第52話 文化祭 2日目
またしても、長くなってしまった……・
あっという間に、文化祭2日目がやってきた。
一応、かっこいい腕章をつけて準備万端だ。
まずは、クラスの方のに顔を出し、異常がないか確認。
特に異常はなかった。
今日は、昨日のメンバーとも異なり、色々変わるが、今のところは大丈夫そうだ。
あまり問題は起こさないでくれ。
俺が困るから。
ということで、今日は早めに、陽菜さんと回ってしまおう。
ただ、問題がある。
目立たない対策をどうしようかとすごく悩んでいる。
俺のスーパーウルトラな頭脳でも、アイディアが浮かばなかった。
だって、ほとんどの考えでは、陽菜さんに負担をかけてしまう。
目立ちたくないからといって、陽菜さんさんに色々とお願いするのは、男として違うであろう。
困ったものだ。
とりあえず、臨機応変に対応するしかないか。
腕章があるから大丈夫かな……?
同じクラスだし……?
それでも、文化祭で二人で歩いてたらな……
まあ、頑張ろう。
俺は、陽菜さんとの待ち合わせ場所に向かった。
人が来ないであろう待ち合わせ場所に着くと、陽菜さんが先に待っていた……?
あれ??
髪が長いぞ??
場所……間違えた……??
ラインをチェックしていると、確かに、合ってるよな……
どういうこと??
一旦、退散しようとしたところ、深月さんに見つかってしまった。
「あ!! 月城くんだーー!!」
「お、おう……」
あれれれ??
見つかりたくはなかったのにな。
だからわざわざ人が来ないところを集合場所に選んだのに。
「偶然じゃないでしょ? 待ち合わせ場所、ラインで送ってくれたじゃん!! 昨日は楽しかったねーー!!」
あれ?
やばいぞ。
俺ずっと、深月さんに送ってた??
言ってよ。深月さん!!
てか、陽菜さんボッチじゃん!!
でも、さっき見た時、陽菜さんにちゃんと送っていた気がするぞ?
てか、この深月さん……
よくよく見るとおかしいぞ??
だって、普通、腕章はつけるだろ??
腕章つけてないし。
まあ、腕章は違うとしても、深月さんなら、『送る相手違うよ』とか言いそうだよな……
この場所は、偶然にしては出来過ぎだろう。
もしかして……
試してみるか。
「深月さん。人もいないし、昨日の続きしようか」
「……え?」
「忘れたのか?」
「……忘れてないよ?」
「じゃあ、いいだろ?」
「……ダメ……じゃないかな?」
「まあ、いいから」
俺はゆっくりと深月さんに近づいた。
深月さんも無抵抗だった。
そして俺は、少し、髪をどかし首元を見た。
やっぱり。
ホクロの数が違う。
「どう? びっくりした? 陽菜さん」
「え。すご〜〜い!! よくわかったね!!」
「普通に騙されたは」
深月さんもうまかったが、陽菜さんもうまいな。
「いいでしょう!! てか、深月ちゃんと昨日何したの?」
「普通に、回っただけだぞ?」
まあ、ロッカーのことは……事故だしな。
「なんだ〜〜。キスでもしたのかとびっくりしたよ〜〜」
「するか!! 本当の深月さんなら、昨日の続きと言われても、何のことってなるだろうからな」
「策士だね〜〜!!」
「でも、何で、そんな格好なの?」
「どうせわたしと二人でいたら、目立つでしょ?? 深月ちゃんといても、実行委員として言い訳できそうじゃん!! 嫌だった?」
「逆。めっちゃ、ありがたい!!」
「わたしの案、完璧でしょ??」
「いや、腕章がないからダメだな」
「何それ〜〜! じゃあ、ちょうだい!!」
「それはダメだ。戦闘力が下がってしまうからな」
「そんな気に入ってるの?」
「まあな。色々あるのさ」
「いろいろか〜〜」
「てか、そんなウィッグ持ってたんだな。わざわざ買ったの?」
「違うよ〜〜!! 前から持ってたんだよ??」
「前って、最近?」
「ううん。去年に買ったんだよ〜〜。たまに、撮影で使うこともあるんだよ〜〜。ネットではあまり載せないけど」
「そうなのか……」
「どうしたの〜〜?」
「いや……何でもない」
俺の中で、色々な考えが頭の中を巡っていた。
まあ、確率が低すぎるな。
ということで、俺は髪の長い陽菜さんと文化祭を回ることになった。
昨日のように、フロアを歩いていると、やはり注目されてしまう。
が、
『昨日も一緒じゃね??』
『文化祭実行委員だろ。昨日も見廻りしていたしな』と、区別が付かないようなので、陽キャエリアを難なくクリアした。
本当にありがたい。
ただ、陽キャ達に言いたい。
この深月さん腕章つけてないよ??
やっぱり、腕章は大事じゃない?
わかっていないな全く。
これだから、陽キャは困るんだ。
まあ、生きている世界が違うのでいいか。
昨日とは異なり、食事中心ではなく、遊び中心だった。
深月さんと出くわすわけにはいかないしな。
まあ、深月さんは今は仕事の時間だし、仮にサボっていても、食事エリアにしか行かないであろう。
一年生のエリアとかでも、色々遊んでみた。
正直、学校の文化祭のレベルなんて、たかが知れていると思っていたが、結構楽しんでしまった。
やはり、陽菜さんのおかげもあるあろう。
とりあえず、一旦休憩することにした。
昨日の空き教室に再びお邪魔した。
「へえ〜〜!! ここいいね!!」
「まあ、実行委員ですからね。色々知ってますよ」
「ま、まさか……空き教室に二人っきり。権力を使って、エッチなことをしようとしてるな〜〜?」
「してないは!! てか、どんな権力だよ!!」
「冗談!冗談!! でも、月城くんが実行委員か〜〜! 意外だったな〜〜。でも、普通にやれているじゃん!!」
「自分でも、驚いている。みんながフォローしてくれたからだ。陽菜さんもいつも助けてくれて感謝してる。陽菜さんは大丈夫なの?」
「ちょっと、具合悪いけど大丈夫かな! 楽しいし!」
「無理するなよ。 結構文化祭準備とかで、頑張ってたしな」
「いいこと言って、えっちなことしようとしてるな〜〜?」
「何でそうなる」
「えへへ! でも本当に、病気治ってきたんじゃない?」
「どうだろう。自分ではよくわからない。 さっきのポーカーでもめっちゃ緊張したし」
俺らは、一年生のフロアで、ポーカーをやった。
金はかけないが、食券とか景品をかける独自のルールだった。
「確かに、表情と動き固かったね〜〜!!」
「そもそも、ギャンブルは苦手だ。それにあんなに、人に囲まれて、みんなの目線怖かったし。陽菜さんがあんなに強いとは思わなかったよ」
「わたしはギャンブル好きだよ〜〜!! スリルがワクワクする!!」
「将来が心配なんですけど……」
「掛けられなくなったら、月城くんから、200億くらい盗んじゃおうかな??」
「コミュ障の俺の代わりに、周りの人と通訳してくれるならいいぞ?」
「まあ、預かるだけだしね?」
「犯罪ですよ奥さん」
「あらら〜〜」
その後もくだらない話をして楽しんだ。
そういえば、最近は忙しくて、陽菜さんとはゆっくり話せなかったな。
それなりの時間が経った。話したいことはそれなりに話し終わった。
「じゃあ、もう一度回ってみるか?」
「そうだね!!」
俺らは空き教室を出て、再び回ることにした。
しばらく歩いていると、「ああ!! 月城くん!! ちょうどいいところにいた!!」と数井さんが少し焦った様子で声をかけてきた。
「どうもーー!!」
陽菜さんは、普通に数井さんに、深月さんとして接した。
正直、数井さんにならバレても大丈夫ではあるが、周りの人もいるし、ここでネタバラシをするわけにはいかないか。
ただ、笑いそうになるからやめてほしいものだ。
「あれ? 深月ちゃんと一緒だっけ? この時間。まあいいか。てか、陽菜を見つけたら言っといて。 さっきから既読つかなくて」
そういえば、携帯見ていなかったな。
「で、どうしたの?」
数井さんが色々と説明してくれた。
クラスのたこ焼きの料理がうまくいっていないらしい。
接客もメンバーが変わりうまくいかず、森さんや須子が入ってくれたりしたそうだ。
陽菜さんにも料理のヘルプに入って欲しくて探してるそうだ。
「じゃあ、よろしくね!月城くん! 」
「わざわざごめん」
「いいよ!そんなの!! てか、高安くんがいつもの格好になって、学校歩ってるんだけど、誰も気が付かないんだよ!!」
「それは見てみたいな」
まあ、数井さんも、陽菜さんに気がついてないけどな?
「じゃあ、バイバイ! 深月ちゃんもバイバイ!」
「バイバーーイ!!」
数井さんは去っていった。
「……どうする?」
「高安くんを見てみたい。どっちがうまく別人になれているか勝負しないと」
「いやそうではなくて……」
「わかってるよ〜〜! わたしも料理のところに行こうかな せっかく楽しいところだったのにね」
「別に、陽菜さんに義務はないんじゃないか?」
「まあ、仕方ないっしょ!! それに、実行委員も遊んでるわけにいかないでしょ?」
「それもそうなんだよな……」
昨日過ごした深月さんとの時間より短くなってしまった。
不平等は良くないだろう。
「後夜祭……来れないの?」
時間的には後夜祭に参加すれば平等であろう。
ただ、参加と不参加は違う。
どこかで埋め合わせはしないとな。
「忙しいんだ。ただ、もし嫌でなければ、また誘ってほしい」
「いつでも誘うから!! じゃあ、行ってくるね!!」
「無理すんなよ」
「うん!」
陽菜さんはトイレに行き、髪を戻し、料理の援助に向かった。
陽菜さんとの時間は終わった。
俺は教室に戻り、偉そうに、それなりに指示をした。
1日目のメンバーがヘルプしたおかげでうまく回っていた。
特に、俺が責められることもなかった。
とりあえず、教室を出て、ふらふらしていると、後ろから声をかけられた。
「おお!! マジか!!」
「これはこれは奇遇ですね!! あの、落ちこぼれがこんなところにいるなんて!!」
体が急激に硬直してきた。
ああ。わかっていた。
頭ではわかっていた。
文化祭だもんな。
声をかけてきたのは、前の学校のNo.2と3である。
荒い口調の奴が、No.3で、丁寧な口調の奴がNo.2である。
名前は嫌いすぎて、覚えていない。
覚えているが、思い出したくもない。
「ど、ども……」
「そう、固くなるなよ〜〜。いや〜〜久々だな〜〜!!いつぶりか? ああ!! お前が醜態を晒して、家に追い出された時か??」
「あまり、人を馬鹿にするでないぞ。彼は、弟と違い才能がない落ちこぼれなんだ。人には人の限界がある」
「キャハハは!!オメーの方がひでーこと言ってぞ?」
「あらあら。これは失敬。まあ、勉強はできるようですが?」
「どうせこいつはな、親の金の力で解答でも見てるんだろう。オメーもそう思っているんだろ?
「あらら。 バレてしまいましたか。 それしか有り得ませんね。落ちこぼれが、あの天才の弟を超えれるわけありませんしね」
「なあ、何黙っているんだ??」
「別に……」
本当なら殺してやりたい。
ただ、力も出ないし、こいつらは色々と危険だ。
何を言われるか、されるかわからない。
「何一丁前に、腕章なんてつけてるんだ? 学校行事に参加してるのか? お前の落ちこぼれ度合い知らないのか?」
「まあ、ここの学校のレベルは低い。致し方ありませんよ」
「暇だし、少し遊ぼうぜ? ……月城? 変な名前だな!!」
No.3は俺の腕章の名前を見た。
「これはこれは面白いですね。一条家を名乗るのが恥ずかしいから、旧姓を使わせられたのですか」
「ちょっと……忙しいので……」
ああ。
俺の体がおかしい。
「この学校のやつは知ってんのか?? 落ちこぼれってことをよお!! それはそれはマヌケで無様だったよなあ? バラしてもいいんだぜ?」
「……」
ダメだ。従わないと。
俺の学校生活が終わる……
俺は、人がこなさそうな場所に連れて行かれた。
「あまり遊ぶではないぞ。いつ人が来るかわからないからな」
「へいへ〜い!! なあ、久々にサンドバックになれよ!!」
「まあ、」それですと、犯罪になりますよ。 いつも通り、練習にしませんと」
「そうだったな〜〜。じゃあ、格闘技の練習ってことで! 骨格もほぼ同じだしな!! まあ、いつも通り、ガードもできずにやられるんだろ〜けどな!」
No.2は俺より少し大きい。
No.3は同じくらいだ。
このまま、正直やり返したいが、いつも通りに体に全く力が入らない。
無抵抗のまま、俺は殴られ蹴られ続けた。
何だか、体育祭を思い出すな。
陽菜さん。
俺は、成長していなかったよ。
何とか、サンドバックの時間が終わった。
「おおごとにならねーように、見えないところの打撲にしたからな!! まあ、日本のNo.3の力じゃ、死ぬかもだけどな!!」
「あくまで、格闘技の練習による不慮の事故ですね」
二人は満足そうに消えていった。
俺はしばらく、その場に座っていた。
別に痛いから動けないというわけではない。
今までの自分が何をしていたのか振り返っていた。
成長とは何なのかゆっくり考えていた。
*
光が座っていた頃、学校の玄関には、女子の人だかりができていた。
女子同士のラインやSNSなどで、すぐさまに、情報が拡散されていた。
『超絶イケメンが現れた!!』と。
そんな中、女子の群衆の中で、少し威張る人物がいた。
2組の陽キャ女子の2人だった。
「お久しぶりです!! 一条さん!!」
実は二人を見て、「遠足の時以来だね!! 久しぶり!!」と優しく声をかけた。
周りの女子たちは年齢問わず、自分の出し物に誘導した。
「今日は用があってきたんだけど、まあ、少しは交流をしておこうかな」
そういうと、ハーレムを作りながら、各教室を回っていった。
No.2と3には嫌いな人の名前でもあてておいてください。
(べ、別に…考えるのが面倒とかじゃないんだからね!!)




