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俺達は某県にある、『ダンジョン協会』が所有するダンジョンに来ていた。
俺の自宅から少し離れた位置にあるため、『臨時収入』で新しく買った中古車のハイエースにエルフ2人とドワーフを乗せ、ここまで運転してきたわけだ。
ちなみにハヤトは島津さんに預かってもらっている。知り合いの職員さんの中から犬好きな人を探そうと思っていたが、島津さんからそれとなく『預かってもいい』というニュアンスの言葉を伝えられ、断る理由もなかったので彼女に預かってもらうことにした。
今回の依頼内容は、『ダンジョン』の深層で厳しい訓練をしている、『協会』所属の戦闘員の方たちに支援物資を運搬すること。当然ながら俺達4人では1度に運搬できる物資の上限はそれほど高いわけでも無い。と、いうわけで、現地に到着した俺は『協会』の職員さんから、とある貴重な『魔道具』が貸与された。
「へ~これがマジックバッグと言う奴か。結構高いって聞いたけど、具体的にはどれくらいするの?」
「そうだな…カップラーメンに換算すると、最低でも100万個ぐらいはするんじゃないのか?俺も値段を聞いたら怖くなりそうだから、あんまり詳しくは聞かなかったけど」
『マジックバッグ』それはバッグの様な見た目をしている『魔道具』であり、何でもそのバッグの口が異空間へと繋がっているとかで、見た目以上の物が入り、また、その重量を一切感じないという現段階の技術力では超絶劣化コピーすら作ることの出来ないという、まさにオーバーなテクノロジーの塊と言って差支えが無いほどの性能を有している。
当然ながら、こういった高性能な『魔道具』は希少性も高く、オークションなんかで売りに出されると即座に買い手が見つかるほどの超が付くほどの大人気商品だ。
その購入価格は、その『マジックバッグ』が有する異空間の広さで差が生じる為、具体的な金額を聞かれてもはっきりとは答えることは出来ないというわけだ。
ちなみに今回貸与された『マジックバッグ』は『協会』が所有する物の中でも、あまり有する異空間が広くないとかで、性能とすれば微妙な部類に入るとのことではあるが、それなりの量が入ることには変わりはない。
容量があまり大きくないと言えど、やはり金額にすると数億は下らないと言われており、こうして持っているだけでも、俺の様な小市民だと小さくないプレッシャーと言うものを感じてしまうのだ。
「でもさ、〈収納〉のスキル持ちでも似たようなことも出来るんだよね?」
「らしいな。でも〈収納〉のスキル持ちなんてほとんどいないからな。スキルレベルが低けりゃ〈収納〉出来る量もそれほどでもないと聞くし。それだったらマジックバッグの方が一定以上の容量は確実に確保できるし、色々と都合がいいんじゃないのか?」
確か、〈収納〉の『スキルオーブ』も極稀にだが発見されるらしいが、その『スキルオーブ』を使用した人が〈収納〉という『スキル』の適正率が高いとも限らない。適正率が低ければ当然、スキルのレベルは上がりにくい。
つまり下手をすれば、せっかくの高性能な『スキル』も宝の持ち腐れになってしまいかねないというわけだ。
そして何よりも良い点。それは『スキルオーブ』とは違い、探索者パーティーの解散時には『マジック・バッグ』は現金にて売却することが出来ると言う点だ。
パーティーとかだと、解散時などには共同財産の分配に小さくない労力を割かなければならないと聞く。スキルオーブなら1度使用してしまうと消滅してしまうが、『マジックバッグ』だと丁寧に扱っていればかなりの高額で売却することも出来るというわけだ。当然ながらその分だけ資産の分配は楽になる。
「このマジック・バッグは後衛のライラさんに持ってもらうことにする。念のためもう1度確認させてもらうが、前衛はモニカさんで後衛がライラさん。俺とアウラさんが遊撃として前衛後衛、臨機応変に援護する、で、大丈夫だな?」
「了解!」
「…分かった」
「が、頑張ります」
俺以外のメンバー全員が女性と言う事もあり、今の俺はハタから見ればハーレム状態だろう。しかし、当然ながら俺の心情に浮ついたものはない。むしろ、面倒ごとに巻き込まれやしないかとヒヤヒヤしていた。




