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「コホン、失礼しました。感動のあまり、少しばかり興奮してしまいました」


少しではないだろ、そうツッコミを入れたかったが話が進みそうにないので断念した。俺も随分と大人な対応ができるようになったものだ。


「我々は…と、失礼。そういえば自己紹介がまだでしたね。私の名前はアリサと言います。種族は『エルフ』であり…」


「エルフ!やっぱりエルフじゃねぇか!マジかよ!本物かよ!?…いや、そもそも偽物のエルフってのも聞いたことがねぇから…ってそんなことはどうでもいい!やっべ、どうしよ!エルフだよエルフ!すげぇ、どうしよう!」


先程と似たような反応が今度は俺の背後からあった。声の主は弓取さんだ。ただ、剣持さんや槍木さんも似たような反応をしているのは想像に難くない。事実、彼女らの見た目からしてその可能性を考えていたわけだが、彼女らの口から直接そのことを聞かされるのとは別の話だろう。興奮するなと言われても不可能な話だ。先ほどまでの彼女らの気持ちがよく分かった、そんな瞬間だった。


そんな俺達を少し苦笑いしながら見つめてくるアリサさん。自分たちも同じような目で見られていたということに気が回ったのかもしれない。少しばかり時間を置き、彼女が再び語り始める。


「どうやら貴方方からすれば『エルフ』という種族は珍しい…というより、貴方方の来た場所では『エルフ』という種が存在しないという事なのでしょうね。つまるところそれは、我々が『人間』と言う種に対する感動と同じものなのでしょう。…と、話を続けさせてもらってもよろしいですか?」


「す、すみません。よろしくお願いします」


未だに興奮さめやらぬといった雰囲気が後方からひしひしと伝わっては来ていたが、これ以上待たせるのも酷かと思い話を続けてもらう。ちなみに俺は、先程から頭が一切ついて行っておらず逆に冷静になっていた。心根が小市民であることにこの時ばかりは感謝した。


彼女たちエルフは『トゥクルス共和国』という国に所属する軍人であり、王都近郊にある小さな寒村付近に突如出現した謎の洞窟の調査を命じられたとのことだ。彼女らのいた場所に『ダンジョン』は存在せず俺達の置かれた状況と似たようなものであるが、どうやら彼女たちが来た場所には穴が出現する以前から『スキル』が存在し、『モンスター』が生息していたという大きな違いがある。


つまり彼女たちにとって『スキル』やら『モンスター』やらは生まれついてのものであり、そこに大きな驚きはなかったということだ。もしかしてこれは、俺達が『ダンジョン』の中で『スキル』やら『格』を上げることが出来るようになったことに大きな関係が…あるのかもしれないし、無いのかもしれない。一つ言えることがあるとすれば、そんな重大な事が俺に分かるわけがないという事だ。目の前の話に集中しよう。


「調査の為、洞窟に突入し半日ほど前進したところで貴方方と遭遇しました。貴方方の姿を最初に見た時、まさかとは思いましたが…!っと、申し訳ありません。依然として興奮が抑えきれないものでして」


「話の腰を折るようで申し訳ないのですが、よろしいですか?貴方達とは違い、我々は国の代表でもなければ先遣隊と言う重要な役割を持つような立派な肩書もありません。それでもよろしければですが、腰を下ろし、車座となって皆で話しませんか?」


「よろしいのですか!?それは部下たちも喜ぶでしょう!何せ『人間』と直接話すなんて皆、一生の思い出になる事でしょう!」


『エルフ』のいた場所で『人間』という種族がどういった存在であるのかは全く想像できないが、俺達の行動によって『人間』という種が幻滅されないだけの心配りをする必要はあるだろう。


後ろにいる弓取さんが「よくやった!流石檀上君だ!」と褒め称えてくるが、『エルフ』と話したいなら最初から前に出てくれよ…そう思ったが、今となっては栓無き事か。


それから皆で円を組むようにして座り互いに互いの事を質問し合う。


「なるほど。貴方方が来られた国は大きな4つの島からなり、1億2000万人を超えるほどの人口を誇っていると…我が国の人口は1000万人を少し超えた程度でありますから、その12倍もの人口がおられると。数が大きすぎて少しばかり想像が追い付きませんね」


「だよな~俺も田舎出身だからさ、都会に出た時なんかはあまりの人の多さにびっくりしたもンだぜ。そういえば、トゥクルス共和国の首都ってのはどんくらいの人口がいんの?」


と、こちらの情報を提供するだけでなく、『エルフ』達の情報をさりげなく入手しようとしている弓取さんは流石と言えるだろう。単に興味の引けるような話をしてナンパしているように見えるのも気のせいのはず…だよな。剣持さんや槍木さんも頑張ってはいるようだが、美人さんを相手に緊張しているようだ。彼らの存在が俺を安堵させてくれる。


しばらくの間情報交換をした後、日が暮れかかっていることにようやく気が回った。今夜はここで野宿をすることになりそうだ。幸い彼女らに俺達を警戒するという意思は無さそうで、同じ場所で野宿をすることになる。


彼女らの中に男性の『エルフ』はいない。男である俺達に性的に襲われることを警戒しないのだろうかと、そういった疑問も頭をよぎったが、まぁここにいるメンバーはわきまえた人間ばかりであるのでそういった蛮行をする人はいないから大丈夫だろう。今後とも『エルフ』との付き合いがあるとすれば、その時に彼女たちに気を付けるように注意をすればいいか。


俺は昨日と同じように湯を沸かし、インスタントのラーメンの調理に取り掛かる。違いがあるとすれば、『エルフ』達が俺の調理するインスタントのラーメンに興味津々であり、俺の調理工程を一挙手一投足を食い入るような目で観察していたことだろう。

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