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魔法は大きく分けて2種類に分類することが出来る。1つ目を〈系統魔法〉と呼び、スキルレベルが1つ上がるごとに、新しい魔法が1つ使えるようになることが大きな特徴だ。つまり〈系統魔法〉を習得したばかりの、スキルレベルが1の状態なら〈アロー〉系統の〈魔法〉しか使うことが出来ないといった具合にである。


ちなみに先ほど俺は発動した〈ローリング〉系統の魔法はスキルレベルが7で習得することが出来る。これを〈系統魔法〉を習得してから1年未満でここまで成長させたというのは、かなり早いスピードだと言える。つまり、俺が自慢したくなったのも当然と言えば当然の摂理と言えるだろう。


一般的にはこちらの〈系統魔法〉の方が非常にポピュラーな存在であり、それ以外の魔法は〈系統外魔法〉と呼称されており、習得している者の数が少ない、とても希少な〈スキル〉と言える。


〈系統外魔法〉は〈系統魔法〉同様〈スキル〉を習得した時点で1つの〈魔法〉を使えるようになるが、スキルレベルが上昇しても新しい魔法を覚えることが出来ない。しかしスキルレベルが上がるたびに本人の習熟度に加えてその消費魔力の軽減、そしてその効力を大きく伸ばしていくという特性がある。


例えば〈回復魔法〉が上げられる。この〈スキル〉を獲得すると〈キュアー〉という〈魔法〉が使えるようになる。スキルレベルが1だと、擦り傷といった軽傷しか治療することが出来ないが、レベル5ともなれば骨折すら即座に治療することもでき、最大値であるレベル9ともなれば切断された四肢すら即座に接着し、戦線に復帰できるほどの治療を一瞬で出来るとさえ言われている。


そしてどうして俺が今そのようなことを考えているのかと言うと、その希少な〈系統外魔法〉を俺がついさっき習得したからである。


「〈支援魔法〉ですか。〈回復魔法〉や〈転移魔法〉に匹敵するぐらいの超強力な〈魔法〉ですね。おめでとうございます!この事を公表すれば、檀上さんは上級の探索者パーティーからの勧誘がひっきりなしに来ること間違いなしですね!」


「お、脅さないでくださいよ……俺、ガチの攻略組に入るつもりなんて毛頭ありませんよ」


『ダンジョン』の攻略ガチ班ともなれば1年の内300日は『ダンジョン』の中で過ごしているような、常人には理解しがたい感性を持つ人たちだ。そんなアブナそうな人たちと関わるつもりもないし、関わってほしくもない。…いや、よく考えたら俺もすでに『ダンジョン』の中で過ごしている日の方が『ダンジョン』の外で過ごしている日よりも多かったわ。もちろん、安全な『俺のダンジョン』ではあるが。


「ま、冗談はさておき。でも実際に、無理な勧誘が無いとも限りませんからね。人に自慢するのも構いませんが下手にその情報が広まってしまうと、危険が無いとも限りません。ですので、人を選んで話された方が良いと思いますよ?」


と、真面目な顔をした藤原さんに忠告された。きっと、この〈スキル〉を獲得したときに喜び、感情のままに叫んだことを指して冷静でいた方が良いとアドバイスしてくれているのだろう。〈スキル〉の獲得から少し時間が経ち、冷静になった今ならあの時の行動をとても恥ずかしいと思ってしまう。


「ご忠告感謝します。…皆さん、申し訳ありませんが俺の〈支援魔法〉の事は他言無用で願います」


バツの悪さもあって、頭を下げてそう頼んでおいた。藤原さんも作田さんもいい大人だ。冷静さを失い狂喜乱舞していた俺の醜態を思い出してか少し苦笑いをした後、大きく頷いて了承してくれた。残る2人と1匹の方は…


「ま、私も人の〈スキル〉を言いふらす趣味は無いからね。ただ…そう、ついうっかり、あくまでもうっかりだけどね、口が滑っちゃうってこともあるような、ないような……」


「…ないような。そして、あるような、あるような…」


エルフの2人は実年齢こそ俺達よりも遥かに上ではあるが、精神年齢では藤原さん達のほうが圧倒的に上だと断言できる。こいつら、人の弱みに付け込んで俺を脅すつもりだ。そして口封じには賄賂が必要だ。


「かつ丼…いえ、寿司ではどうでしょうか?」


「回っているヤツ?それとも回っていないヤツ?」


「回っていな…いえ、回っている奴にしましょう。その後に、アーロンさんの喫茶店で季節限定のフルーツケーキなんてのはどうでしょうか?」


交渉ごとの基本は相手の心情を読み取ることにある。今回の件において、彼女たちから譲歩を引き出すのは難しいと見た。ならば敢えて相手の要求以上の条件を提示することで、こちらの懐の広さを示し、その上で彼女らの好感度を稼ぐことにした。


これによって今後似たようなことがあったとしても、まずは交渉によって話を進めることが出来るだろう。そのための布石を打ったとすれば安い出費だ。


俺達は固い握手を結び、食事に行く日付を取り決めた。ちなみに兄弟子にはブ〇チで手を打ってもらうことにした。ま、兄弟子が俺の〈スキル〉を言い広めることは無いだろうが、日ごろの感謝の気持ちとすればこれもまた安い出費と言えるだろう。

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