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王様の誕生日のお話

※本編40話より後のお話です。

「もうすぐ一年が経つなんて、まだ信じられないわ」


 女官のカイラに髪を()いて貰いながらエリーズは言った。

 ひと月後に開かれる国王ヴィオルの誕生日を祝う夜会の準備で王城は大忙しだ。エリーズも招待客のリストに目を通したり当日に着るドレスの採寸、来賓に振舞う飲み物や演奏する曲の確認などやることが山積みだ。その日は王妃として完璧に立ち回らなければならない。

 同時に、ヴィオルと運命の出逢いを果たして一年が経とうとしているのだと思うと感慨深くなる。


「エリーズ様のお世話をするよう仰せつかったのが昨日のことのようですわ」


 王妃の銀色の髪に(くし)を通しながら、カイラがしみじみと言った。

 あの日のエリーズはこの世に二人といない優しく立派な男性と初めての恋に落ちて完全に浮かれきっていたが、国王が出自の分からない娘を妃として迎えると言い出し、彼に仕える人々は大わらわだったはずだ。カイラも最初は不安だったことだろう。

 だが、王城で一夜を過ごし今後の行く末を案じるエリーズに対し、彼女が親切に世話を焼いてくれたことでエリーズの不安だった気持ちはとても安らいだ。


「あの時、カイラが傍にいてくれたから今のわたしがいるの。ありがとう、カイラ」

「……勿体ないお言葉です」


 カイラは優しい微笑みを浮かべた。


***


 夜会の準備と並行して、エリーズはとある計画を進めていた。

 愛する夫の誕生日を、彼の唯一の家族として心から祝いたい。だがヴィオルの周りにはあらゆるものが揃っている上、欲しいものはないかと聞いても「エリーズが傍にいてくれるなら他には何もいらない」という答えしか返ってこない。

 そこでエリーズが考えたのは、また別日に祝いの席を用意することだった。ヴィオルの誕生日当日に開かれる夜会には国中の貴族や友好国の王族が集うため、どうしても社交を意識せざる得ない。ヴィオルが肩の力を抜いて接することができる数少ない者たちだけを呼び、エリーズの手料理で彼をもてなす――かつてエリーズが幼かった頃に、両親や使用人たちが開いてくれた温かな誕生日会をヴィオルにも味わってもらいたかった。

 エリーズが向かったのは国王の近侍、ジギスの執務室だ。突如やって来た王妃に、彼は目を丸くしながら席を立った。


「王妃殿下、如何なさいましたか」


 以前、エリーズは彼との心の距離を詰めるべく差し入れを持ってこの執務室を訪れた。それをヴィオルに知られてひと悶着起きたことで、ジギスの顔には若干の警戒が見える。


「お忙しいのにごめんなさい。ジギスさんにお渡ししたいものがあって」


 エリーズは一通の封がされた手紙を、彼に両手で差し出した。


「お時間のある時で構いませんので、読んでおいてください」


 ジギスは手紙を受け取ったものの、怪訝(けげん)そうな表情をしていた。やはりヴィオルの存在がちらついているのだろう。万が一、読まずに処分されると困るのでエリーズは慌てて説明を足した。


「へ、変なものではないので大丈夫ですよ。招待状です!」

「招待状……ですか?」

「はい。なのでまた後程、お返事をお願いします」


 他に夫の誕生会へ呼ぼうと考えている者には、それぞれの屋敷へ招待状を送った。ジギスはヴィオルに負けず劣らずの量の執務を日々こなしているため、月のほとんどを王城にある部屋で過ごしている。直接に渡した方が手っ取り早い。

 招待状を届けるのに使用人を経由しても良かったのだが、そうした場合ジギスは来てくれないかもしれない、という懸念がエリーズにはあった。彼は自身をあくまでも国王の臣下に過ぎないと考えているところがある。だがヴィオルにとってのジギスは決してただの近侍の枠には収まらない。ジギスとチェスに興じる時間は刺激的でわくわくするものだと、ヴィオルはエリーズに話したことがある。他にも、ヴィオルが妻との惚気話をし出すとジギスは面倒そうな顔をしつつ、絶対に遮ることはせず最後まで聞いてくれるとも。

 真面目なジギスのことだから王妃の直々の招待を断ることはしないだろう、というエリーズの見立て通り、彼は丁寧に頭を下げた。


「承知致しました。必ずお返事致します」

「ええ、楽しみにしていますね」


 お仕事頑張ってくださいねと声をかけ、エリーズは近侍の執務室を後にした。


***


 国王の誕生祝いの夜会当日。着替えを終え部屋で待機していたエリーズのもとにヴィオルが姿を現した。着飾った王妃の姿を見るなり感嘆のため息を漏らす。


「綺麗だ、エリーズ」


 ひだをたっぷり寄せた濃い赤紫色のドレスは、今日のために仕立て上げられたものだ。袖を丸くふわりと膨らませており、襟ぐりは大きく開いている。首元を飾るのは純金と涙型に加工された紫水晶が使われた豪華なネックレス、更に耳飾りとティアラ、指輪にも、国王の象徴である紫水晶が惜しみなく使われている。


「ありがとうヴィオル、あなたも素敵よ」


 白を基調とした彼の礼装姿を見ると、初めて見つめ合った瞬間のときめきが呼び起こされる。毛皮で裏打ちされた鮮やかな緋色のマントを着こなせる人間はヴィオルを置いていないように思えてくる。右肩から斜めにかけた赤いサッシュには、今やすっかり王妃の象徴と言われるようになったダイヤモンドのブローチが留めてある。


「お誕生日おめでとう」


 白い手袋に包まれた夫の手を握り、エリーズは微笑みながら言った。二人とも朝から夜会の準備に追われ、ようやくまともに顔を合わせて伝えることができた。


「……このまま二人で部屋に籠ってしまおうか」

「ふふ、だめよ。皆さまはあなたに会いたいと思っているのだから」

「……じゃあ、しょうがないな」


 不服そうな夫をあやすため、エリーズは彼に優しく口づけた。もちろん一度でヴィオルが満足するはずもなく、抱きしめられて情熱的なお返しをされる。エリーズがそれに酔いしれていると、隙をついたヴィオルの唇が下に降りた。


「あっ……」


 彼を引きはがす間もなく、鎖骨の少し上に吸い付かれる。肌の上にしっかり咲いた赤い花を見てエリーズの顔からさっと血の気が引く。客人の前に出る時まで間もないはずだ。急いで女官を呼んで染み隠しを――


「駄目だよ、このまま行くんだ」


 エリーズの思考を読んだかのようにヴィオルが言う。


「そんなはしたないこと、してはいけないわ」


 これをただの虫刺されか何かだと本気で思う者は、今日の夜会にはいないはずだ。今日の主役とその妻が公に姿を現す直前まで睦みあっていたなどと知られたら王家の威信に関わる。


「はしたなくなんてないよ。今夜の君は素敵過ぎる。誰の妻なのかはっきり分かるようにしておかないと」


 その時ちょうど、部屋の扉が外から叩かれた。ジギスが国王夫妻を呼びにやって来たようだ。

 ヴィオルは笑みを浮かべ、エリーズに腕を差し出した。


「さあ、行こうか。君と僕が出会った記念すべき日のお祝いだ」


 ヴィオルは今日は、「妃と出会えたことを祝うための日」という姿勢を崩さなかった。客人と言葉を交わす際もずっとエリーズの肩に手を回しているか腕を組むかで、男性が距離を詰めてこないよう牽制し続けている。

 エリーズの首元につけられたヴィオルの「印」について言及する者は誰もいなかった。とはいえ対面した者は全員気づいているはずなのでエリーズの恥ずかしさは拭いきれない。

 招待客に混じってヴィオルと二人、ダンスを終えたところで話し声が聞こえた。


「陛下は(とど)まるところをご存じないようですな。あれではもはや溺愛というより執心では?」

「ですがお妃を迎えてから、陛下の国民からの人気は一層あがったという話です」

「王妃さまには今後とも頑張って頂かないといけませんわね……少々、お気の毒にも思えますが」


 そうだ、これからも頑張らなくてはと、エリーズはすっと姿勢を正した。民からも臣下からも慕われる国王である夫を支え続ける、それが王妃の役目だ。

「お気の毒」と言われるのがなぜなのかはいまいちエリーズには分からなかったが、多くの人々から祝いの言葉をもらい夜会はつつがなく終わりを迎えた。


***


 夜会から二週間後、エリーズは朝から時間を見つけては王城の台所へと足を運んだ。今夜開くヴィオルの誕生会の準備をするためだ。

 たまにエリーズが作ったものを口にする機会に恵まれると、ヴィオルは普段の威厳ある国王の姿からうって変わって子供のように大はしゃぎする。そのため今夜も手料理でもてなしたかったのだが、すべてをエリーズ一人で用意する時間がなく下ごしらえ全般は使用人に頼むことになった。料理人たちはエリーズの指示どおりのものを完璧に揃えてくれた。

 今日のヴィオルは早めに政務を切り上げて戻ってきてくれる手はずになっている。だが、何が行われるのかまでは伝えていない。きっと彼は驚き、そして喜んでくれるはずだ。

 夕刻に差し掛かり、エリーズも身支度を始めた。選んだのは自分の誕生日の時に着た薔薇色のドレスだ。これに身を包んだエリーズの姿を見た時の、ヴィオルの(とろ)けるような笑顔は忘れられない。

 そろそろ招待客がやって来るはずだ。エリーズが会場である食堂で待っていると、入り口の扉が開いた。使用人に連れられた二人組が姿を現す。


「来たよ、エリーズ!」


 エリーズはリノンと、その夫でありヴィオルの近衛ローヴァンの元へ駆け寄った。


「まあ、リノン! とっても綺麗だわ」


 いつもの彼女は近衛騎士としての役割を果たすため動きやすい軽装に加え帯剣しているが、今は美しい貴婦人の装いだ。体の線をくっきりさせながら膝下の裾に広がりをもたせたターコイズ色のドレスは彼女の魅力を存分に引き出している。リノンの象徴ともいえる長く真っすぐな黒髪は耳上の部分だけをまとめて結い、銀と真珠のバレッタを留めて(しと)やかな仕上がりにしていた。


「えへへ、ありがとう。まあ一応あたしはコルテウス家の奥方だからね」


 リノンは照れ笑いを浮かべ、隣に立つ夫の腕に自分のそれを絡めた。


「どお? ローヴァンもすごくかっこよくない?」


 ローヴァンもいつもの甲冑を脱ぎ、貴い身分の男性が着る礼装を身にまとっている。青い髪を後ろに撫でつけた姿は新鮮だ。エリーズはにっこり笑って答えた。


「ええ。素敵よ」

「王妃殿下、このような場にご招待くださりありがとうございます」


 ローヴァンが穏やかに言う。


「とんでもありません、ヴィオルが国王でいるためにはローヴァンさんが絶対に必要ですから」

「彼の友人としても礼をさせてください。王妃殿下のような方を妻に迎えられて、ヴィオルは本当に幸福な人間ですよ」


 幼い頃からずっとヴィオルの傍で彼を見てきたローヴァンからの言葉に、エリーズの胸はほかほかと温まる。コルテウス夫妻を席に案内したところで、次の招待客が現れた。


「ようこそお越しくださいました、グローリエ様」


 エーデルバルト公爵令嬢グローリエは、エリーズの姿を見るなりオレンジ色のドレスの裾をつまんで優雅に礼をした。


「この度はお招きありがとう、王妃様」


 彼女もヴィオルの古くからの友人だ。彼が腹を割って話せる数少ない人物のひとりで、エリーズにとっても今や頼れる姉のような存在となっている。豊かな金髪には少しの乱れもなく、温かい色味のドレスは太陽の女神のような印象を与える。


「グローリエ様、お忙しいのにありがとうございます。ヴィオルも喜びます」

「……だと良いのですけれどね」


 グローリエは笑みを浮かべ、案内された席についた。リノンの「相変わらずめちゃくちゃ綺麗……」という呟きに優雅な会釈を返す。

 席はヴィオルとエリーズの分を除き、あと一つ残っている。招待状に記していた時間の間際になって、また会場の扉が開いた。


「王妃殿下、間際となり大変申し訳ございません。仕事が少々立て込んでしまい……」


 ジギスだ。遅れまいと必死に支度をして来てくれたのだろう。いつも着ているものより豪華な刺繍で飾られた礼装姿で、肩まである髪は紺色の細いリボンでまとめられている。


「まあジギスさん、お疲れのところごめんなさい。こちらにどうぞ」


 ジギスは先客たちに向かい丁寧に頭を下げ、用意された席に座った。残すは主役のヴィオルだ。


「ヴィオルを呼んでまいりますね」


 使用人たちが先んじて招待客たちに食前酒の用意を始める。エリーズは食堂を出て、夫のもとへ向かった。


***


 夜会でもないのに美しく着飾った妻の姿にヴィオルは喜びつつも不思議そうにしていたが、素直にエリーズについて食堂の扉の前までやって来た。


「僕との夕食のために、そんなに綺麗にしてくれたの?」

「ふふ、間違ってはいないけれど……本当の理由は別にあるの」


 エリーズはそう言うと、扉をさっと開いた。そこに広がっていた光景にヴィオルが目を丸くする。料理でいっぱいのテーブルと、彼を拍手で出迎えるよく見知った面々の姿がある。


「誕生日おめでとう、ヴィオル。立派になったな」

「陛下ー! おめでとうございまーす!」

「おめでとうヴィオル……ふふ、驚き過ぎよ。まあ無理もないかしら」

「陛下と共にこの日をお祝いできますことをお喜び申し上げます」

「これは……」


 エリーズは未だぽかんとした様子でそれを見るヴィオルの手を引き、もっとも奥の椅子へかけさせた。


「エリーズ、これは一体……」

「あなたのお誕生日のお祝いよ」


 エリーズは笑顔で答え、彼の隣に座った。


「王妃殿下がお前のために用意してくださったんだ」

「陛下、すごくないですかこのお料理! エリーズがぜんぶ考えて作ったんですよ」


 ローヴァンとリノンに言われ、ようやく状況が飲み込めてきたらしいヴィオルがエリーズの顔を見る。


「君が僕のために……?」

「ヴィオル、いつも頑張っているから……『王様』であることを少しの間だけでも忘れて楽しんで欲しかったの。驚かせてごめんなさい」

「謝らないで、すごく嬉しいよ。グローリエにジギスまで……」

「王妃様のご招待ですもの。断るわけにはいかないわ」

「陛下に私どもからの感謝をお伝えする良い機会ですから」

「……ありがとう、皆」


 ヴィオルとエリーズの前にあるグラスにも食前酒が注がれる。エリーズはそれを手にとり声を上げた。


「それでは皆さん、乾杯をしましょう!」


***


 エリーズが手掛けた料理はヴィオルには勿論、招待客にも好評だった。体調を良好に保つため、普段の食事は腹八分目に抑えているヴィオルも終始前のめりで、エリーズが焼いて飾りつけをしたデザートのケーキまで気持ちよく平らげてくれた。


「エリーズが普通の家のお嫁さんだったら、旦那さんは幸せ太りどころじゃなくなりそうだね」


 ヴィオルに負けない勢いで品々を完食したリノンが満足気な顔で言った。


「その分、身を粉にして働くさ。何不自由ない生活のためにね」


 ヴィオルがそう言ってすっくと立ちあがる。予想していなかった彼の行動にエリーズは首を傾げた。


「皆、僕のために今日は集まってくれて本当にありがとう」


 招待客ひとりひとりの顔を見ながら彼は話す。


「明日からはまた、国に仕える国王へ戻る。だからすまないけれど、今から最愛の女性を独り占めする時間が欲しい」


 ヴィオルが手を伸ばし、エリーズを席から立たせて肩を抱き寄せる。ジギスとグローリエはやや居心地悪そうに目を逸らし、ローヴァンは苦笑いし、リノンは愉快そうににやにやしている。


「あ、あの、ヴィオル?」

「皆はこの後も好きなだけ楽しんで」


 そう言うとヴィオルはエリーズをしっかり捕まえたまま食堂の入り口へ向かう。


「じゃあ残りのデザート、あたしが貰っちゃおっと」


 嬉々としたリノンの声がする。エリーズは肩越しに振り返った。


「皆さん、今日はお越しくださってありがとう!」

「エリーズ、あした足腰が立たないようだったらあたしがどこでも背負って運んであげるからね!」


 ひらひらと手を振るリノンと今の彼女の発言をたしなめるローヴァンの声を最後に、食堂の扉が閉められた。


***


 そのままヴィオルの私室へと直行し、ソファに座るや否やエリーズはきつく抱きしめられた。


「ありがとう、エリーズ……もう言葉にならないくらい嬉しい」


 美しくきらめく紫水晶の瞳と視線が合い、次の瞬間には口づけられる。今ヴィオルが感じている幸せがどれほどのものか、重なった唇を通してエリーズにも伝わってくる。

 今までの誕生日は、ヴィオルにとっては忌むべき日だったかもしれない。だがこれからは彼にとって一番素敵な日となるだろう。この先、年月が流れるにつれて彼を囲む人数が増えていく。可愛い子供たちが「お父様、おめでとう」と言って、彼の頬にキスを贈る。

 唇への長いキスを終え、今度は額や頬、手の甲にも口づけの雨が降り注ぐ。ずっとこのまま甘い戯れを続けていてもいいが――


「ヴィオル……キスだけで、いいの?」

「え……」


 ヴィオルの瞳が揺れた。彼なら絶対にその意味が分かるはずだ。


「……でも、疲れているだろう? 君に無理をさせる訳には」

「ヴィオル、わたしは全部あなたのものよ?」


 もちろんこうなることもエリーズの計画には織り込み済みだ。しっかりそちらの「準備」もしてある。時間的には思ったよりも早かったが。


「愛してるわ、ヴィオル。あなたのしたいこと、全部して」

「……朝になっても終われないよ」


 再び唇を塞がれる。エリーズの唇を食みながら、ヴィオルは器用にエリーズがつけているアクセサリーを外し、ソファの手前にあるテーブルの上に置いていく。それが終わると彼はエリーズを横抱きにし、寝室へと早足で向かった。

 寝台に寝かせられたエリーズに、ヴィオルが覆いかぶさる。服越しでも感じるほどに体が熱い。きっとエリーズも同じだ。

 エリーズの首筋に唇が押し当てられる。明日の朝には全身が真っ赤になっているかもしれない。それでもいいと思えるほど、エリーズの思考も溶けかかっていた。


「……エリーズ、始まったらもうそれどころじゃなくなりそうだから、いま言わせて」


 エリーズの目を真っすぐ見ながら、ヴィオルがささやく。


「君に会えて良かった。今までもこの先も、僕より幸せな男はいないよ」


 その言葉だけで十分だ。エリーズは微笑んで彼を抱きしめ、愛と喜びと快楽だけでできた二人だけの世界へと旅立った。

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