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『う~~ん、このパーティーゲームにも飽きたから、次はサイコロを振って目的地に向けて移動して、各地で不動産を購入しながら世界一の社長さんを目指すゲームをしない?』


こんにゃろう、汚いヤツめ。ゲームの腕では勝てないとふんで実力の絡まない運ゲーに持ち込みやがったな。しかしよかろう、王者は何物にも負けず屈せず服従せず、弱者からの挑戦を堂々と真正面から受けて立ってやろうではないか!


「フッフッフ。何度やっても同じことよ。返り討ちにしてやるぜ!!」


『ふ~ん、言うねぇ。それじゃあ思い切って99年に挑戦してみよう!』


「ふぁっ!?あ、いや、それはちょっと…」


『おやおや、ゲームを始める前から随分と弱気だねぇ。もしかして新人プレイヤーである僕に負けるのが怖いのかな?ヤレヤレ、君も随分と小さな男だ。自分が勝てそうなゲームしかプレーしたがらないなんてね』


「いや、別にそういうわけじゃ……ええい、こうなりゃヤケだ!徹底的にいたぶってやる!後で泣き言を言うんじゃないぞ!」


単純な戦闘力じゃ足元にも及ばないが、ゲームの中でなら話は別だ。ここらあたりでニンゲンの恐ろしさというのを骨の髄まで叩き込んでやろう。ただ開始10分で、想像以上に時間がかかりそうなことが分かって軽く絶望した。





あれから一体どれだけの時間が経過したのだろうか。確か60年目ぐらいで妙にハイテンションになって、80年目ぐらいに差し掛かった辺りから意識が朦朧としてきて、その後の記憶がとても曖昧だ。


だいたい何が王者だよ、バカらしい。サラリーマン時代は忙しくて碌に家庭用ゲーム機に触れていなかったから、俺のゲーマー歴なんて精々10年かそこらだ。そんなんで玄人ぶっていた数十時間前までの自分が恥ずかしい。きっと素人であるリュウイチさんが相手で連戦連勝だったから、いい気になっていたんだろう。


まあ、少し眠ったおかげでだいぶ意識が覚醒して来た。ゲームの音も聞こえるから、きっとリュウイチさんが1人で遊んでいるはずだ。重い瞼を開けて上体を起こし、ゲームの続きをしなければ。


…………………ふぅ。イカンイカン、どうやらまだ俺の意識は依然として夢の中にあったらしい。そりゃそうだよな、目を開けたらリュウイチさんが2人に増えているんだからさ。早くこの夢から覚めなければリュウイチさんをいつまでも待たせてしまうことになる。


さあ俺、起きろ~起きるんだ。ただでさえ珍しいドラゴンが、俺が意識を失っている短い間に増えるわけがないのだ。きっと長時間ゲームをプレーしたことでストレスを感じ、よくない夢を見てしまっているのだろう。


『やあ、ようやく起きたみたいだね。ゲームはスリープモードにしているから、続きを始めようじゃないか』


『オイオイオイオイ、オメェらがこのゲームを始めたらオレは1人でいったい何をすりゃいいんだ!?』


『あっと、それもそうだね。それじゃあ、はじめから一緒にやるってのはどうかな?』


『おっ!いいねぇ。俺様のゲームテクが火を噴くぜ!』


『何を言ってんの。僕の記憶を読みとっだけのクセしてさ。記憶を見るのと実際にプレーするのとじゃ、感覚が全然違うんだよ?』


『ハン!誰に対して言ってんだ?吠え面をかかせてやるぜ!!』


シレッと渡されたコントローラーを握り、周りの状況をもう一度よく確認した後、とりあえずテレビ画面に視線を向ける。


どうやら件の世界一の社長さんになるためのデスマーチはきちんと完遂していたらしい。記憶にあるものとは別のゲーム画面が映し出されている。俺とリュウイチさん、どっちが勝ったかサッパリ覚えていないが、ひとまずは今度のゲームに集中しよう。


どうやら今度はレースゲームのようだな。とある配管工とそのお仲間がマシンに乗ってコースを回り、1位を目指すゲームだ。色々と聞きたいことがあるが、まずは得意の亀のキャラクターを選択する。


「えっと、リュウイチさん。ソチラの方は?」


『古くからの友人さ。口は悪いけど根はいいヤツだから安心していいよ』


『そういうこった。ま、今後ともヨロシク!』


「はぁ、よろしくお願いします。えっと、それでお名前は……」


『ンなものはねぇ。コイツみたく、オメェが決めてくれ』


「それじゃあリュウジさんで。リュウジさんはどうしてここにいらっしゃるので?」


『君がゲームの途中で眠ってしまったからね。起きるまで時間がかかりそうだったから協会からの依頼の素材を取りに新天地に向かったんだ。そのとき偶然、懐かしい彼の気配を感じとってね。ヒマそうにしていたから誘ってみたんだ』


『そういうこった。それにしても驚いたぜ。まさかこんな場所があるなんてよォ。コイツの記憶を見せてもらった時も驚いたが、実際に来てみたら思ってた以上のパラダイスだ。特にさっき食ったプリンってのがたまんねェ。いま追加で作って貰っているが、完成が待ちきれねぇぜ!』


『全くだよ。ねぇ、聞いてよ檀上君。コイツってば僕のおやつを全部食べじゃったんだよ?ヒドイと思わない?』


「あ、はい。ヒドイと思います」


『ケチくせぇコト言ってんなって。オメェは今までたくさん食ってたんだろ?だったら初めて食う俺に譲ったっていいじゃねェか……っと、始まったみてぇだぞ』


う~む、脳ミソがきちんと覚醒していなかったおかげか状況を正確には認識できていないおかげだろうか、初めて出会ったリュウジさんとも自然と会話できている気がする。きちんと認識できるようになった後のことは……面倒そうなので、とりあえずゲームに集中することにした。

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