第45話 6日目
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6日目
休んだ甲斐あって、姉の方も元気になっていた。
今日は花火大会を見に行く。
寂しいな。もう最後か。
俺はずっとこの4人で生活したいくらいだ。
明日の昼頃には、この家ともおさらばか。
そう思いながら、午前中はのんびりとプールに入ったりして、最後のプールを楽しんで過ごしていた。
久々に4人でプールか。
この状況にも慣れてきたか。
いや、水着にはまだ慣れないな。
だって、迫力がすごいんだもん。
姉の方は、以前よりは元気そうだが、少し無理している感じがした。
俺の勘違いかな。
あっという間に、夕方になった。
「じゃ〜ん!!」
「じゃーん!!」
姉妹揃って、浴衣姿を見せてきた。
まあ、もう慣れたよ。
水着見てるからね??
それに、裸も背中だけど見てるからね?
順番逆だよね?
「おお。いいな」
「なんか反応薄くない〜〜?」
「おかしいなーー」
「そんなことはないぞ? 似合っているよ」
正直、普通に似合っている。
まあ、何着てもそう思うんだろうがな。
ただでさえ良い浴衣姿が、二人の黒髪で、日本文化の良さをさらに引き立たせている。
「水着じゃないと興奮しないのか〜〜」
「あーー。変態だからねーー」
「おいおい。やめてくれ」
とりあえず、俺らは花火大会の会場に向かった。
家からそれなりに離れたところにある山奥の神社で祭りが開催される。
かなり広い神社であるため、そこの境内で花火を見ることにしていた。
祭りか。
今まで行ったことはなかったな。
こんな人混みに来るとは想像もしなかったな。
人が多い。多すぎて酔いそうだ。見渡す限り人しかいない。
リサや姉妹がいなかったら、即帰宅していただろう。
4人で横並びに歩くスペースもない。
ギリギリ3人は可能か。
ただ、期末試験の朝みたいに、犬の糞を踏んでしまうかもしれないな。
リサも、ぼっちは可哀想だ。
自然と、俺とリサが前を歩き、姉妹は俺らの後ろを歩くポジションになった。
リサも物珍しそうに屋台を見ている。
俺らはゆっくりと屋台を見ることにした。
4人で、人生初の、金魚すくい、射的など色々なことに挑戦した。
屋台の人が近くにいて、あまり集中できなかったが、それでもメンバーのお陰で楽しめた。
こういう遊びは、姉の方が得意といった感じだった。
妹の方は、金魚すくいや射的とかでも、無駄に考えるタイプで、姉の方はいい加減にいく感じだった。
俺もいい加減なタイプだが、手が震えて照準が定まらないから、結構考えている人みたいに思われた。
本当に楽しかった。
妹の方が、通常運転で、チョコバナナを食べてくれたので、そのことも満足である。
そんな中、道の構造的に色々な人が合流する場所があった。
近くにいたはずの姉妹と運悪く離れてしまった。
そして、屋台でボヤ騒ぎが起こり、群衆はパニックになった。
俺は、二人を完全に見失ってしまった。
近くを探したが、見つからない。
少し高い位置からも探してみたが、いない。
二人も色々動いてしまっている。
山奥なので、電波もあまり良くない。
人多いため、電話が通じにくい。
合宿の予定を決めるときに4人のグループラインができていたので、そこに連絡した。
「おい、大丈夫か?」
「迷った〜〜」
「迷子になっちゃたーー」
「今、リサと探しに行くから動かないでくれ!!」
どっちを先に助ける?
なぜか、俺には一人が浮かんだ。
俺は心のなかで、全力で妹に謝罪をした。
仕方がないんだ。
姉の方は、まだ具合が悪そうだったんだ。
もし寝てしまったら、寝てる間に、変なことされるかもしれないだろ??
もし、悪い奴がいたら、俺が戦わないといけないだろ??
妹の方は、食欲もあったし元気だろ?
それに、俺はこの間、命を助けられたんだ。
だから、優先しないといけないんだ。
許してくれ……
リサに妹の方を任せて、俺は姉の方を探しに行った。
全力で人混みをかき分けて、探し回った。
無我夢中で探した。
人の目線なんて気にしなかった。
今までしたことない、人に聞くということもしてみた。
そうしていると、妹の方が見つかったと、リサからの連絡が来た。
良かった。これで集中して姉の方を探せる。
15分くらいして、やっと見つけることができた。
「お〜〜い!! 月城くん!!」
「よかった……」
「すごい汗だね……ごめんね」
「大丈夫だ。ここは思いの外暑くてな」
「ありがとう。でも、そんな焦らなくても大丈夫なのに……」
「まだ、具合悪いんだろう?」
「そんなことないよ〜〜」
「どうせ、俺らに迷惑かけないようにとか思ってるんだろ? 誰も責めないって言ったろ?」
「なんで……わかっちゃうの……」
「なんとなくさ」
「でも、みんなのために無理したわけじゃない!! 花火見たかったんだよ?」
「その気持ちはわかるよ」
「だって、前はさ、誰かさんが風邪ひくからさ〜〜」
「すいません」
「今度はわたしが倒れるわけにはいかないじゃん!!」
「無理したらダメだろ」
「してないよ〜〜!! でも、月城くんが風邪引いてくれて良かった。こっちの方が楽しい!!」
一発目の花火が打ち上がった。
「ねえ、見ようよ!!」
俺の腕を引っ張った。
「いいけど……戻らなくていいのか??」
「月城くんは深月ちゃんと見たいの〜〜? そうだよね〜。昨日はわたしを無視して、いかがわしいことをしてたからね〜〜」
「そう言われましても……」
俺の中でも、昨日は妹の方を特別扱いした感じが否めない。
「じゃあ、一緒に見よう。どうせ戻ってもその頃には終わっているしな」
「うん!!」
俺はリサに、ラインで『姉は見つかった。戻る頃に花火は終わってしまうから、二人で見てくれ』と連絡しておいた。
『わかりました』との返事も来た。
外で見る花火は綺麗だった。
家の窓から見るのとは全然違かった。
風情ある景色を見ていると、色々と考えさせられることがあるな。
「でも、ここまで仲良くなるとは思わなかったな〜〜」
姉の方が呟いた。
「それは本当だ。今まで、女子と話せなかったからな」
花火に夢中で本音が出てしまった。
まあ、姉の方は大丈夫か。
「そんなひどかったの〜〜?? 結構今は話せてるじゃん!!」
「それは陽菜さんのおかげだよ」
「あれれ〜。深月ちゃんいないのに、名前で呼んでくれるの〜〜??」
「あ……すいません」
「なんでよ〜〜。いいじゃん〜〜。いじりだよ〜〜」
「慣れないな」
「そのうち慣れるよ〜〜」
「じゃあ、女子が声かけてきたらどうしてたの?」
「そんな機会はなかった気もするが、ダッシュで逃げるんじゃないか??」
そういえば、姉の方が階段のところで声を掛けてきて、妹の方とキスの時も逃げたな。
懐かしいな。
「……」
「え。どうした?」
「なんでもないよ〜〜。 バカみたいな考えしただけ!! 確かに、言われてみれば、逃げそうだよね〜〜」
「まあ、緊張するからな。てか、バカな考えって何。気になるではないか」
「教えないよ〜〜」
「まあ、バカになったら困るか。やめておこう」
「ひっど〜〜い」
「これでも教えてくれないか」
「そんな甘くないんだよ女子の秘密を知るのはね。じゃあ、彼女はいなかったの?」
「この流れでいたら、変態だろ」
「変態じゃん」
「困ったな……」
「一人か二人いるのかと思ってた」
「ありえなくないか?」
「そう? 勉強も運動もできるし、優しいし、モテると思うよ?」
「それは、奇跡が重なっただけだな」
「そっか〜。まあ、いいんじゃない? 奇跡でも?」
「そうなのかな? てか、陽菜さんは今までに彼氏いたの?」
「え? わたし? 彼氏いたことないよ?」
「にわかに信じがたいがな? 恋の一つや二つをしていてもおかしくないだろ。モデルだし」
「んーー。初恋はあるよ??」
「ほらな??」
「勘違いしないでね? その人とは本当に何もないの。名前すら知らないし!! 顔もほとんど覚えていない!! 中学生の頃に、ほんの一瞬あっただけだし。ただ、いいな〜って」
「なんかクソ女みたいだぞ?」
「え〜。ひっど。向こうも、多分覚えてないんだよ〜〜」
「そんなひどい男がいるのか」
「そんなもんだと思うよ〜〜。 だって、連絡先も知らないんだよ?」
「そうなのか」
そういえば、キスした時、妹の方も俺と誰かを間違えていたな。
まあ、あれは幻覚を見ていたのかもしれないな。
誰だったんだろう。
人のことを『ひどい男』と言ってみたが、俺ならどうだろうか。
俺は、記憶力はいいぞ。
ただ、人の区別は苦手だ。
だって、昔の俺は、姉妹の区別もできなかったからな。
できる限り、女子の顔は見ないようにしてきたしな。
仕方ないんだ。
人の表情を見て、記憶が残ると嫌だったから顔とか見ないようにしていたからな。
陰キャの視線は下なんだよ!!!!
最近は少しづつ人の顔を見るようになったな。
森さんや高安を見ていろいろなことを知った。
誰かと会ってても、覚えていないもんかな?
わからないのかな……?
もし、俺が妹の方とどこかで会ってても、覚えていない可能性は……なくはないのか??
昔の俺だったら、難しいのかもしれないな。
んーー。
美人なら覚えてそうだが、美人だからこそ覚えていない可能性もあるか。
まあ、考えても仕方がないか。
妹の方とは異なり、『ヒュ〜〜』や『どか〜〜ん!!』と花火に合わせて声をかける。
姉の方らしいなと思いながら、俺も花火を楽しんだ。
あんなに綺麗だった花火も、すぐに終わってしまった。
「4人で見たかった。でも、これはこれでいいかな〜〜」
「まあ、そうだな」
「じゃあ、戻るか?」
「うん!!」
リサと集合場所を決め、合流することができた。
合流できたことに安堵と共に罪悪感があった。
今日は姉の方を特別扱いしたからかな。
「あーー! 二人で見てたなーー?? ずるいよーー!!」
「ち、ちがうんだ!!」
またしても、浮気がバレた奴のような反応をしてしまった。
またしても勘違いか、妹の方は少し寂しそうな顔をしていた。
今度は迷子にならないように、姉妹を前で歩かせた。
これで、イベント終わりなのか。
合宿も、長いようで、あっという間だったな。
家に戻り、祭りでの出来事や、花火のことなど遅くまで話した。
具合の心配もしていたが、俺も会話をやめようとはしなかった。
二人が寝落ちして、部屋に戻り寝ていると、物凄い爆発音がして目が覚めた。
雷だった。
夜中にうるさい事この上ないな。
でも、この合宿は、雷のおかげでもあるのか。
それで、俺のマンションに来ることになったんだからな。
仕方ない。今日だけは雷を許してやろう。
俺は目を瞑った。
次回で【夏休み編】終了です!!




