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「そう言えば、ドワーフの国……プロヴェスト王国はどんなところだったんですか?」


「……ん?檀上君には知らされていなかったのか?」


「人伝の、断片的な情報しか知らされていなくて。確かあのゴルド兄弟が想像以上の大物で、意外とすぐに国主との対談にこぎつけることが出来たとか?」


「概ねその通りだ。君も当事者の1人だからな、私の口から一通り説明しておこうか」


と、言うわけで島津さんからドワーフ関連の情報を一から聞き出すことが出来た。


まずは『ダンジョン』の外に出なければ話は始まらないとのことで、ゴルド兄弟の案内に従って『ダンジョン』の出入り口を目指した『協会』の関係者一同。


ドワーフは方向感覚に鋭い感性を持つらしく、迷うことなくほぼ一直線で出入り口までたどり着くことが出来たらしい。そうして満を持してドワーフのいる異世界に進出した『協会』の面々を出迎えたのは、緊張した空気を漂わせる武装したドワーフの軍隊であった。


一触即発とまではいかなかったものの、互いの素性を知らないので対話による交渉は難しいだろう。そんな重苦しい空気が流れかけたところで、その窮地を救ったのがゴルド兄弟だった。


その軍隊の指揮官が顔見知りだったらしい。その物々しい雰囲気に「何があったんじゃ?」とその場の空気にそぐわない素っ頓狂な声で問いただしたところ、「貴方方ご兄弟を探すためですよ!」と安堵と苛立ちが入り混じったような、冷静なツッコミが入ったらしい。


ゴルド兄弟は彼らの国では最高の技術を持つ職人に与えられる『マイスター』という称号を持ち、彼らの作り出す織物が国の重要な式典に使われるなどの、かなりの重要人物だったのだそうだ。


そんな兄弟が突然消息を絶ったため、彼らの捜索隊が派遣される運びとなったのは当然の流れであった。兄弟の目的地はギルドが所有する山であることが調査によってすぐに判明し、その山を中心に捜索が開始された。


そんな重要な人物と言える兄弟がたった2人で入山したことから分かるように、その山は普段からきちんと整備されており、危険なモンスターなどは生息していない。その事から分かるように山の捜索はかなり簡単に終わり、兄弟が山にいないことが判明してしまった。


このまま行方不明のままになるのではないか、捜索作戦が失敗に終わるのではないかと恐恐としていた所、偶然兵士が謎の穴を発見。この穴意外に兄弟の手掛かりとなりそうなものが皆無であったため、方々に散って捜索をしていた兵士達を全員集め、穴に突入するための準備を進めていたところに『協会』の人たちが出てきたというわけだ。


とりあえず兵士達に護衛されながら王都まで移動を開始した『協会』の関係者一同とドワーフの兄弟。道すがら互いの自己紹介をしたらしいが、当然ながら指揮官は半信半疑であったらしい。


しかしかなりの重要人物であるゴルド兄弟が、『協会』の職員の言い分を保証したこと。そして、贈答用として持ってきていた酒を試飲させることで、その指揮官からの信用を勝ち取ることが出来たのだとか。――行軍中に酒を飲んだことに対しては、ドワーフ達にはそれほど大きな軍規違反ではなかったのは語るまでもないだろう。


王都に着いた一行は、兵士らはとりあえず国主に対してゴルド兄弟を無事発見したことの報告と異世界人と遭遇したことを報告に行き、『協会』とゴルド兄弟は心配をかけたとして『商業ギルド』に自分達兄弟が無事であったことの報告と人間との交流についての相談に行くことになった。


ここでもやはり役に立ったのがゴルド兄弟だ。彼らが『商業ギルド』に顔を出すとあれよあれよと言う間にギルド長との会談にこぎつけることが出来たとのことだ。


そこからは島津さんと毛利さんが頑張ったらしい。自分達人間がどういった種族で、どういった文化があるとかどういった物の考え方をしているのか事細かに伝えたらしい。が、ドワーフと言う種族はそう言った細かい事にはこだわらないらしく、あまり興味を抱いてくれなかった。


そこで最終兵器、酒を取り出して再び交渉に取り掛かった。


その酒を一口飲むと今までのそっけない態度が一変した。人間と言う種族については依然として興味をあまり示していなかったが、話が交流とか交易についてはかなり前のめりで話を進めることが出来たとのことだ。


そのタイミングで、国主からの使者が『商業ギルド』に来た。


兵士らとの別れ際に何かしらの役に立つかもしれないからと、指揮官に贈答用のお酒をいくつか渡しておいたらしい。そのお酒が効いたのだろう。あっという間に国主にまで話が行ったらしく、とりあえず『協会』の関係者らの話が聞きたいからと御呼ばれしたというわけだ。


そうしてその使者に導かれるまま、異世界に行った当日に『商業ギルド』の商会長という重要人物も伴ってプロヴェスト王国の王城にまで招待されることになった。

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