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「檀上さん、君は入口近くの土地をいくつかの企業に貸しておるのだろ?我らエルフの商人にも貸してもらいたいと思い、こうして寄らせてもらったのだ」


「ダンジョンの中に店を開くなら、わざわざこの辺りに開く必要はないのでは?そちら側…トゥクルス共和国側にある、ダンジョンの入口近くの土地の所有権はエルフにあると聞いています。物資輸送の手間なども考えればそちらの方が近くて楽なのでは?」


俺の『ダンジョン』はエルフのいる異世界に繋がっていた。エルフと言う存在が現れた以上、俺のみがこの『ダンジョン』の所有権を主張するのはよろしくないということで、ニホン国側に存在する入口から森との境界までが俺の土地として認められた。


その交渉には『ダンジョン協会』の人が色々と頑張ってくれたと聞く。やはり恩を売っておいて正解だったと実感したな。仮に協会側に何の恩もなければ、その交渉も俺が直接エルフとすることになっていたはずだ。そうなれば当然、相手側にいいようにされていたかもしれない。…まぁエルフの方々はそれほど性悪な印象を受けなかったので、それほど酷い結果にはならなかっただろうが、素人である俺が頭を悩ませることになることだけは避けられなかっただろう。


そんなわけで、トゥクルス共和国に繋がる入口付近の土地はエルフ側に所有権がある。そこに店を設ければわざわざ大量の物資をここまで運んでくる労力は必要はないはずだ。そう思い、先程の疑問を口にしたというわけだ。


「悔しい話ですが、我がトゥクルス共和国の国力はニッポンには到底及ばない。経済規模の事も含めて考えれば、明らかにそちら側で商売をした方が儲けも大きいですからな。それは檀上さんに地代を支払うことになっても、十分すぎるほどの利益が生まれると判断したのですよ」


なるほど、簡潔に説明してもらえたのですぐに納得した。極論を言ってしまえば金と人のたくさん集まる大都会で店を開いた方が、人も金もないド田舎で商売するよりも大きな商いが出来るということか。それは物資の輸送と俺に支払う地代等のコストを込みにしてもそれ以上の利益が出ると判断したわけだ。


「地代に関しては、現在檀上さんが他の企業に貸している単価と同額でも構いせんかな?無論、この金額は当面の間と言う事も知っておりますので、その期日以降はそれまでの売り上げを見てから再交渉とさせて頂きたいのですが」


「もちろん、それで構いません。エルフが店を開いたとなれば、十分な宣伝効果となるでしょう。そうなればより多くの人がこのダンジョンに来るようになる。それだけでも、俺にとってメリットとなるでしょうからね」


今までエルフと直接取引をしてきたのは俺でも名前を知っているような有名な企業ぐらいしかいない。エルフがもたらす野菜や果実などは日本で収穫できる物よりも味が良いという情報がすでに出回っており、個人でも取引をしたいという個人事業主や一般人が増え始めている。そんな人達を相手に商売をすれば成功間違いないと判断しているのだろう。もちろん俺も、そう思う。


「今回はとりあえず土地の確保に来ましたが、当面はどういった何が売れるのかと言った情報が必要ですからな。ダンジョン協会の研究施設内にある売店で、試験的に売店を開くことになりました。機会があれば是非、檀上さんもいらしてみてください」


そう言って仮の土地の賃貸借契約書の写しを机の上に置いて帰っていった。ありがたいことにニホン語で書かれていた。去り際に「お疲れ様です。よろしかったら、これ、どうぞ」と言って炭酸飲料を渡すことを忘れない。


そして扉が閉まり、1人になって一息ついた後ようやく視線を机に戻す。仮のと言うのは、素人である俺が賃貸借契約の見方など分かるはずもなく、『ダンジョン協会』の識者の方に相談に行くだろうから、その人物から契約に関する話を聞いておけとの暗に言っているのだろう。


いくつもの契約条項が並ぶ、見ただけで頭が痛くなりそうなほどに難しい契約書をぼ~っと眺める。やはり契約ごとは自分に理解するのは難しいと再認識することが出来ただけで、これと言った収穫は無さそうだな。


これほどの物を一から作るのは難しいだろうから、恐らくはニホンにある契約書の雛形などを入手し、それを自分たちが改良したものを持参したのだろう。それでもわずか半年でこれまで一切関わりの無かったニホン語のそういった難しい文書の文言を理解し、契約書を作成し直すまでに至ったアルベルトさんと彼の部下の能力の高さには驚かされる。


俺はこういった契約書関係に強い『ダンジョン協会』の職員さんが来るまで、そんなことを悶々と考えながらアルベルトさんから手土産としてもらった、高級な茶葉で沸かした深い旨味と芳醇な香りのする凄く美味しいお茶を楽しんだ。


そして翌週、アルベルトさんが言ったように、研究施設の売店の一角に『エルフ』が店を構えていた。眉目秀麗である『エルフ』が売り子として店先に出ているだけで十分すぎるほどに集客効果があるが、売られている物も非常に珍しいものばかりと言う事もありたちまち人が集まるようになっていた。アルベルトさんは「いらしてください」と言っていたが、当分の間は人が多くて店に入ることはできないだろうなぁ。

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