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『すみません、酔っぱらっちゃって、いつの間にか帰っちゃってました』そんな言い訳でも大丈夫だとは思うが、様々なシチュエーションを想定し複数の言い訳を考え、即座に答えられるよう頭に叩き込んでおく。どうせ俺がいてもなくても宴会自体は問題なく進行していたのだ。ドワーフと最初に邂逅した、そんな理由だけで参加したこと自体を褒めてもらいたいぐらいだと自分を鼓舞する。


とりあえず翌朝もVIPルームに顔を出すことにした。エルフとの邂逅の時は翌朝に呼ばれたんだけどな、今朝は俺のところに人はこなかった。かと言って顔を出さないというのも若干憚られたので自主的に顔を出すことにしたわけだ。少しは心象がよくなるはずだし。


昨日とは違う戦闘員の方がVIPルームの扉の前で警備している。俺の顔を見ると止められることもなく、部屋に入りやすいように扉の前からスッとどいてくれた。呼ばれてはいないが、やはり顔を出そうとしたことは間違いではなかったと思いつつ扉を開くと……そこには死屍累々と横たわる死体の山々…ではなく、顔を真っ青にした『協会』の職員さん達と、幸せそうな顔でソファーの上で熟睡しているドワーフの兄弟であった。


何が起きたのかは説明されずとも、部屋を満たす鼻を突くようなきついアルコールの匂いと、部屋の隅に大量に置かれている酒の空瓶を見ればすぐに察することは出来る。しれっと帰って正解だった!と思わずガッツポーズをしたい気に持ったが、人道的な見地から死にそうな顔をしている職員さんに声をかけることを優先した。


「酒井さん、大丈夫ですか?水持ってきましょうか?」


ひとまずは目についた、扉から一番近い場所でパンツ一丁になって倒れている酒井さんの肩をポンポンと叩きながら声をかけた。へんじがない。ただのしかばねのようだ。…ではなく、ちゃんと息はあったし、耳をそばだてるとか細い声が聞こえた。


「……お、おねがいします……」


昨日の宴会をしれっとバックレたという負い目もあり、それなりにちゃんと面倒を見ようと決心する。とりあえず人数分の水を用意し、1人1人に手渡していく。そんな事をしていると、この中で元気そうな寝息を立てていた、そしてこの惨状を引き起こしたと思われる諸悪の根源達が目を覚ました。


「くあ~、よく寝た。久方ぶりに、かなりいい眠りだったわい!」


「全くじゃ、兄者。昨夜の酒はかな~り美味かったからの!故郷の親父にも送ってやりたいぐらいじゃ!」


「よせよせ、親父は酒であれば、それだけで満足するような味音痴じゃ。親父に飲ませるぐらいなら儂がすべて飲み干してやるわい!」


「ガハハッ!相変わらず口が悪いのぉ、兄者は」


そんな暢気な会話を繰り広げる兄弟に、昨夜どんな話をしたのかそれとなく聞いてみることにした。来賓にそんなことを聞くのは当然憚られるが、他に話を聞けそうな人の意識は依然として混沌の闇の中にある。


「ドワーフとはどういった種族なのかとか、細かく聞かれたの。何故そんなことを聞かれたんじゃ?」


「全くじゃ。儂らの事を知りたいのであれば、昨日の様に一緒に酒を飲めばいくらでもわかるというのにの!」


これだけの惨状を見せられれば、それが出来そうにないから聞いたんだろう。そう思ったが、当然ながら口には出さない。そうこうしていると、少し疲れた表情を見せながら島津さんが部屋に入ってきた。


「また君か、檀上君。……っと、何だこの惨状は?…いや、報告に聞いていた宴会をした結果というわけか。檀上君、悪いが伊集院と協力して彼らを別室に移動させてくれ」


伊集院と言うのは島津さんに付き従う強面の護衛さんの名前だ。俺もつい最近知った。強面な見た目から少しばかり取っ付きにくい雰囲気を醸し出しているが、動物が好きでハヤテ君に身も心もメロメロなのだ。兄弟子のおかげもあって、俺と伊集院さんの仲もそれなりに深まっている。


酒井さん達を移動させている途中、それとなく情報を聞き出すことにする。


「島津さん、少しお疲れみたいですね」


「ただでさえ、エルフの事で多くの仕事を抱えていますからね。加えて新たな種族、ドワーフとの邂逅ともなれば…」


「あの…なんか、スンマセン」


「いえ、檀上さんが悪いわけではないと思いますよ?話を聞いた感じですと、遅かれ早かれドワーフとの邂逅は時間の問題であったでしょうし。むしろ檀上さんと最初に邂逅したことで、ひとまずは情報統制に成功していますのでその分だけ楽になっていますよ」


俺達が泥酔者を別室に移動させ、酒の空瓶を処分し終える頃にはすでに一通りの自己紹介を終えていた。とりあえずは当事者の1人として、この話し合いに参加することにした。難しい事は聞かれない方がいいな、エルフの時と同じようにそんな事ばかり考えていた。

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