないようでは雑魚とも呼べませんね」
「何言ってんだ?? 落ちこぼれって、月城のことだろ?? バカなのか?」
「そうに決まっているだろ〜〜!! 本当にバカそうだな見た目通り!!」
「やれやれ」
「お前ら正気か? 俺の直感が正しければ、お前らは、月城以下だぞ?」
「あんな落ちこぼれに負けるわけないだろ?? 」
「ムキにならないでください。彼にとっては大きさが強さだと思っているのです。我々がこの大きさレベルを倒して上にいることを知らないのですよ」
「なあ、そこの丁寧語。キャラなのか? ママに好かれようと必死な子供みたいだな。キモいぞ? ママのおっぱいでも飲んでろ。ママはブスっぽいけどな。早く消えろ!」
鬼頭の煽りは、No.2の地雷であった。
「お前、調子に乗るな!! ママの悪口を言うな!! 殺す!!」
顔を真っ赤にして、急に怒り出した。
「おいおい! これはやばいぞ〜〜!! 怒らせると怖いんだよ!! まあ、面白いからいいか〜〜!! 俺も参戦しよう!!! あまり人こなさそうだし!! さっきはスッキリできなかったし!!」
No.3もテンションが上がっていた。
先に手を出したのは、煽られたNo.2だった。
取り巻きに蹴りを入れた。
それを鬼頭が腕ではらい、止める。
「少しはやるようですね!! 次行きますよ」
「早くボコして〜よ〜〜!! さっきの脅されたのがスッキリしねーんだよ!!」
そう言って2人は、鬼頭に同時に攻撃を開始した。
決着は早かった。
鬼頭は少し時間はかかったものの、二人に勝利していた。
「嘘だろ……3番目に強いんだぞ……」
「2対1……だぞ……。わからない。何でこんな強い人が……」
「お前らが弱すぎだろ。これでも、手加減してやったんだ。まじで口だけか?」
「う、うるせーー」
「なぜ、あなたが……あの落ちこぼれを、恐れているかわからない……」
「は?? お前らが土俵に立ててないくらい弱いんだよ!! 雑魚が!!だから、相手にされてないに決まってるだろ?」
鬼頭は追い討ちはせず、床に倒れている二人を怒鳴りつけるだけだった。
無事に警備の仕事が終わった。
ただ、その状況を見ていた、人物が現れた。
「ねえ、何してるの?? 僕の知り合いなんだけど??」
振り返った時に、鬼頭は恐怖で声が出なくなってしまった。
その人物は、女子たちとの交流を終え、ある人物を探していた、一条実であった。
「実さん……。いらしていたのですか……。すいません。何もしてないのに、こいつが……」
「そうです……」
2人はプライドのために、咄嗟に嘘をついた。
「今日は用があってたまたまね。そうか。それは大変だったね」
実は鬼頭を睨んだ。
鬼頭は心の中で、『違う!!』と何度も叫んだ。
ただ、恐怖で声が出なかった。
鬼頭の取り巻きも、実を見て、月城に似た恐怖を感じ、声を出せなかった。
否定しない鬼頭を見て、「次はないって言ったよね?」といい、実は、長い足で、鬼頭の脇腹を骨には当てず、的確に臓器だけを蹴り飛ばした。
鬼頭は思いっきり飛ばされた。
意識が飛びそうになりながらも、気を保った。
「おお。やるね」
そんな様子を見た取り巻きは、鬼頭の敗北を直感し、どこにいるかもわからない月城に助けを求め、走ったのだった。
実は、痛みで動けずに倒れている鬼頭を気にせず、二人と話し、怪我の確認をし、帰宅させた。
「まあ、僕も暴力をしたいわけではないんだ。ただ、学校の人がやられているんだ。頂点立つものとして、学校の名誉も守らないといけないからね。前にもやられたからね」
鬼頭に話す余裕はなかった。
息をすることすら難しい状態だった。
「もうやらないかな?」
「……」
返事がしたいが、痛みで声が出ていない。
「そっか。反省なしか。じゃあ、次は少し強くするからね。 少しだけ怪我してもらうよ。 痛みを感じないと人は変われないからね。 肋骨数本で我慢してね。こないだの分もチャラにしてあげるから」
鬼頭は骨折することは確信していた。
さっきの威力でも意識を保つのが誠意一杯位だった。
それをさらに威力を上げられたら、ガードしても腕が折れてしまう。
月城にやられて以降、不便な生活を送っていた。
そのため、肋骨の方がマシだと考えた。
鬼頭は、自身の今までの行いが招いたこととして、現実を受け入れ、ガードをしなかった。
一条は蹴りを放った。
放った瞬間に、以前の蹴りの威力とは桁違いなことを直感した。
ああ。終わった。
全てを諦めた鬼頭の目の前に、ある人物が、スッと立った。
目の前には、片腕で、何事もなかったように、蹴りを止めた人物がいた。
「ありがとう。鬼頭くん。助かった」
月城であった。
取り巻きに言われなんとか間に合ったのであった。
主人公にボコられるという展開もなく、消えて行った……
小物すぎるだろう……
高安ってまさか……顔怖いしな……
鬼頭って、ちゃんと強かったんだ(驚き)
兄弟が異常なのか。




