第50話 一緒に回らない??
今回はサクッとです。
今日はとうとう文化祭前日。
最後にクラスの方の準備があるので、朝早く、陽菜さんと登校だ。
駅の改札で待ち合わせして、そのまま登校するという、ちょっとチャラい行動にも随分慣れてしまったな。
陽菜さんと一緒だと、一人の時より学校への道が短く感じるな。
「もう明日だね〜〜!! あっという間だったね〜〜!!」
「本当にそうだよな」
「そういえば、一緒に文化祭回る人いるの〜〜?」
嫌な予感だ。
俺は、勘違いクズ男だからな。
きっと俺の勘違いであろう。
「状況次第では……ボッチの可能性が高いな…」
「須子くんや高安くんもクラスので忙しいし、時間合わないんでしょ??」
「そうなんだよな」
「……ねえ、わたしと、後夜祭も含めて、一緒に回らない?? 」
ああ。やっぱりか。
いや。いいことなんだよ??
すごく嬉しいよ??
ただ……昨日の放課後……
俺は深月さんに、全く同じ誘われ方をしていたのだ。
一卵性よ。
そこで揃えてくるなよ。
昨日の段階で、深月さんに『行こう!!』と即答しても良かった。
ただ、俺は、「ちょっと後で、予定確認させて。明日には返事するね」と留保したのだ。
こうなりそうな予感もしていた。
なにしろ俺は、勘違い男だからな。
結果として、勘違いではなかったから許してほしいものだ。
片方を優先してはいけない気がしていたんだ。
陽菜さんにも「ちょっと後で、予定確認させて。夜に連絡するのでも大丈夫?」と留保の提案をした。
「全然いいよ〜〜!!」
陽菜さんは快諾してくれた。
とりあえず、時間は確保できた。
あとは考えるだけだ。
陰キャが美女からの誘いを留保するという死刑レベルのことをしているが流石に仕方ないであろう。
ダブルブッキングなんだぞ?
後夜祭か……
実際に見たことはないが、それはそれは、イベントの雰囲気にやられた、発情期の男女が、裸になって、あんなことや……
いや。そこまでではないか。
ただ、カップル色が強いイベントであることには変わりないか。
告白の成功率も高いそうだしな。
何組ものカップルが成立するらしいしな。
おそらく、二人にとって、後夜祭は、ただのお祭り程度なのかもしれない。
ただ、俺にとって、どうしてもその噂が気になってしまう。
でも、なぜ、夏休みの時のように、どちらかを選ばなければいけない状況では、片方の顔が浮かぶんだ?
もちろん、そのすぐ後に、もう片方の顔も浮かぶのだが……
俺にとって、片方選ぶのは、特別扱いしている気がする。
二人にその気がないのはわかっている。
これは俺の問題なんだ。
ただ、もし俺が選んでしまったら、それが俺にとっての【告白】になってしまう気がする。
バカなことはわかっている。
ただ、俺の中で、自分の気持ちが整理できていないんだ。
好きという感情もよくわからないし。
ただ、一緒にいたい。
その気持ちはある。
だからこそ、いい加減な特別扱いすることはできない。
もし、特別扱いする時は……俺の感情に整理がついた時くらいであろう。
俺は、この関係を壊したくないんだ。
いつかきてしまうタイムリミットまで。
学校に着いて仕事をしながら、俺は、今までのことを思い出していた。
今まで、学校行事や、合宿でも成り行きで事が進んでいた気がするな。
今回は俺が主導で決めないとな。
俺はラインで、二人に文化祭での仕事の予定を聞いた。
そして、色々考えた。
デートの予定を立てているようだ。
初めてか……
どうやったら、陽菜さん、深月さんが喜ぶのかななんて、二人の性格とかを考えながら、妄想している。
妄想は夢に影響を与えそうなので、辞めたいところではあるが、結局二人のことを考えてしまうものなんだな。
なんとか、ベストな考えがまとまった。
1日目は深月さんと、2日目は陽菜さんと過ごすのがベストだと思った。
合宿のように、3人で文化祭を満喫するのが一番だろうが、流石に学校で目立ち過ぎる。
他の人に関係性を聞かれても、言い訳もできないしな。
俺抜きで、二人で回ってくれるのならいいのだが……
てか、俺が休めばいいんじゃね??
せめて、編入したんだ。
学校行事を楽しませて欲しいものだ。
そして今回は、俺は丸出しにするつもりだ。
もちろん下半身のことではない。
俺の中でのけじめだ。
夏休みでは、互いに1日ずつ、特別扱いしたような日があった。
あの時の俺は、隠そうとしたい気持ちがあった。
無事に学校の準備も無事に終わった。
家に帰り、俺は、頭の中で練ったプランを紙に書いて、写真で各々にラインで送った。
そして、そのプランには、はっきりと、深月さんと陽菜さんと別の日に過ごすことを明記した。
特別扱いは無しだ。
もちろん、変に意識しているようで気持ち悪いと思われるかもしれない。
ただ、俺にも筋は通させてくれ。
漢だからな。
そう思いながらも文末に、「俺の予定的に、これがベストだと思う。せっかく、誘ってくれたのに申し訳ない。もしあれだったら、別の誰かと回ってくれて全然構わない!!」と陰キャらしく、自分が傷つかないように、『予定的』としっかりと保険をかけておいた。
漢だからこそ、保険は必要だ。うん。
二人からはすぐ返信がきた。
「りょうか〜〜い!!」
「了解!!」
そして、一卵性はほぼ同じタイミングで次のメッセージを送ってきた。
「ねえ、後夜祭ってどうなったの?」
「ねえ、後夜祭ってどうなったの?」
そう。
俺は、後夜祭について書かなかったのだ。
そして、『行かない』。
これが俺の答えだ。
二人に、「家の予定があって参加できないんだ」と書いた。
正直、後夜祭も参加してみたい気持ちはある。
ただ、文化祭を二人と回れるだけで十分だ。
文化祭の予定は無事に決まった。
*
いつも通り、陽菜と深月の両親は仕事でいなかった。
二人はいつも通り夕食を食べ始めた。
月城からのラインが届いた後であったためか、珍しく姉妹間は少しだけ気まずかった。
先に話題に触れたのは深月であった。
「陽菜ねーって……月城くんのこと誘っていたんだねーー」
「一応ね〜〜。クラスの友達と時間合わなさそうだったし?? 深月ちゃんこそ意外だったよ〜〜」
「えーー。そう? 実行委員で一緒だったし、時間合うかなーって。友達と予定合わなさそうだったしね?」
「そうだよね〜〜。てか、後夜祭も……誘ったの?」
「一応ね? 深い意味はないよ? 陽菜ねーも?」
「うん……。でも、わたしも同じで、流れで誘ったんだけどね!!」
「……」
「……」
二人は珍しく本音で話すことができなかった。
「でも、まあ、月城くんと3人で回れたらよかったのにね〜〜!」
「そうだね!! でも、流石に、時間的にも難しいし、3人だとおかしいと思われそうだしねーー」
「そうそう!! 結果的に、平等でいいんじゃない〜〜?」
「うん!! 平等!」
「……」
「……」
「ねえ……深月ちゃんって……月城くんのこと……」
「……ん?」
「いや、やっぱりなんでもな〜い!!」
「うん!!」
陽菜は深月に、月城のことを好きかどうかを聞こうとした。
だが、仮に好きだった場合、自分がどうしていいかわからなかった。
そのため、躊躇した。
一方の深月も、陽菜が何を聞こうとしていたことは理解していた。
ただ、どう答えていいかわからかなかった。
そのため、ごまかすしかなかった。
陽菜も深月も、月城同様に、自分の月城に対する感情が、恋愛感情なのかわかっていなかった。
陽菜にとっては、初恋にも似た感情があることは感じていたが。
少し気まずい雰囲気の中、二人は食事をすすめた。
ただ、深月の食欲はいつもと変わることはなかった。
次回は文化祭1日目!! 妹回。
最近、妹多いな……
まあ、いいか。




