第51話 文化祭1日目
ちょっと長くなってしまった……。
とうとうやっていきた文化祭1日目
文化祭実行委員には、腕章が配られた。
おお!! なんかすごくかっこいい!!
別にデザインは一般的な普通のものであるが。
ただ、このような経験をしたことがなかったため、本当に嬉しい。
ちゃんと学校行事に参加している感じだ!!
誰もいない鏡の前で、ポージングを取ってみたりした。
この腕章は、俺の右腕の真の力を封印しているのかもしれないな。
ただ、文化祭に関しては許せないこともある。
俺らの仕事は、準備とか言っていたくせに、人数不足のため、文化祭実行委員として、文化祭当日も少し仕事をさせられるのだ。
腕章がなかったら、殺していたところだ。
まあ、結果的に、深月さんと過ごせるので、許してやるか。
今日はクラスの方は数井さんに任せておこう。
明日は、俺がクラスをメインで引っ張っていかないといけないな。
文化祭開始時刻となった。
いよいよ始まった。
始めの1時間は、俺と深月さんは、プラカードを持っているだけの仕事だった。
おじさん達は無駄に深月さんに声を掛けていた。
深月さんは、ちゃんとおじさん達を捌いていた。
てか、おじさんって文化祭に来れるんだ。知らなかった。
まあ、保護者の可能性もあるのか。
1時間も深月さんと過ごすと、あっという間であった。
すぐに交代だ。
次の仕事も特に大したことはない。
かっこいい腕章をつけながら、各フロアを巡回して、問題があったら相談に乗るというものである。
正直、コミュ障の俺は声をかけられても困るが、深月さんがいるから大丈夫であろう。
実際に、男女問わず、俺ではなく、深月さんに声をかけて、色々質問している。
俺のことを、深月さんの横にあるゴミとしか思っていないから安心だ。
フロアを見回りしていると、本当に男女で回る人が多かった。
学校でそこそこ有名なカップルも一緒に回っている。
そんな異質な空間を、俺は深月さんと一緒に歩く。
二年生のエリアを歩いていると、やはり注目されてしまう。
『おいおい。まじか?』
『早乙女さんの妹の方だろ? あいつ彼氏なの?』
『あんなやついたっけ?』
と陽キャ共の対象になってしまった。
本当に困ったものだ。
ただ、ここで、腕章が役に立った。
『あれじゃない? 文化祭の実行委員なんだよ!!』
『そうか!!』
みんなそうやって解釈してくれた。
もちろん当たっているのだがな。
誰も、俺が早乙女姉妹に誘われたと思ってはいないであろう。
腕章は本当にありがたい。
てか、この調子だと……明日の陽菜さんはどうしよう……
俺の腕章はいいとして……
鬼頭あたりをボコして、腕章を奪うか??
まあ、それは冗談として、明日までに対策考えておかないとな。
二人は本当に目立つからな。
無事にフロアの巡回も終わった。
こっからは俺らは休憩だ。
「じゃあ、見てまわろ!!」
「おう」
俺らはこのまま腕章を取らずに、回ることにした。
いつでも言い訳できるようにするためである。
まずは、二年生のフロアを回ることにした。
俺は自分のクラスには行かなかった。
この状態を、陽菜さんに見せる気はなかった。
なんだか、見せたくなかった。
同様に、明日は、俺は2組に行く気はなかった。
二人にとってはどうでもいいことだろう。
俺も、なんのためにそうしているのかはわからないが、そうした方がいいと思っただけだ。
ただ、深月さんも、たこ焼きの美味しそうな匂いがしているのに、行きたいとは言わなかった。
1組を通り過ぎると、深月さんのクラスの【メイド喫茶】の前を通った。
「深月!! 利用していかないの〜〜??」
深月さんは、2組の陽キャ女子に声をかけられていた。
メイド服と化粧でよくわからないけど、この人……遠足で深月さんと班が一緒だったうちの一人じゃないかな。
「どうする??」
深月さんは俺に聞いてきた。
二人でいるところを、同じクラスの人と見られてもいいのだろうか。
2組とは授業でも結構一緒になるし……
でも、せっかく思い出作りのために、一緒に回ることにしたのに、何もしないのも、違うしな。
んーー。悩むな。
なんて答えていいかわからなかったので、「別に俺はどっちでもいいぞ?」と答えておいた。
陽キャ女子は俺の腕章を見て「あ、今……忙しい感じ??」と少し心配していた。
やはり、プライベートで一緒だとは思われないようだ。
そもそも、このペアが一緒にいる時点でおかしいもんな。
なら、大丈夫か。
深月さんも、入ることにしたようだ。
「忙しくない!! じゃあ、入ろ??」
「お、おう……」
「文化祭実行委員に利用してもらえるとはいいね〜〜!!」
陽キャ女子はテンションが上がっている。
文化祭で一番売れたところに賞金が配られる。
そして、その他にも、投票で人気だったクラスには、特別賞などなどもあるようだ。
そこでは、文化祭実行委員は自分のクラスに票を入れられないものの、一票ではなく、10票持っているのだ。
一人一票なんてバカみたいな話だな!!
憲法14条なんて関係ないのさ!!
俺様は上級国民になったのだ!!
ハハハ!!
まあ、散々こき使われたからな。
ゆっくりと、後夜祭を楽しませてもらおうか。
あ。俺行かないんだった。
とにかく、実行委員の俺は、他クラスにとって太客なのである。
とりあえず、「2名入りま〜〜す!!」と軽いノリで案内された。
教室の中は、かなり繁盛していた。
他クラスの男子や、先輩や後輩の男子が多かった。
他校の生徒や、おじさんたちも多かったな。
俺らが入った後すぐに満席になり、行列ができていた。
メイド服を着た女子たちがいっぱいいるぞ。
家で死ぬほど見ている俺でさえ新鮮に感じる。
同級生の姿だからかな。
他の人にとっては、異世界そのもであろう。
クラスの中で働いている人達も、深月さんと一緒にいる俺を見てびっくりしていたが、腕章を見て納得していた。
まあ、深月さんが太客を連れてきたと2組の人は思っているのであろう。
深月さんを、いただき女子みたいに思うのはやめて欲しいものだ。
え。
もしかして……深月さん賞金欲しさに長期的計画を……
まあ、大丈夫であろう。
俺と深月さんは2人席に案内された。
「深月きてくれたの〜〜!! 楽しんで行ってくださ〜〜い!」
またしても、陽キャ女子がメイド服で接客してきた。
あれ。
こいつも、遠足にいたような気がするな。
「あれ〜〜? ねえ、どっかで会わなかった〜〜?」
俺はなぜか陽キャ女子に声を掛けられた。
「え……そんなことないと思うんですけど……」
マズイな。
遠足の時に尾行していたのバレたかもしれないな。
知らないふりを通すしかないよな。
「え〜〜! そっか〜〜。でも、どっかで見たような気がするんだよな〜〜。誰かに雰囲気が似ているんだけどな……。ん〜〜」
深月さんが、「それは隣のクラスだから見たことあるでしょ!! それに、体育祭で足速かった人だよーー??」と俺の紹介をしてくれた。
「あ〜〜!! だからか〜〜! 勝手に知り合いになってたは〜〜!!ごめん!!」と軽いノリで終わった。
「あ、大丈夫です」
やはり、陽キャの生態はよくわからないな。
どっかに図鑑とか売ってないのかな。
流石に、俺と弟は違いすぎるから、似ていることはあり得ないであろう。
深月さんの言うとおり、体育祭で覚えられたんだな。
あと怖いから、これからはもう少し尾行を上手くしておこう。
「じゃあ、楽しんでね〜〜」
「うん!!」
深月さんは相変わらずメニューと睨めっこしている。
正直、俺は食欲がない。
さっきから、男子の視線が痛い。
それはそうだな。
いくら、実行委員とはいえ、二人で利用しているんだ。
しかも、学校1の美女のうちの一人と。
俺は、それなりの額で、すぐに帰れそうな抹茶ラテを頼んだ
深月さんは相変わらず、ガッツリしたもオムライスを頼んでいた。
おい……。
まあ、仕方ないな。
注文をとった、陽キャ女子が深月さんに声をかけた。
「てかさ、深月着替えないの?? 接待しないと〜〜!! 文化祭実行委員の票は大切だよ??」
「それもいいかもね」
「いいんじゃないか? 着替えなくて……」
俺は元々票を入れるなら、2組にしようと思っていた。
どうせ1組には入れられないしな。
「着替えてくる!!」
えーー。
俺が待っている間、深月さんは更衣室に行き、メイド服に着替えてきた。
そして、席に戻ってきた。
「かわいい〜〜!! ちゃんと実行委員を接待してね〜〜」
「ありがと!! うん!!」
そんな、いかがわしい接待を受けてしまったら……
わざわざ女子をメイド服に着替えさせて、接待させたなんて週刊誌にバレてしまったら……
まあ、大丈夫か
いやいや。
なんか俺だけ個別のメイドを目の前に座らせている変態になったぞ??
周りの奴なんてメニュー探しているぞ。
違う。違う。
裏メニューとかじゃないよ。
事故だって……
深月さんのメイド服は、リサで見慣れている俺でさえ、普通に心動かされる。
深月さんがメイド服で、廊下を通っただけで、一気に列が増えたような気がする。
周りの席のやつも、みんな深月さんを見ている。
ちょっと、2組の女子が可哀想でもあるな。
「どう??」
深月さん。
ここは学校なんだ……
やめてくれ。
まあ、今はガヤガヤしているからいいか。
とりあえず、俺は小声で、『いいんじゃないか』と答えておいた。
「まあ、メイド服は見慣れてると思うけどねーー!!」
そう深月さんがいった時、教室はすごく静かだった。
会話が丸聞こえになってしまった。
おそらくわざとではない。
たまに起こる、急に静かになって、会話が丸聞こえする状況だった。
ああーーーもう!!
何してくれてんの?
周りもびっくりしてるぞ??
おい!!
俺はメイド喫茶好きな変態になってしまったではないか!!
みんなリサの存在を知らないんだよ!!
男子からの呆れた視線が痛い。
ささっと、ラテを飲み干し、深月さんのオムライスを食べるのをソワソワして待って、なんとか脱出。
一応、ラテが美味しかったため、『票は入れる』と言っておいた。
深月さんも制服に戻った。
その後は、流石に男子からの視線が怖いので、俺と深月さんは一年生のエリアに移動した。
流石に、先輩にガン飛ばす連中いないだろう。
一年生のフロアでは色々楽しんだ。
もちろん、もらっていた無料券で!!
と言っても、ほとんど深月さんの食事代に消えていったが。
個人的には祭り同様に、チョコバナナを食べてくれたので満足だ。
三年生のエリアを回りつつ、一通り、回り終わってしまった。
そこで、立ち入り禁止エリアにある、奥の小さな教室で休むことにした。
誰も来ないから安心だ。
ちょっと、深月さんをおいて、出かけることにした。
俺は自分のクラスで、たこ焼きを買った。
クラスの売り上げに貢献するためにも必要なことだ。
クラスの様子も見たかったし。
特に問題はなさそうだった。
戻ると、深月さんは大人しく待っていた。
「これ……食うか?」
「いいのーー!? じゃあ、一緒に食べよーー!!」
爪楊枝が一つしかなかった。
俺は甘いやつを、深月さんは普通のやつを、一つの爪楊枝で、間接キスなどは気にせず、交互に食べた。
俺にはちょっと、聞きたいことがあった。
「なあ……」
「何?」
「明日……接客するのか?」
「しないよ? なんで?」
「そうか。まあ、ただの興味だ」
「似合ってなかった……?」
いや。
逆だ。
メイド服姿を、他のやつに見せたくないんだ。
なんて誤魔化そうかな。
「違うさ。似合ってたよ」
「ほんと?」
「ああ。だから、着られると、うちのクラスが勝てなくなてしまうから困ったなと思ってさ」
「そっかーー!! 着ちゃおうかな??」
「え」
「うそうそ!! 着ないよ!!」
このように落ち着いて会話をしたいと思っていると、外から声が聞こえた。
え?
立ち入り禁止だろ??
俺が言えることでもないけどさ。
やばいやばい。
人がくるぞ。
流石に二人で居るのバレたら、怪しいだろ。
使ってない掃除用ロッカーがあった。
俺はそこに隠れることにした。
深月さん一人だけなら、大丈夫であろう。
うまく誤魔化してくれるはずだ。
俺はロッカーに入った。
すると、なぜか深月さんも入ってきた。
え?
なんで?
狭いんだけど……
体と体が密着してしまう。
完全に胸当たっているし……
俺は小さな声で話しかけた
「なんで……?」
「入れってことじゃないの?」
深月さんも小さな声で返事をした。
「いや……俺だけ入ればよくね……狭いし」
「そうだったのーー」
「だって、狭いだろ……」
「でも…今から出るわけにはいかないよね」
確かにそうだ。
外からの声が近づいてくる。
「しばらくは……我慢してくれ……」
近いな。
顔も近いし。
胸も完全に当たってるし、押しつぶされているぞ。
いい匂いもするし。
カラオケを思い出すからやめてくれ……
「ねえ、ひざ……もう少し伸ばせる? ちょっと当たっているというか……」
深月さんが申し訳なさそうに声を掛けてきた。
ごめん。深月さん。
体は正直なんだ。
わかっているよ。
俺のが大きくなって、深月さんの柔らかい太ももに当たっているのが。
太ももだから気づかれないかと思っていたが、ダメだったか。
「本当にごめん……」
「ん?」
「ひざじゃないんだ……」
「ん? 携帯?」
「……夏休みのプールを思い出してくれ」
「あ……」
「本当にごめん」
普通に避けたり、暴れたりして、隠れた意味がなくなるのかと思ったが、意外にも深月さんは落ち着いていた。
逆に、気のせいか、少し、太ももを擦り始めた。
おいおい。
追い打ちかけてどうするんだ?
ああ。柔らかいな。
「大丈夫だよ……」
「ごめん。本当はすぐに離れたいんだけど…」
「離れなくて大丈夫だよ。自然現象だからね。やっぱり……硬いんだね」
「やっぱり??」
「……なんでもない」
「本当にごめん。あとで、太もも洗ってくれ……」
「なんで…太もも?」
「え、当たっていやだろうから…」
「……。太ももじゃないよ? ……当たっているとこ」
え?
確かに、俺と深月さんは正面を向いているけど……
この位置ってまさか?
めちゃくちゃ柔らかいのって……
え?
流石に違うよな
え?
俺は下を向こうとした。
「だめ。……見ないで?」
深月さんに頭で阻止された。
「ああ。ごめん」
収まるどころか、高度経済成長を果たした。
深月さんは優しいな。
普通だったら殺されているぞ。
結局教室には来なかった。
よくよく聞いてみると、聞き覚えのある声だった。
先生達がただ、このスペースを通っただけであった。
とりあえず、ロッカーから出て、少し休んで俺らは仕事に戻った。
もちろん、同じ仕事なので、その後も深月さんと一緒に過ごしたが。
あっという間に文化祭の1日目は終わり、深月さんと解散し、クラスに戻った。
楽しかったな。
平和はここまで!!




