第24.5話 俺は姉に遊ばれる
「じゃあ、そろそろやる?」
「じゃあ、賭けしない? 勝った方は負けた方になんでも命令できるってこと! あ、『殴る』とかはダメだよ〜?? でも、エッチなお願いはいいってことにしよう?」
おいおいマジか。どうしたんだよ。
妹との3Pはお願いできるのかな?
まあ、どうせネタだろうがな。
「いいよ。 命令できる有効期限は?」
「おお〜乗ってるね〜。 いつでもいいってことでいい?」
「了解! 俺の反応見たいからって、手抜くのなしだよ?」
「もちろん! 本気でやらないとね!」
所詮こんなものは茶番だ。わかっている。
男が勝った時は女は『え〜、さっきのネタでしょ?』って言われる悲しい茶番だ。
勝負に勝ったのだから、おっぱいくらい見せてくれても良いだろう。
そして、女が勝った時は、無理難題を要求し、交渉の末、最終的には飯を奢らせられるくらいだろう。
昔、教室の端でそのような光景を見ていたからわかるぞ!
まあ、3pの可能性も須子のように交渉次第であるかもしれないので、本気で勝ちに行こう。
端のレーンだし、他人の目線は感じないぞ。
男子2人の目線はそれなりに気にはなるが、そこまで影響はなかったし、知らない女子2人はキツイが、それぞれ忙しそうだし。
それに、姉の方も初心者だし、頑張れば勝てるんじゃね?
ゲームは俺からだった。
まずは1投目。
いざ構えてみると、やはり少し緊張するが、思ったほどでもない。
姉の方の目線ではほぼ緊張しなくなっている。
無事、ストライクが出せた。
手を抜かないぞ。
勝ちにこだわっても、『命令したいのではなく、されたくないから』と言い訳ができるし。
3pとか考えてないし。うん。
「おお! じゃあ、次はわたしの番だね!」
「うん。 頑張って!」
まあ、初心者なので、ストライクはないだろうと思っていた。
姉の方はボール拭いて、流れるように立ち位置を決め、そんまま流れるように綺麗なフォームでボールを投げた。
最終的には、長い足をクロスまでしっちゃたりしているんですけど……
まるで経験者のようだった。
全然さっき教えたフォームじゃないんですけど……
あ。
初心者ってのは嘘か。
騙されたのか!!!
「全然、初心者じゃないじゃないか!!」
「てへっ! だって〜教えてくれるの楽しみにしてたんだも〜ん!」
俺は、完全に姉の方に遊ばれている。
「一生懸命教えていた俺がバカみたいではないか……」
「いいじゃん!ね? ほら〜、次、月城くんの番だよ〜〜」
「わかったよ……」
まあ、俺がミスしなければいい。
男子だけでやった時にコツは掴んでいる。
俺は運動神経は悪くはない。
2投目。
俺は狙い通り、ストライクを取ることができた。
姉の方は、ストライクかと思われたが、1本残り、2投目でそれを倒しスペアになった。
このままいけば勝てると思った。
安心していた。
3投目
俺がボールを持って、投げる場所に近づくと、
「ねえ、みんな〜〜! 今から月城くんがすごい技やるって〜〜!」とイタズラ好きの少女のような顔をしながら、みんなの注目を俺に浴びせやがった。
それはチートだろう。
俺は注目されると、体動かせないんだぞ??
みんなの視線が集まった。
『面白いことをする』という期待の視線も感じられる。
ボケたことなんてないんだよ。
とりあえず、普通にストライク狙って、『なんのこと?』と逃げるしかないか。
投げようとしたところ、嫌な緊張ではないが、やはり思った通りに体が動かせない。
右手でカーブをかけようとしたら、離すタイミングがズレて、結果的に隣のレーンの須子のガーターに、ボールを投げてしまった。
「ぬをおおおおおお! 何してくれるんだーーーー! せっかく、もう少しで森さんを全裸にできたのにー!!」
「あ!ごめん!」
本当は結構ちゃんと謝らなければいけない。
須子の大切なチャンスを奪ってしまった。
まあ、あるかないかわからんが。
ただ、須子の反応で笑ってしまい、ちゃんとは謝れなかった。
「あーーー!!残念〜〜。スコスコはもう裸見れないね〜〜ん!!」
「今のはノーカンでしょーーー!! 冤罪だ!! 誰か判決を!!」
姉の方が裁判官になり、「んーー。これはアウトですね」と判決を下した。
無事に須子の結果は、ガーターとなった。
「あああああああ。月城〜〜!! 何がすごい技だ〜〜〜」
「すまん!!」
ボケ王の高安や数井さんまで笑っていた。
結果的に、すごい技みたいになったのは面白かった。
「よし。こうなったら何か条件を出して、もう一度チャレンジだ!」
そう言って須子はまた森さんとの交渉をし始めた。
俺はニヤニヤしながら座っている姉の方に近づいた。
「ずるいぞ??知っているだろ!!」
「え〜〜?。 真剣勝負でしょ? 相手の痛いところはつくのは定石だよ? それに、面白かった!!」
「まあ、結果的には、おもしろかったけども」
「こういうので慣れていくと治るでしょ? それに真面目な話、ここでは誰も馬鹿にしないからいいでしょ?」
うまく丸め込められた気がしたが、姉の言うとおりであった。
ミスした割に楽しかった。
おそらく、普通に醜態を晒しても、このメンバーなら昔の学校の奴らとは違って、軽蔑する視線を向けてこないと思う。
「何も言い返せないんですけど……」
「でしょ? 投げてくるね〜!!」
「待て待て、まだ俺の番だ」
「あ、そっか。じゃあ、1回目は不公平だからガーターにして」
「わかったよ……」
2回目で全ピン倒し、3投目はスペアだった。
そして姉の方は、ストライクを取った。
勝負は続いた。
俺もストライクやスペアを連続で出せた訳ではなかった。
技量的な問題もあるが、要所要所で、姉の方が俺が投げる瞬間に、誰かしらの視線を集めるのである。
姉の方は普通にストライクやスペアを取る時もあれば、ミスすることもあった。
勝負は拮抗したが、結果は出た。
はい。
ギリギリで俺は負けました。
でも、嬉しかった。
命令されるからという意味ではない。
人生で初めて人前でゲームを楽しめたからだ。
「やったね!!わたしの勝ち〜!! 楽しかった??」
「悔しいが、楽しめた。 ありがとう」
「じゃあ、これでわたしが命令できるね!!」
「『今後、二度と学校くるな』とかはやめてもらいたいのですが……」
「え〜〜。なんでそう考えるのよ!!」
「じゃあ、何をいたしましょうか?」
「今日はまだ命令しない! 有効期限はいつでもいいってことにしたじゃん!!」
「そうだったな」
今日じゃないのか。
てっきり、全員分の飯奢れとかかと。
あ。もしかして、今後ずっと奢れとか?
流石にそれは公序良俗に反しているよね?
無効だよね??
金持ち出身がバレてたりして……
だ、大丈夫だと信じよう。
「何にするかは考え中〜! でも、必ず使う!! ちゃんと従ってね?」
「わかったよ……」
残りの2組も終わった。
このまま流れで帰るのかと思ったら、「じゃあ、みんなでさプリとろ?」が姉の提案をした。
「そういえば、ウチらそれできたんだよね! いいじゃん! スコスコとかみんなで撮ろう!」
と、いうことで1軍と初めてのプリクラを撮った。
狭い空間で女子を前、男子を後ろにして撮った。
女子たちは前で、前屈みになってお尻を突き出す感じだった。
須子が超小声で、『この体勢あれだよな』とか言っていた。
俺は須子が、大声ではなく、超小声で言えたことに感動した。
『あれだよな』と言葉を濁せたことにも感動した。
撮り終わった後は、女子たちがハサミでみんなの分をうまく分けてくれた。
せっかくの思い出だ。
1番くじで妹の方と交換した、缶バッチお守りの裏に貼っておいた。
また、いい思い出が増えたな。
「せっかくだし、6人のグループライン作らない?」
またしても姉の主導でグループラインが出来上がった。
わかったことは1軍女子は思いの外、陰キャとか気にしていないのかもしれないな。
勝手に俺が敵視していただけなのかもしれない。
GWは1軍女子と仲良くなった。
【GW編】は終了です。
ありがとうございました。
姉の暴走は困りましたが、『命令』は何になるんでしょうか。
とりあえず、【GW編】で姉との思い出もできてよかったですね。
次回からは【中間テスト編】(軽め)です!




