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「皆さん、お疲れさまでした。お怪我をされた方はいらっしゃいますか?」


最前線で戦っていた藤原さんがその言葉を言うのかよ?とも思ったが、作田さんと共にこれと言ってケガをしている様子は見られなく、またそれほど疲労しているようにも見えなかった。やっぱバケモンだよ、この人たち。


後衛にいた俺達が怪我を負うことは当然になく、そのことを伝えると『ぬし』を討伐したことでドロップされたドロップアイテムを確認する流れとなる。サイクロプスが消えた辺りに行き、何が落ちているのか注意深く観察する。


「ドロップしているのは、魔石と……おっと、珍しい。スキルオーブまでドロップしていますね。これを使って獲得できる能力は…<肉体強化>、ですか。結構な当たりですね、これならそれなりの値で売ることが出来るでしょう」


『スキルオーブ』か。よく考えたら実物を生で見るのは今回が初めてだ。藤原さんに頼み見させてもらうことにする。


「これがスキルオーブか…これを〈鑑定〉したら、獲得できる能力が分かるんですよね?」


「ええ、その通りです。ご自身で一度やられてみては?」


「そうですね、それでは早速…〈鑑定〉!」



【 品 名 】 スキルオーブ


【 スキル 】 〈肉体強化〉



おぉ!見える!私にも見えるぞ!〈鑑定〉した感じは、モンスターに使用した感じと大差が無いな。それにしても〈肉体強化〉か。中級以上の探索者なら手に入れたい『スキル』の代表格の一つだろう。


実際俺も、このスキルを獲得する前と後では戦略の幅が色々と広がったものだ。…と、まぁ、偉そうに語ってはみたが、探索者として上級に満たない俺が言うのも少しばかり恥ずかしいものもある。藤原さんに『スキルオーブ』を返却し、これ以上ドロップアイテムもなさそうだったので皆で集まることになる。


「『ぬし』も倒したことですし、そろそろ帰りましょう……ん?ハヤテ?そこで何をしているんだ?」


これといって変哲のない壁に向かってしきりにクンクンと鳴いている。こんな行動を見るのは初めてであり、何かしらの異常があったとは思うが、その異常とやらにこれといって思い当たる節もない。ハヤテ君の一番近くにいた俺が近くまでより、何があったのか探ろうとするが…


「どうしたんだ、ハヤテ。こんな何もない壁に向かって吠えて…っと、ぅおっと!」


何もないと思われていた壁に手を突こうとした瞬間、その壁が幻覚であったかのように壁の向こう側に通り抜けてしまった。このまま他のメンバーと離されてしまうのか!?と、一瞬不安に思ったが、通り抜けた場所同じ場所に手を突くと問題なく再び壁を通り抜けることが出来た。


「これは…今まで経験したことのないトラップですね」


と、冷静に分析をする作田さん。彼らが知らないという事は、壁の向こう側は未踏破区域であるという事だろう。藤原さんも似たような感想を述べた後、「よくやったぞ、ハヤテ!」と、しっかり褒めることも忘れてはいない。やはり飼い主に褒められるのが一番うれしいのだろう、兄弟子も今までにないほどの満面の笑みを見せていた。


「檀上さん、壁の向こうには何がありましたか?」


「すみません、気が動転してしまってよく見てませんでした。ただ…このエリアと似たような空間が広がっていたような、そうでないような…少なくとも、モンスターの影とか気配とかは無かったと思います」


「いきなりの事でしたので、仕方ないでしょう。今度は私が壁の向こう側に行き、様子を窺ってきますね」


壁に触れ、通り抜けることが出来そうだということを確認しながら藤原さんがそう言った。自分のカバンから先ほどのサイクロプス戦では使用していなかったいくつかの予備武器とガチめの防具を取り出し、入念にチェックを入れながらしっかりと体に装備していく。


「10分ほど調査をしたら戻ってきますので、仮に戻ってこなければ皆さんは先に協会に戻り援護を呼んでください」


と、俺達に伝え、サイクロプス戦に挑む時以上に真剣な面持ちで壁の向こうへと消えて行った。

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