第44話 5日目
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
今回は妹回です!
5日目
姉の方は少し復活した。
ただ、一応、今日も部屋で安静にしてもらうことにした。
とりあえず、今日は特にやることはないな。
比較的涼しいし、散歩にでも行こうかな。
せっかく来たのに、ずっと家に引きこもっているのも勿体無い気もするしな。
都会と違って、人も少ない。
のんびり散歩できるな。
そんなことを考えていると、リサが、バツが悪そうに声をかけてきた。
「……ひかる様。買い物に行ってもよろしいでしょうか?」
「ん? いいけど、昨日行ったんじゃね?」
「少し買う物を忘れてしまったので」
「珍しいな」
「すいません。今後、この様なことが起きないように……」
「そんなことはどうでもいいだろ!! 深月さんと楽しかった?」
「はい。それで……」
「仲悪くなくてよかったよ。じゃあ、買い物は散歩がてら、俺が行ってくるから、買いたいものを教えてくれ」
「いえ。そんなことはさせられません」
「いや、散歩行きたいし、スーパーも見たいんだ」
「本当ですか?」
「本当だ。だから行ってくる。家で遊んでいてくれ」
「いつもありがとうございます」
「いいから気にすんな。二人を任せたぞ」
「もちろんです」
買う物を聞いたり、準備をして、玄関に向かうと、妹の方に声をかけられた。
「どこ行くのーー??」
「ちょっと、散歩とスーパー行ってくる」
「え!! 私も行く!!」
「昨日行ったろ??」
「うん!!」
「じゃあ、行かなくてもいいんじゃないか?」
「いや! 行くよ! あ……嫌だ?」
「別に嫌ではないが、楽しいところではないと思うがな。まあ、じゃあ行くか」
「うん!!」
誰かが姉の方の面倒を見ないといけないので、リサを置いて、俺らは買い物に行くことにした。
まあ、汗をかいた時、俺よりリサの方がいいだろう。
いや、俺の方がいいかもしれないな。
やっぱり、留守番しとこうかな。
そんなことを考えながら、俺は妹の方とスーパーに向かった。
もう感覚が麻痺してしまった。
『妹と二人で買い物だ!!』とか思わなくなってしまった。
それでもドキドキはしているが、初めの頃とは何かが違う感じだ。
まあ、こんだけ一緒に過ごしてればそうなるか。
俺達はゆっくり歩いていた。
俺はゆっくり、木々や海や家を見ていた。
妹の方も会話をしなくても、問題ない感じだった。
文句を言うわけでもなく、ただ、大人しく、俺と一緒に色々見ていた。
ゆっくり歩いていたのでスーパーまで結構かかった。
夏場のスーパーはやはり快適だ。
少し汗ばんだ体が一気に冷やされる。
買い物を始めると、なぜに、妹の方が、あんなに行きたがっていたのかがすぐにわかった。
東京とは異なり、試食コーナーが多かったからだ。
スーパーのおばちゃんたちが、妹の方が通る度に『そこの可愛い子!! また来てくれたの!! せっかくだから食べていきな!!』と言い、妹の方はあらゆる場所で試食をしている。
『あら〜かわいいね〜〜』とみんな口を揃えて言う。
そして、妹の方も、とびっきりの笑顔でそれに応える。
おばちゃんよ。
多分、妹の方は『可愛い』に喜んでいるのではなく、そのソーセージに喜んでいるんだよ。
あ、今のは下ネタじゃないからね?
俺は妹のことを気にしつつ、買い物を続けた。
リサが珍しく忘れたのも納得できる。
リサも可愛いし、巻き込まれた可能性が高いな。
楽しかったならよかったか。
無事に、必要なものはカゴに入れ終えた。
あらゆるところでお腹いっぱいになったであろう妹の方が戻ってきた。
「ごめん……手伝わなくて……」
「いいよ。別に大したことじゃないし」
「帰りは荷物持つから!!」
「大丈夫だ」
「やるもん!! あ、そうだ!アイス買いたい!!」
「おう」
俺的にはもうちょっと、散歩をしたかったが、いいか。
そこまで、冷蔵の物はないから、ゆっくり歩いて帰ろうと思ってたんだが。
巻き込むのも悪いしな。
買い物を済ませ、少し急いで帰った。
途中、家の近くで、「あ!! 公園あったんだ!!」と妹の方が気がついた。
俺も昔、別荘を何回か利用したことがあるが、公園があることは知らなかった。
「ねえ、せっかくだし、公園行こうよーー!!」
「アイス買ったのは誰なんだよ」
「うーーー」
不貞腐れている顔をされても困るんですけど……
「じゃあ、とりあえず、戻って、置いてから行くか?」
「うん!!」
少し早歩きで家に戻った。
「おかえりなさいませ。ありがとうございます」
「大丈夫だ。で、陽菜さんはどう?」
「今はお休みになられています。熱も下がって問題ない状態です」
「よかったよ。ありがとうね」
俺らは荷物をリサと一緒に片付け終えた。
「じゃあ、行くか?」
「うん!!」
再び、公園に向かった。
まずは、各々ブランコに乗った。
ゆらゆらと揺れるブランコは俺は好きだ。
あらゆる悩みが、なくなる感じがしていいんだよな。
昔はよく、人のいない時間に、一人でブランコに乗ってたりもしたな。
よく考えると、不審者じゃね?
まあ、いいか。
「遠足の時も公園に行ったねーー!!またこれてよかった!!」
「正直、あの時は、こうなるとは思わなかったがな」
「そうだよね!! 初めて図書室であった頃から考えるとすごいよね。合宿するなんて思わなかった!!」
「そうだよな」
初めて会った時は、いつもの無意識でキスしてきたけどな??
まあ、そのおかげで今があるのか。
俺にはずっと聞きたいことがあった。
姉の方にも、妹の方にも。
でも、ここで聞いてどうする。
聞いてどうしたいのか。
もう機会はないかもしれない。
学校始まれば、クラスも違うし、機会は失われるかもしれない。
ただ、聞いてしまって、俺の期待する答えではなかったら??
それでも俺は気になっていたんだ。
ずっとずっと。
俺は勇気を振り絞った。
「あ、あのさ、これはさ……ただの興味というか、あれなんだけど……」
「ん?」
「今までに、か、彼氏…いたことあるの? い、い、いや……、深月さんクラスならいっぱいるとは思うんだけど、あくまで、興味本位とかなんだけど」
「初めに会った時言ったじゃん。彼氏いないよーって」
いや。それじゃあ、答えになってないんだよ!!
確かに、今の話の流れ的に、いない確率は高い。
でも、100%の答えを聞きたいんだ。
ここまで聞いたんだ。
今しかないな。
「『いたことないよ』と『いないよ』は違うだろ?」
「えーー。細かいよーー」
「日本人は細かいんだよ」
「私が日本人じゃないみたいじゃん!! じゃあ、どっちでしょう?」
ああ。
これはいたことあるんだな。
わざわざ、はぐらかす必要なんてないもんな。
胃が急激に縮まったのを感じた。
「いや。プライベートを詮索するなは良くないな。ただの興味本位だ。忘れてくれ」
「なんでよーーー!!いないに決まっているじゃん!!」
「信じられないな」
「そう? 私はそこまで人と関わらないよ? 男の子とお泊まりなんてしたことなかったし。月城くんが初めて!!」
俺の心がすごく安心しているのがわかった。
「そうなのか」
クールぶって答えていたつもりだったが、もしかしたらニヤついていたのかもしれない。
「……じゃあ、私も。ずっと聞きたかったんだけど、月城くんこそ、彼女いたの?」
「は?」
「……何人いたの?。月城くんはモテると思う」
「あのー。いじるのやめてもらっても良いですかね」
「はぐらかさないでよーー!!」
「本気で言っている??」
「……うん」
これはどこまで社交辞令なのだ?
やっぱり、男と女は違うよな。
どうしようかな。
女なら居ないことは加点事由だが、男なら幻滅されるかな……
妹の顔から判断するに、結構本気で言っている気がする。
陰キャだと思っていないのか??
こんな俺を過大評価してくれている。
でも、しっかりと伝えないとな。
「……いたことあるわけないだろう」
「ほんと!?」
「ああ……」
「ふーん」
「なんだよ」
「なんでもなーいよーー!! でも、意外だなーー!!」
「なんでだよ」
「クラスでも、女の子の友達多いんでしょ?」
「あれは奇跡的みたいなものさ。深月さんとこうやって話してるのも夢見たいな話なんだよ」
あ。
そういえば、二人がいる時ではないから『早乙女さん』の方がいいのか?
もういいよな。名前で。
「私も今が人生で一番楽しいかも」
名前のことは、別に突っ込んでこなかった。
なんとなく、心の距離が縮まった気もした。
そんないい雰囲気は続かない。
蝉がなき始め、段々とブランコに集中できないぞ。
虫はダメだ。
だから田舎は嫌いなんだ。
妹の方が急に、ブランコを降り、少し離れたところに行き、「ああー!! 蝉の抜け殻発見したよーー!!ほらーー!!」と見せびらかしてきた。
「お、お、お、おう」
頼む。近づけるな。
第一、蝉の鳴き声でさっきから不愉快なんだ。
一人だったらダッシュで帰っているぞ。
「抜け殻も苦手?」
まあ、今更虫嫌いを隠してもダメか。
「ああ」
「えーー。これは大丈夫だよーー!!」
そう言って、俺に近づけてくる。
「近づけるな!!!」
俺はブランコをおり、距離をとった。
「だって、面白いんだもん!!」
「陽菜さんだろ!? 入れ替わっているな??」
「陽菜ねー、虫触れないよーー」
確かに、さっき歩いていた時は、ホクロは二つあった気がするな。
「ほれーーー!!」と抜け殻を持ちながら追いかけてくる。
「す、ストップだ!!俺と追いかっけっこしても足が速いから楽しくないだろ??」
「運動がてらに追いかけてみよーーっと」
どうしよう。
これはガチだぞ。
虫持つと、妹の方ちょっとSになるのかよ。
本当はMのくせに。
あとで、リサの道具でお仕置きしてやる。
こうなったら、精神攻撃だ。
「嫌だよ。タッチされたら、体育祭のリレー時みたいに吹っ飛ばされるし。怪我は良くないからな。うん。やめよう」
「ねーー!! しないよ!!! もう怒った」
「俺の方が足が速い。な?? やめよう。な?」
「えーー。足が速いならいいじゃん!! 追いつかないし」
これは困った。
美女に追いかけられるのはいいが、手に持っているものが気になる。
足に力が入らない。スピードが出せないぞ。
誰もいない公園で、いい年をした高校生が、追いかけっこをした。
スピードが出ないせいか、結構いい勝負だった。
タッチはされなかったからよかったとしよう。
流石に、30分くらい追いかけっこをしていたので、飽きてくれたみたいで、抜け殻をおいてくれた。
その後は、滑り台やシーソに乗ったり、鉄棒で遊んだりしたりもした。
よかったことは、無意識に鉄棒で、股を挟んで、エロい姿を見せてきてくれたことだ。
蝉のことは少し許してやろう。
全体的にみて、小学生のように遊んでしまった。
でも、楽しかった。
こんなことはなかったからな。
結構汗をかいて家に帰ると、玄関で姉の方に見つかった。
「おかえり〜〜!! 汗だくで何してるの〜〜?」
妹は、小学生みたいに遊んだことが恥ずかしかったんだと思う。
中々、何をしていたか言えなかった。
俺もなんて言えばいいか悩んでいた。
この状況は今ままでなかったか。
二人いる中で、片方と特別に遊んだ感じがして……
浮気した感じなんだよな。
「え? 二人ともまさか……外で? ……わたしのことほっといて……」
「ち、違うんだ! そんなことはしてない!!」
「何考えているの〜〜?? あ〜〜浮気者だな〜?」
「あ……」
簡単に姉の術にハマってしまった。
俺の気のせいなのか、具合が悪いからか、少し寂しそうな顔をしていた。
シャワーを浴びて、夕飯は4人に戻って、いつも通り楽しんで寝た。
合宿を通して、距離が縮まった感じですかね。
もうすぐ夏休み編も終わり、文化祭編へと続いていきます!!




